越境ECを使った日本のお酒の輸出をお考えの方も多いのではないでしょうか?
この記事では、中国と韓国の2カ国に着目し、お酒を輸出する際の注意点や規制、オススメのECサイトについてご紹介します。
特に中国は越境ECの市場規模が大きい上に、2018年に梅酒と日本酒の越境ECを通じた取り扱いが許可され、さらなる伸びが見込まれている注目すべき国です。ぜひ、輸出の際の参考にしてみて下さい。
まずはじめに、越境ECの定義についてご紹介します。ECとはElectronic Commerce の略で、Amazonや楽天のようなインターネット通販のことです。ECの中でも、国境を越えて外国商品の売買を行えるインターネット通販のことを、越境ECと呼びます。
現在、越境ECはアジアを中心に世界的に拡大しています。
グラフから分かるように、越境ECの市場規模は2020年に100兆円、2014年から2020年にかけて約5倍に増加することが予想され、特に太平洋アジアが規模・伸び率ともにダントツです。
では、各国の消費者は越境ECを通じてどんな商品を購入しているのでしょうか?
越境ECで購入経験のある品目について、表にまとめました。
2016年 越境ECでの購入経験率 (出典:農林水産省調査より当社作成)
いずれの国も「服飾品」(衣類、靴、アクセサリーなど)の購入経験率が高いですが、ここで注目すべきは中国における「食品・飲料」の購入経験率の高さです。
44%の中国人は、越境ECサイトを通じて食品・飲料を購入したことがあるということがわかります。中国の巨大なEC市場規模に加えて、その海外食品・飲料に対する強い関心から、中国は非常に魅力的なお酒の輸出先であるといえるでしょう。
実際に越境ECを運用するためには、確認が必要な免許や規制がいくつか存在します。
免許・規制について、それぞれご紹介します。
一般的には酒類の輸出に必要になる免許は「輸出酒類卸売業免許」ですが、この免許は相手国の商社や卸売・小売店への販売を前提とした免許となります。越境ECを通じて海外の一般消費者または飲食店に販売する場合は、「通信販売小売業免許」で要件を満たすことが可能です。
しかしながら、所轄税務署によっては、通信販売小売業はあくまで国内販売を想定したものであるとして、「一般酒類小売業免許」を求める場合もあるようです。正確な情報については所轄税務署への個別確認が必要です。
また、通販による酒類輸入に関する相手国の規制も確認しておく必要があります。ここでは、韓国と中国における主な規制を見ていきます。
残念ながら、越境ECを通じて韓国の一般消費者や飲食店に酒類を輸出することはできません。韓国では、酒類の輸入、卸売、小売の兼業が基本的に禁じられており、輸入酒類にせよ韓国産酒類にせよ必ず1次問屋を通さなければいけない流通構造になっています。そのため、ECサイトを通じた一般消費者や小売店への直販はできません。実際に、韓国2大ECサイトのG-market や11番街を見てみると、国内生産のマッコリや韓国焼酎(soju)ですら全く出品されておらず、韓国ではお酒の通販ができないことが実感できます。
2018年から、越境ECを通じた日本から中国への梅酒及び日本酒の販売が許可されました。なお、残念ながらビールは未だ越境ECでの販売は禁止されています。
また、福島第一原発事故を受け、中国では10都県(福島、群馬、栃木、茨城、宮城、長野、埼玉、東京、千葉、新潟)からの食品の輸入を停止しています。
詳細な各法規については、JETRO「日本酒の現地輸入規則および留意点:中国向け輸出」などをご参照ください。
法制度を確認したら、いよいよECサイトへの出品です。
輸出者自ら自社ECサイトを立ち上げるという方法もありますが、多言語への対応や国際決済システムの導入、集客の難易度を考えるとハードルはかなり高いと考えられます。
ここでは、日系企業が提供する越境ECプラットフォームを利用する方法と、輸出相手国の現地のECプラットフォームを利用する方法をご紹介します。
現在日本のお酒を海外に向け広く販売できる日系の越境ECプラットフォームは以下の2つがあります。
楽天が運営する、越境ECプラットフォーム。奢侈材から日用品までその品揃えは幅広く、食品専門の「美食日本」も開設しています。基本的に世界全域に対応しています。海外向け出品の初期費用や月額費用は無料で、サービス利用料として海外売上額の4%を支払います。Web上で出店申込が可能です。
日本酒卸売のコンタツと物流のトランスコスモスが共同で運営する酒ECサイト。日本酒の他、梅酒やジャパニーズ・ジンを取り扱っています。40$以上 の高価格帯商品が中心ですが品揃えは豊富です。世界各地49カ国に向けて販売しています。酒虎が蔵元と契約を結び直販するというモデルのようです。
一つのサイトに出品するだけで複数の国への販路を確保できることが日経企業のプラットフォームのなによりの魅力です。また、各種手続きが日本語で行えることも嬉しいですね。
日系企業のECプラットフォームは手軽で安心ですが、集客面を考えると、相手国の現地の人々に一般に使われているECプラットフォームに優位性があります。ここでは、中国にお酒を輸出する際におすすめの現地プラットフォームを見ていきましょう。
アリババが運営する中国最大のECサイト。楽天と同様のBtoC型プラットフォームで、出店者はアリババに登録手数料を支払います。海外食品も含め国内外で約5万店が出店しています。しかしながら、出品されている日本製品の8割がベビー用品であり、食品の取り扱いは限定的です。
中国第2位の食品EC売上シェアを持つ大手ECサイト。2014年の日本製品の売上は1500億円以上で、3万種類以上の日本製品が揃います。2015年には日本製品専用サイト「日本館」が開設され、日本産品の販売額は増加傾向にあるようです。150社程度の事業者が日本のお酒を取り扱っています。菊正宗や、月桂冠、獺祭、山崎ウイスキーなど、日本でも人気のある銘柄も販売されています。
現地国のECサイトは日本でのAmazonや楽天のように、中国で生活する人が日常的に使用するサービスであるため、かなり広い層にリーチできるところが何よりの魅力です。
また、天猫と京東の2サイトは、中国の現地法人を立ち上げる必要がなく、日本から出店申込ができる点も嬉しいポイントです。
なお、下図は中国のBtoCモデルECサイトのシェアを示したものです。TMALL が6割近く、2社合わせると4分の3以上のシェアを占めています。
出典:SALES IN CHINA より当社作成
ECサイトを使ったお酒の輸出について、中国と韓国の2カ国に着目して注意点や規制、オススメのECサイトについてご紹介しました。ぜひ記事を参考に個人でもお酒の輸出を検討してみて下さい。
また、国際輸送に関するご相談はお気軽にShippioまでお問い合わせください。
Accenture「平成29年度輸出戦略実行事業」 食品に関する電子商取引(EC)の各国調査報告書
JETRO 日本酒輸出ハンドブック-韓国編-
JETRO 日本酒輸出ハンドブック-中国編-
SALES IN CHINA タオバオ・天猫(TMALL)について
ながお行政書士事務所 酒類販売業免許申請アシスト
農林水産省 平成29年度:日本からの電子商取引(EC)を用いた農林水産物・食品の輸出に関する調査報告書