筆者:松田琢磨(拓殖大学 商学部 国際ビジネス学科 教授)
※こちらは【2023年5月時】のレポートです。最新版の市況レポートは以下からアクセスできます。
拓殖大学商学部教授。筑波大学第三学群社会工学類卒業,東京工業大学大学院理工学研究科博士課程単位取得退学、博士(学術)(東京工業大学)。2011年より(公財)日本海事センター研究員、2018年同主任研究員。同センターでは主にコンテナ輸送に関する調査、分析に従事。2020年より現職。2023年4月より拓殖大学商学部国際ビジネス学科長。
研究分野は海運経済学、コンテナ輸送、国際物流など。2014年度日本海運経済学会賞(論文の部)、2014年度および2020年度日本物流学会賞(論文等の部)、2021年度日本海運経済学会国際交流賞をそれぞれ受賞。
近著に『新国際物流論 基礎からDXまで』(共著,2022年)、『日の丸コンテナ会社ONEはなぜ成功したのか?』(共著,2023年)、『コンテナから読む世界経済 経済の血液はこの「箱」が運んでいる!』(2023年)がある。
所属学会は日本海運経済学会(常任理事、産官学連携委員長、編集副委員長)、日本物流学会(理事、編集委員)など。
2021年5月よりNewsPicksプロピッカーも務め、海運・物流のニュースを中心にコメントしている。
デカルト・データマイン社の発表によると、2023年3月のアジア主要10カ国・地域発米国向け航路(北米往航)のコンテナ貨物輸送量は前年同月比32.4%減の121.8万TEUとなりました(図1参照)。前月比では2.3%増でした 。1-3月の累計でも前年同期比27.1%減となっています。2022年以降、北米向け輸送は7月まで2021年を若干上回る水準で推移してきました。しかしながら、8月には前年を下回る水準に転じ、9月以降は大幅な減少が続いています。主要品目で需要が鈍っている傾向にも変化はみられていません。
このところの輸送量の勢いが減衰している理由として①米国での金利が高い水準だったために住宅市場が不調であり、住宅着工件数や許可件数が低水準で推移していること、②小売業者の在庫が高水準であると認識されていること、が挙げられます。米国の住宅市場は、住宅ローン金利上昇の影響を受けて、着工件数や許可件数の低下が続いてきました。住宅着工件数は 2022 年 2~4 月には月次(季節調整済み・年換算)で 177 万軒の水準でしたが、9 月には 140万軒台、12月には130万軒台に低下しています。2-3月は改善傾向にあるものの水準は140万軒前半です。許可件数も9月以降1月まで4か月連続で前月比で下落し、3月も下落しています。住宅市場の中心である中古住宅販売も20年後半から22年初頭までの600万軒台から下落が続き、直近ではコロナ前の500万軒台を割り込んでいます。②は夏以降、大手小売業者を中心に在庫水準が高まっています(参考図1参照)。ウォルマート、ターゲットなど米国小売大手では、2022年半ばから過剰在庫の問題に直面しており、アジアからの輸入量を絞り込んでいます。小売売上高は11月に前月比1.3%減、12月同0.7%減、1月同2.8%増、2月0.7%減、3月0.6%減となっています。
図1:北米往航の輸送量月次推移(2019年1月-2023年3月、単位:TEU)
データ出所:デカルト・データマイン
参考図1:米国の小売在庫と在庫/売上高比率(2019年1月-2023年2月)
データ出所:米国商務省センサス局
住宅市場については住宅ローン金利が低下して底入れの兆しが出てきたとの見方があるものの、回復の足取りはまだ不安定であるとされています。小売りについても1月には改善しています。これは雇用市場が堅調である こと、社会保障費の増加などが要因として挙げられています。貯蓄を切り崩す形での消費以外にも、新型コロナ禍での物価上昇を受けた社会保障給付と補足的保障所得(SSI)の支給額8.7%引き上げが12月から開始されたことで、消費が増えたとの見方があります 。ただし、米国については消費水準自体は堅調に推移しているものの、消費マインドはあまりよくありません(参考図2参照)。
Freightos社の発表によると、2023年5月5日の中国・東アジア-米国西岸のコンテナ運賃は前週比10.7%下落の1,516ドル/FEU(図2参照)、中国・東アジア-米国東岸のコンテナ運賃は前週比4.2%下落の2,410ドル/FEU(図3参照)となりました。西岸向け運賃は7月22日の6,957ドル/FEUと比べると78.2%の下落、東岸向け運賃は同10,000ドル/FEUと比べ75.9%の下落となっています。日本発の運賃も同様に下落傾向にあります。直近では5月1日から発効する2023年度契約運賃の運賃交渉が大詰めを迎えており、運賃交渉の起源を直前に控えた4月15日に運賃上げが成功したことがあって、4月の運賃は少し上がっています。
とはいえ、米国向け航路では荷動き減少、すなわち需要減が続いています。平均遅延日数に大きな改善がみられていない(図4参照)など、内陸輸送などの問題はまだ残されているものの、サプライチェーン混乱の問題はコロナ禍の時点から大きく緩和されていることも影響しています。これによってコンテナ船のスペースを確保することが以前より容易になった(=供給が増えた)ことが運賃下落につながっています。
一方、西岸における労使交渉問題が解決していないことが西岸向け運賃と東岸向け運賃の動向に影響しています。西岸でのスローダウンやストライキを警戒する荷主が、東岸経由への貨物輸送へのシフトを進めたため、西岸向け運賃に比べ東岸向け運賃の下落は大きくありません。西岸では労使協定の更新に向けて、使用者団体側と労働組合が交渉を再開し、5月3日にはLALBでは非自動化ターミナルの増員に使用者側との合意がありました。作業の遅れ、自動化ターミナルの機器の使用停止も休止されており、主要課題の交渉が進展することが期待されています。大きな停滞につながる可能性は低いとみられる状況ですが、西岸経由輸送への復帰傾向はまだ見られていません。
コンテナ船社による欠便効果もあって運賃下落の勢いは小さい状況ですが、微減から停滞の傾向が続いています。いつ下げ止まりから上昇につながるかが改めて注目点です。ことしは在庫水準が高いこともあり、秋のピークシーズンがどうなるかも不透明な部分があります。ただし、船腹供給が増えていることもあり、大きな上昇は難しいと思われます。
図2:中国・東アジア-米国西岸航路の運賃推移(2021年5月-2023年5月、単位:米ドル/FEU)
データ出所:Freightos
図3:中国・東アジア-米国東岸航路の運賃推移(2021年5月-2023年5月、単位:米ドル/FEU)
データ出所:Freightos
図4:米国の荷動き量トップ10港の平均遅延日数(2023年1月-2023年3月、単位:日)
データ出所:デカルト・データマイン
デカルト・データマイン社の発表によると、2023年2月の米国発アジア主要10カ国・地域向け航路(北米復航)のコンテナ貨物輸送量は前年同月比0.3%増の45.7万TEUとなりました(図5参照)。前月比では0.4%減でした。2022年のアジア向け輸送は12月までほとんどの月で2021年を下回る水準で推移しました。通年でも3.7%減でした。品目では、単月ではパルプ・古紙やプラスチック、木材などの増加が続いています。古紙については、ベトナム、インド、マレーシア向けの荷量が増え始めており、古紙について中国以外の国への輸出が中心と見られています。
図5:北米復航の輸送量月次推移(2019年1月-2023年2月、単位:TEU)
データ出所:デカルト・データマイン
2023年2月の米国から日本のコンテナ貨物輸送量は5.6万TEUと前年比で18.2%増、前月比では43.1%増でした。日本向け品目では、牧草が大きく減少を続ける一方、紙パルプ類が増加しています。復航でのトランシップは減少しており、2023年2月時点で日本向けトランシップは0.9万TEUと日本向け貨物の14.3%のシェアとなりました。
Freightos社の発表によると、2023年5月5日の米国西岸-中国・東アジアのコンテナ運賃は前週比1.1%下落の745ドル/FEU(図6参照)、米国東岸-中国・東アジアのコンテナ運賃は前週比0.4%上昇の648ドル/FEU(図7参照)となりました。西岸発運賃は7月22日の874ドル/FEUと比べると14.8%の下落、東岸発運賃は同850ドル/FEUと比べ14.8%の下落となっています。米中貿易戦争やドル高の影響もあり、米国からの輸出は難しい局面が続いています。北米復航運賃も往航ほどではないものの下落傾向にあり、大きな運賃上昇は見込みづらい状況です。
図6:北米西岸-アジア航路の運賃推移(2021年5月-2023年5月、単位:米ドル/FEU)
データ出所:Freightos
図7:北米東岸航路―アジアの運賃推移(2021年5月-2023年5月、単位:米ドル/FEU)
データ出所:Freightos
Container Trades Statistics社のデータを取りまとめた(公財)日本海事センターの発表によると、2023年2月のアジア―北欧州・地中海航路(欧州往航)のコンテナ貨物輸送量は前年同月比13.8%減の126.8万TEUとなりました(図8参照)。前月比では29.3%減でしたが、これは春節休みによる輸出減が関係しています。1-2月の累計では12.0%減でした。2022年の欧州向け輸送は7月まで2021年を若干下回る水準での推移が続いていましたが、8月以降乖離が大きくなった状態が続いていました。ただし9月以降は2022年も荷動き自体が基本的に緩やかな上昇傾向にあります。中国(香港含む)に比べて東南アジア積みの減少傾向はゆるく、生産拠点の中国からのシフトを反映しているものとみられます。品目では、機械類のほか、家具・寝具、玩具・遊戯用具、繊維(アパレル)など巣ごもり需要に対応した製品の輸出の減少傾向が続いています。
図8:欧州往航の輸送量月次推移(2019年1月-2023年2月、単位:TEU)
データ出所:Container Trades Statistics
欧州でも消費マインドはあまりよくありません(参考図2参照)。ただし、22年の後半以降、消費マインドに改善が、12月以降ではPMIも改善しており、景況感が持ち直しているとの見方も出ています。とはいえ、インフレ率の鈍化が想定よりも遅れることによるECBのタカ派化、銀行不安を受けた銀行の貸出態度の厳格化、米国経済減速に伴う輸出の停滞といった不安要因が指摘されています。現時点では欧州往航でも減便などの対処が続いています。日本発欧州向けのコンテナ貨物輸送量は、もっとも新しいデータである2022年12月時点で前年同月比16.5%増の4.7万TEUとなっており、2022年通年の輸送量は前年比3.1%減の51.9万TEUでした。
Freightos社の発表によると、2023年5月5日の中国・東アジア-北欧州航路のコンテナ運賃は前週比0.5%下落の1,392ドル/FEU(図9参照)、中国・東アジア-地中海航路のコンテナ運賃は前週比0.6%下落の2,470ドル/FEU(図10参照)となりました。北欧州向け運賃は7月22日の10,219ドル/FEUと比べると86.4%の下落、地中海向け運賃は同12,030ドル/FEUと比べ 79.5%の下落となっています。日本発運賃も同様に下落傾向にあります。
Drewryは5月も欠便対応が行われることでスポットレートの水準は維持されるだろうとの見通しを出しています。北米航路でも欠便は行われていますが、欧州航路の方が規模で上回っています。
図9:中国・東アジア-北欧州航路の運賃週次推移(2021年5月-2023年5月、単位:米ドル/FEU)
データ出所:Freightos
図10:中国・東アジア-地中海航路の運賃週次推移(2021年5月-2023年5月、単位:米ドル/FEU)
データ出所:Freightos
Container Trades Statistics社のデータを取りまとめた(公財)日本海事センターの発表によると、2023年2月の北欧州・地中海―アジア航路(欧州復航)のコンテナ貨物輸送量は前年同月比3.7%減の51.3万TEUとなりました(図11参照)。2022年の欧州復航は2020年および2021年の水準を一貫して下回っており、2023年はさらにそれを下回るペースで推移しています。アジア諸国(日本と中国除く)の消費者物価の上昇が需要減の要因として挙げられています。
品目別ではほとんどの上位品目で減少していますが、その中でも有機化学品や木材の減少が目立っています。
図11:欧州復航の輸送量月次推移(2019年1月-2023年2月、単位:TEU)
データ出所:Container Trades Statistics
Freightos社の発表によると、2023年5月5日の中国・東アジア-北欧州航路のコンテナ運賃は前週比1.2%下落の323ドル/FEU(図12参照)、地中海ー中国・東アジア航路のコンテナ運賃は前週比13.1%下落の364ドル/FEU(図13参照)となりました。北欧州発運賃は8月5日の558ドル/FEUと比べると42.1%の下落、地中海発運賃は同1,093ドル/FEUと比べ 66.7%の下落となっています。
欧州で輸送需要の大きな伸びが期待できない状況であるため、アジア側の需要減に加え、欧州からアジアへの空コンテナ回送の需要が落ち込むとみられています。そのためコンテナスペースに余裕が発生し、引き続き欧州復航に運賃の下げ圧力になっています。
図12:北欧州ー中国・東アジア航路の運賃推移(2021年5月-2023年5月、単位:米ドル/FEU)
データ出所:Freightos
図13:地中海ー中国・東アジア航路の運賃週次推移(2021年5月-2023年5月、単位:米ドル/FEU)
データ出所:Freightos
Container Trades Statistics社によると、2022年2月の北欧州―北米航路(大西洋往航)のコンテナ貨物輸送量は前年同月比10.9%減の37.4万TEUとなっています(図14参照)。前月比では0.7%増でした。2022年の大西洋往航は2020年および2021年の水準を一貫して下回り、2023年も荷動きに勢いはありません。ただし、減少度合いはほかの航路に比べてそれほど大きくありません。
図14:大西洋往航の輸送量月次推移(2019年1月-2023年2月、単位:TEU)
データ出所:Container Trades Statistics
Freightos社の発表によると、2023年5月5日の北欧州-北米東岸航路のコンテナ運賃は前週比8.0%下落の2,708ドル/FEU(図15参照)となりました。北米東岸向け運賃は7月22日の8,423ドル/FEUと比べると67.8%の下落となっています。大西洋往航では北米往航や欧州往航に比べれば運賃下落は見られていなかったものの、収益性の高い航路であることから海運会社がほかの航路から大西洋航路に船腹を移動させました。船腹の移動が運賃下げ圧力となって、運賃水準はコロナ禍前の水準に近づいてきました。
図15:北欧州-北米東岸航路の運賃週次推移(2021年5月-2023年5月、単位:米ドル/FEU)
データ出所:Freightos
Container Trades Statistics社によると、2023年2月の北米―北欧州航路(大西洋復航)のコンテナ貨物輸送量は前年同月比7.8%増の23.8万TEUとなっています(図16参照)。前月比では5.5%増でした。2023年の大西洋復航の荷動きは2021年とかなり近い水準で推移しています。
図16:大西洋往航の輸送量月次推移(2019年1月-2023年2月、単位:TEU)
データ出所:Container Trades Statistics
一方、Freightos社の発表によると、2023年5月5日の北米東岸―北欧州航路のコンテナ運賃は前週比15.6%上昇の481ドル/FEU(図17参照)となりました。北欧州向け運賃は7月22日の727ドル/FEUと比べると46.9%の下落となっています。
図17:北米東岸-北欧州航路の運賃週次推移(2021年5月-2023年5月、単位:米ドル/FEU)
データ出所:Freightos
Container Trades Statistics社によると、2023年2月のアジア域内航路のコンテナ貨物輸送量は前年同月比2.3%増の308.1万TEUとなっています(図18参照)。前月比では6.9%減でした。2022年のアジア域内航路のコンテナ貨物輸送量は2021年とほぼ同じ水準で推移していましたが、8月以降、前年比でマイナスが続いています。アジア地域のインフレを起因とする、中国の製造業からの輸出減や東南アジアへの生産拠点移動によるアジア域内航路のコンテナ貨物減が見られています。また、北米航路や欧州航路でのコンテナ貨物に積む製品の部品や材料がアジア域内航路で運ばれており、欧米の需要減がアジア域内航路の荷動きに波及する可能性もあります。
Container Trades Statisticsによるアジア域内運賃指数[1]は3月時点で99(図19参照)で、2022年の後半から下落傾向がみられたのち、23年に入ってから微減に転じています。
図18:アジア域内航路の輸送量月次推移(2020年1月-2023年2月、単位:TEU)
データ出所:(公財)日本海事センター
図19:アジア域内航路の輸送量月次推移(2020年1月-2023年2月、単位:TEU)
データ出所:(公財)日本海事センター
(公財)日本海事センターによると、2023年2月の日本ー中国航路のコンテナ貨物輸送量は前年同月比18.4%減の63.8万トンとなっています。2022年の日本ー中国航路のコンテナ貨物輸送量は2020年および2021年の水準を下回って推移しており、2023年に入っても同様の傾向が続いています。また、プラスチック関連品の他、ほとんどの品目で輸出量が下落しています。
横浜・上海間の運賃は3月時点で670ドル/FEUであり、2023年には言ったから緩やかな下落となっています(図20参照)。
図20:横浜ー上海航路の運賃月次推移(2020年1月-2023年3月、単位:米ドル/FEU)
データ出所:(公財)日本海事センター
一方、2022年2月の中国ー日本航路のコンテナ貨物輸送量は前年同月比12.1%減の128.3万トンとなっています。直近では、機械類、食品、アパレルなど多くの品目で輸入量が減少しています。2023年に入ってから中国ー日本航路のコンテナ貨物輸送量は2022年を下回る水準で推移しています。また、上海・横浜間の運賃は3月時点で1,590ドル/FEUであり、2021年と近い水準での推移が続いています(図21参照)。
図21:上海―横浜航路の運賃月次推移(2020年1月-2023年3月、単位:米ドル/FEU)
データ出所:(公財)日本海事センター
2022年から23年にかけての世界の航空市場では運賃適用重量(Chargeable Weight)が減少傾向にあり、Xenetaによると、2022年3月から2023年3月まで運賃適用重量は前年同月比で下落続きでした。コロナ禍におけるサプライチェーンのひっ迫状況が緩和されつつあることにともなって、積載容量は増加傾向にあります。2023年に入ってからの積載容量、すなわち供給量が増加しています。需要の減少と供給の増加を受けて飛行機の利用率を意味するダイナミックロードファクターは低下が続き、2023年3月時点では60%です。需給の緩和に沿って運賃も下落傾向にあり、Xenetaによると2023年3月は前年同月比38%減の2.62ドル/kgが運賃水準でした。
TAC Freight Indexによると、2023年5月1日の中国―北米の航空貨物運賃は前週比6.8%上昇の6.59ドル/kg、中国―北米の航空貨物運賃は前週比2.1%下落の4.7ドル/kg(図22参照)となりました。また、World ACDによると、2023年3月の香港ー米国間のイールドが4.58ドル/kgとのことです。2022年1月3日時点の北米向け運賃はそれぞれ、12.18ドル/kgで61.8%の下落となっています。海上コンテナ輸送の需給が緩んでいることから、これまで海上輸送のスケジュール混乱を気にして航空輸送を利用していた荷主が、海上輸送にも戻っております。23年に入ってからの運賃の変動は基本的には大きくない状況です。
図22:中国―米国の航空貨物運賃週次推移(2021年1月-2023年3月、単位:米ドル/kg)
データ出所:TAC Freight Index、Daily Cargo
一方、2023年3月5日の北米―日本の航空貨物運賃は前週比5.5%下落の2.24ドル/kg、北米―中国の航空貨物運賃は前週比7.9%上昇の2.18ドル/kg(図22参照)となりました。2022年3月から6月にかけて日本向けで運賃上昇がみられたものの、復航ということもあり、それ以外の大きな変動は見られていません。
図22:北米―日本、中国の航空貨物運賃週次推移(2021年1月-2023年3月、単位:米ドル/kg)
データ出所:Freightos
Freightos社の発表によると、2023年3月5日の日本―欧州の航空貨物運賃は前週比5.0%下落の4.72ドル/kg、中国―欧州の航空貨物運賃は前週比21.6%下落の4.03ドル/kg(図23参照)となりました。2月後半に北米方面と同じく、春節明けに伴う中国発の運賃上昇が見られましたが、直近では下落しています。2022年初時点の欧州向け運賃はそれぞれ、7.52ドル/kg、8ドル/kgでした。ウクライナ侵攻による迂回飛行や燃料搭載量増加により供給減があるものの、海上コンテナ輸送の需給が緩んでおり、基本的にはその影響を受けたゆるやかな運賃下落傾向がみられています。また、World ACDによると、2023年3月の上海ードイツ間のイールドが4.21ドル/kgとのことです。
図23:日本、中国―欧州の航空貨物運賃週次推移(2021年1月-2023年3月、単位:米ドル/kg)
データ出所:Freightos
一方、2023年3月5日の日本―北米の航空貨物運賃は前週比1.2%下落の3.22ドル/kg、中国―欧州の航空貨物運賃は前週比5.9%下落の2.52ドル/kg(図24参照)となりました。日本向け運賃はウクライナ侵攻による迂回飛行や燃料搭載量増加による供給減の影響が続いています。また、World ACDによると、2023年3月のフランクフルトー中国間のイールドが1.89ドル/kgとのことです。
図24:欧州―日本、中国の航空貨物運賃週次推移(2021年1月-2023年3月、単位:米ドル/kg)
データ出所:Freightos
コンテナ運賃や航空運賃にはさまざまな指標があることが知られています。たとえば、コンテナ運賃で代表的なものとしては、上海航運交易所が発表するCCFI(China Containerized Freight Index; 中国輸出コンテナ運賃指数)とSCFI(Shanghai Containerized Freight Index)や、英国の調査会社Drewryが発表するWorld Container Indexなどがあります[2]。航空運賃でもバルチック航空貨物運賃指数などが知られています。
今回のレポートでは、Freightosが発表するFreightos Baltic Index(FBX)を使用します。FBXは、世界の主要12航路のコンテナ運賃、および各航路の運賃を荷動き量のシェアで加重平均したグローバル運賃指数を発表しています。対象航路は、中国/東アジア・北米西岸(太平洋航路)、中国/東アジア・北米東岸(北米東岸航路)、中国/東アジア・北欧州(欧州航路)、中国/東アジア・地中海(地中海航路)、北米東岸・北欧州(大西洋航路)、欧州発南米東岸着、欧州発南米西岸着(欧州・南米航路)です。
運賃は40フィートドライコンテナを対象としたスポット運賃であり、BAF(Banker Adjustment Factor; 燃油サーチャージ)、CAF(Currency Adjustment Factor; 通貨変動調整係数)、PSS(Peak Season Surcharge; ピークシーズンサーチャージ)など各種サーチャージが含まれています。一方で、THC(Terminal Handling Cost)など発着港湾での料金や通関費用は入っていません。同社は海運会社、フォワーダー、NVOCCから運賃情報を収集しており、運賃データは毎日更新されています。同社のWebサイトは、これらのデータをもとに、2018年からバルチック海運取引所と共同でコンテナ運賃情報であるFreightos Baltic Index(FBX)を公表しています。
航空運賃についてもFreightos Air Index(FAX)を使用しています。同指標は毎週日曜日に、前週の100~300キロと300~1,000kgの2つの重量区分に分けて、1キロあたりの米ドル建てスポットレートを示しています。FAXでは、①主要61空港間の空港ペア、②17地域間のトレードレーン、③世界の単一指標について運賃指標を提供しています。また、一般貨物のみを対象としています。(ただし、Freightosがデータを有料サービス化し、公開しなくなったため、次回の発表以降FAXの使用は再考します)
[1] 2008年の運賃を100と置いた運賃指数。TEUあたりの運賃を
[2] コンテナ運賃については、後藤洋政(2022)”コンテナ運賃の動向と物価に与える影響の整理”( https://www.jpmac.or.jp/file/1643248241037.pdf)がここで挙げている以外の代表的な運賃指標についてまとめています。本資料でもFBXについての説明は同レポートを参考にしています。
※こちらは【2023年5月時】のレポートです。最新版の市況レポートは以下からアクセスできます。