インコタームズは貿易の条件を表します。この記事では、インコタームズで誤って解釈されがちな「危険負担」と「貨物の所有権」について焦点を当て、解説します。
はじめに、インコタームズの基礎知識について簡単にご紹介します。
インコタームズ(Incoterms : International Commercial Terms)とは、国際商業会議所(ICC)が制定した貿易取引条件とその解釈に関する国際規則です。INCOTERMSや、日本語では貿易条件と呼ばれることもあります。
インコタームズは、貨物の引き渡しに関するリスク負担の分岐点、役割や費用(運送や保険や通関の手配、運賃や保険料の支払い)の負担区分などをまとめた取引条件です。
インコタームズに記載される責任範囲は2つあり、「危険負担」「費用負担」が定義されます。この危険負担と費用負担の範囲の違いにより、インコタームズは11条件に分けられます。
インコタームズの種類はこちら
インコタームズは国際的に統一的な定義で取り決められており、ありとあらゆる輸出入を伴う売買契約はインコタームズに基づいた取引価格の合意が必要です。
このとき注意が必要なのが、貨物の所有権についてです。インコタームズは、貨物の所有権に関する定義は行っていません。
たとえば、海上輸送中に貨物が破損した場合、EXWやFOBの場合は輸入者が危険責任を負います。このとき、貨物の所有権は輸出者のままです。
実際に貨物の所有権が移るのは、売買締結時です。このときに必要となるのがB/L(船荷証券)です。
B/Lの正体は運送人(Career, VOCC, 船会社)が荷送人(Shipper,荷主)との運送契約に基づき、貨物を預かったことを証明するもので、船会社から交付される積荷の所有権を化体した有価証券です。
B/Lについての詳しい解説は以下の記事をご覧ください。
貿易で必須なB/L(Bill of Lading)ってなに?言葉の定義やB/L発行のタイミングを解説
以下はインコタームズの概要です。イラストは当社プラットフォームからの抜粋で、貨物のリスク負担の移転場所を表したものです。アルファベット3文字で表されるインコタームズのフルネームは、輸出者の費用負担の範囲を示しています。
リスク負担の移転:輸出者の倉庫や品物が集荷される場所
輸入者が輸送全体のほぼ全てのコストとリスクを負担します。(品物の積み込みを含む)。
リスク負担の移転:輸入者指定の運送業者が品物を受け取った時点
品物の輸出通関は輸出者が手配します。
リスク負担の移転:品物が船側に渡された時点
輸出者は品物が船側に渡されるまでの全費用とリスクを負担します。
輸入者はそれ以後の責任を負い、輸出入の通関を手配します。
木材などコンテナには入らない(入れない)貨物で使われます。
リスク負担の移転:品物が船に積み込まれた時点
輸出者は輸出通関の手配までを行います。輸入者は品物の本船積載直後から責任を負います。
リスク負担の移転:輸出者指定の運送業者が品物を受け取った時点
輸出者が輸出通関の手配と輸送費を負担します。
リスク負担の移転:輸出者指定の運送業者が品物を受け取った時点
輸出者が輸出通関の手配と輸送費、品物の保険料を負担します。
リスク負担の移転:品物が指定場所で引き渡された時点
輸出者が目的地までの輸送と荷卸のリスクを全て負担します。
リスク負担の移転:品物が指定住所で荷卸しできる状態になった時点
輸出者がリスク負担の移転場所までの輸送費とリスクを負担し、以後は輸入者が負担します。
DDP: Delivered Duty Paid / 関税込持込渡し
リスク負担の移転:品物が指定場所で荷卸し可能な状態になった時点
輸出者が輸出入の手配や関税を支払いを含む、輸送全体のほぼすべての責任を負います。
輸出者の負担が全インコタームズの中で一番大きいものです。
リスク負担の移転:品物が船に積み込まれた時点
本船運賃は輸出者負担ですが、輸入者は品物が積載直後から責任を負います。
リスク負担の移転:品物が船に積み込まれた時点
輸出者は輸入港で荷揚げするまでの費用を負担します。
この記事では、インコタームズで誤って解釈されがちな「危険負担」と「貨物の所有権」についてご紹介しました。
「そもそもどのインコタームズで契約するべきか」をお悩みの荷主さまも多いのではないでしょうか。インコタームズで定義されていない部分やより詳しい条件は、フォワーダーに相談するのも良い手段になります。
Shippio は国際輸送を手配するデジタルフォワーダーです。輸送に関して何か気になる点ございましたら、お気軽にお問い合わせ/資料請求ください。