基礎知識 | Shippio | 貿易業務の可視化・効率化クラウドサービス

植物検疫の流れを輸入・輸出に分けて解説!|対象外の品目や規制についても解説

作成者: Shippio|2023.05.12

野菜や果物を輸出入する際には、植物防疫所で植物検疫を受ける必要があります。植物の産地や種類によっては、検査の有無に関わらず輸入が禁止されている場合もあります。外国の病原菌や害虫が日本に持ち込まれることを防ぐための重要な措置である一方で、通常の貨物に比べて手間がかかるのも事実です。本記事では、植物検疫について輸入と輸出それぞれの流れを解説します。

私達Shippioは、国際輸送を手配する日本初のデジタルフォワーダーとして、業務効率化を支援するクラウドサービスを提供しています。貿易業務は煩雑で、アナログなやり取りが多く発生するのが現状です。物流コストの削減や業務の可視化・効率化をご検討の荷主さまは、ぜひお問い合わせフォームよりご相談ください。


植物検疫の概要

植物検疫とは、野菜や果物などの植物を輸出入する際に実施される検査のことです。この検査は、各空港や港に設置された植物防疫所で行われます。食品の輸入に際しては、食品衛生法の基準を満たしているかどうかの検査が必要ですが、植物を輸入する場合は、それに加えて植物検疫が必要になるため、さらに一手間かかる工程が増えることになります。

なぜ植物検疫が必要なのか

植物検疫は、日本の農業や生態系を守るために欠かせない重要な取り組みです。輸入植物には、病原菌や害虫が付着している可能性があり、それが国内に侵入することで深刻な影響を及ぼすリスクがあります。

過去には、植物検疫が厳しく行われたケースもあります。たとえば、ウリミバエという害虫が沖縄諸島で繁殖した際、沖縄から日本本土への植物の持ち出しが厳しく規制されました。これは、害虫の拡散を防ぎ、日本の農業や生態系を守るための措置です。

植物検疫が適切に機能することで、農産物や生態系が被害を受けることを未然に防ぎ、国内の環境と産業の安全を維持する役割を果たしています。

輸入検疫と輸出検疫

植物検疫には、輸入検疫と輸出検疫の2種類があります。

輸入検疫

輸入検疫は、外国からの病害虫の侵入を防ぐことを目的に、輸入される植物に対して行われる検査です。対象となるのは、苗や種子といった栽培用植物だけでなく、野菜、果物、穀類、切り花、木材などの消費用植物も含まれます。ただし、製材や製茶などの高度に加工されたものについては、輸入検疫の対象外となります。

さらに、一部の品目については、日本の港での検査に加え、輸出国の栽培地での検査や輸出前措置が必要とされる場合があります。そのため、案件ごとに輸入条件を確認し、輸出者との密な連携が求められます。

輸出検疫

輸出検疫では、輸出相手国(輸入側)の要求に基づき、日本の植物防疫所が輸出港で行う検査です。相手国が栽培地での検査を要求している場合は、輸出港での検査の前に、栽培地での植物防疫所による検査を受ける必要があります。輸出検疫に関する条件は輸出相手国によって異なり、以下のような要件が定められていることがあります。

 

  1. 輸入禁止品目:輸入が一切禁止されているもの。
  2. 輸入許可が必要なもの:輸入相手国の許可があれば輸入が可能。
  3. 植物検疫証明書の添付が必要なもの:輸出国の植物検疫機関で検査を受け、証明書を添付することで輸入を許可。
  4. 消毒措置が必要なもの:輸出国での消毒が条件となる場合。
  5. 栽培中の検査が必要なもの:病害虫の検査が栽培地で求められる場合。
  6. 輸送方法や形態に制限があるもの:輸送手段、植物の形状、輸入時期、輸入場所、梱包形態などが指定される場合

    輸出検疫の条件は品目や相手国によって大きく異なるため、個別の確認が必要です。詳細については、植物防疫所ホームページをご参照ください。

植物検疫の手続き・流れ

1.植物検査の申請を行う

食物検疫を受けるには、まず植物防疫所に申請を行います。手続きは各地の植物防疫所窓口で行うことができますが、以下のオンライン申請システムも利用可能です。

 

    1. NACCS植物検疫関連業務(APS)

      NACCS(輸出入・港湾関連情報処理システム)を通じて、輸入植物検査申請および輸出色ブル検査申請が可能です。Web版NACCS、またはNACCSパッケージソフトのどちらからでも利用できます。

    2. 植物防疫所電子申請システム

輸出入植物検査申請を除く、以下ののような12種類の手続きをオンラインで行うことができます。(例:海上コンテナ積替届、消毒・廃棄計画、消毒・廃棄実施報告書、輸送後消毒・廃棄申請など)
※NACCSパッケージソフトからの利用はできませんのでご注意ください。

いずれの電子申請も、植物防疫所の公式ページから行うことができます。

2.植物検査を受ける

申請後、貨物が港に到着したら植物検査を受けます。輸出国の栽培地での検査や、輸出前措置が必要な品目があるため、事前に輸出者と確認し、必要な場合は現地での手続きを依頼しておくことが重要です。


■日本の港での輸入植物検査の流れ

 


(出典:植物防疫所)

  1. 検査不要品
      検査対象外の品目はそのまま通関に進みます。
  2. 輸入禁止品
       禁止品目の場合は、そのまま廃棄となります。
  3. 検査対象品
      検査を実施します。
    • 検査結果が合格の場合:合格証明書が発給され、通関手続きへ進みます。
    • 検査結果が不合格の場合:輸入者は以下の対応を選択できます。
      • 消毒(実施後、合格証明書を発給)
      • 廃棄
      • 返送

 

病害虫が発見された場合は、不合格となり適切な措置を講じる必要があります。消毒が成功すれば合格証明書が発行され、通関手続きに進むことが可能です。

植物検疫の基準


ここまで、植物検疫の概要や手続きについてご紹介してきましたが、具体的にどのような植物が規制を受けているのでしょうか。輸入植物の規制は、品目だけでなく部位や産地によっても異なり、多岐にわたります。

輸出国で効果的な消毒方法やその他の防疫対策が確立された場合、その基準に基づき植物検疫条件が設定され、基準をクリアしたものについては輸入が認められるようになります。この条件付き輸入解禁に関する詳細な情報は、植物防疫所が公開している「輸入条件に関するデータベース」で確認することができます。

輸入が禁止されているもの

  1. 土や土付きの植物

    産地に関係なく、全世界からの輸入が禁止されています。

  2. チチュウカイ ミバエやミカンコミバエが発生している地域からの果実・果菜類

    例外地域(北米や中央アジアなど)を除き、ほぼ全世界から以下の品目が輸入禁止です。

    • 柑橘類
    • マンゴスチン
    • ライチ
    • グアバ
    • マンゴウ
    • 唐辛子

  3. コドリンガが発生している地域からの特定果実
    例外地域(東南アジアなど)を除き、以下の品目が対象となります
    • ナシ
    • リンゴ
    • モモ
    • サクランボ
       
  4. サツマイモ(特定地域)

    アジア、アメリカ、ハワイ、オーストラリア、アフリカなど、広範囲で規制されています。

条件を満たした場合のみ輸入が許可されているもの

輸出国政府が発行する検査証明書を添付し、日本の港での輸入検査で病害虫がいないと確認された場合に輸入が認められる品目の例です。

    • パイナップル
    • ランの切り花
    • 精米

ここまで、植物検疫について一通りご紹介してきました。植物の輸出入では、相手国での検疫検査が必要な場合も多く、輸出者と輸入者の連携が重要です。

この記事でご紹介した規制品目はあくまでも一例であり、実際には数え切れないほどの品目が輸入禁止や規制の対象となっています。輸出入について不明点や不安がある場合には、ぜひお気軽にShippioまでご相談ください。

 

 

 

Reference

植物防疫所 植物検疫のご紹介

植物防疫所 輸入条件に関するデータベース

植物防疫所 植物検疫のお知らせ