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国際物流の市況と見通しレポート(23年3月版)【拓殖大学松田教授執筆】

作成者: Shippio|2023.03.31

 

筆者:松田琢磨(拓殖大学 商学部 国際ビジネス学科 教授)

 

 

※こちらは【2023年3 月時】のレポートです。最新版の市況レポートは以下からアクセスできます。

 

 

はじめに

筆者について

 拓殖大学商学部教授。筑波大学第三学群社会工学類卒業,東京工業大学大学院理工学研究科博士課程単位取得退学、博士(学術)(東京工業大学)。2011年より(公財)日本海事センター研究員、2018年同主任研究員。同センターでは主にコンテナ輸送に関する調査、分析に従事。2020年より現職。研究分野は海運経済学、コンテナ輸送、物流(国際・国内)など。2014年度日本海運経済学会賞(論文の部)、2014年度および2020年度日本物流学会賞(論文等の部)、2021年度日本海運経済学会国際交流賞をそれぞれ受賞。近著に『新国際物流論 基礎からDXまで』(晃洋書房)がある。所属学会は日本海運経済学会(常任理事、産官学連携委員長、編集副委員長)、日本物流学会(理事、編集委員)など。2021年5月よりNewsPicksプロピッカーも務め、海運・物流のニュースを中心にコメントも行っている。

 

レポート目次

  1. はじめに    
  2. コンテナ海運市場
    1. 北米往航(アジア→米国)
    2. 北米復航(米国→アジア)  
    3. 欧州往航(アジア→欧州)  
    4. 欧州復航(欧州→アジア)
    5. 大西洋往航(欧州→北米)  
    6. 大西洋復航(北米→欧州)
    7. アジア域内航路・日中航路 
  3. 航空貨物市場
    1. アジア-北米間 航路
    2. アジア-欧州間航路

コンテナ海運市場

1. 海上コンテナ:北米往航(アジア→米国)

a. 荷動き動向

 デカルト・データマイン社の発表によると、2022年11月のアジア主要10カ国・地域発米国向け航路(北米往航)のコンテナ貨物輸送量は前年同月比21.1%減の132.5万TEUとなりました(図1参照)。前月比では11.0%減でした。2022年の北米向け輸送は7月まで2021年を若干上回る水準で推移してきました。しかしながら、8月には前年を下回る水準に転じ、9月以降は大幅な減少が続いています。品目別にみても主要品目はほぼ減少しています。

 

図1:北米往航の輸送量月次推移(2020年1月-2022年11月、単位:TEU)

データ出所:デカルト・データマイン

 

 通常、9~10月がクリスマスセールに向けたピークシーズンとされています。しかしながら、荷動きが増えなかった理由として①米国で住宅着工件数や許可件数が低水準で推移していること、②小売業者の在庫が十分に積みあがっていること、が挙げられます。米国の住宅市場は、住宅ローン金利上昇の影響を受けて、着工件数や許可件数の定価が続いています。住宅着工件数は 2022 年 2~4 月には月次平均で 177 万件の水準でしたが、9 月以降は 140万件台に低下しています。また、許可件数も9月以降3か月連続で下落しています。②は夏以降、大手小売業者を中心に過剰在庫に直面しています。消費動向は比較的安定していたものの、小売売上高は10月の増加から、11月は前月比0.6%減となっています。これらの影響が荷動き減をもたらしたと考えられます。

もう一つ注目したいのは、荷動きが減少する中で、ベトナム積みやインド積みは1-11月の累計ベースでみると、前年同月比で増加していることです。中国が1-11月の累計ベースで4.7%減であったのに対し、ベトナムは13.3%増、インドは14.9%増となっております。短期的にはロックダウンやゼロコロナ政策による生産減の影響が大きいとのことです。今後は、米中貿易摩擦の問題や中国からの生産シフトの問題が荷動きに関係してくる可能性が出てくると考えています。

 

一方、2022年11月の日本から米国のコンテナ貨物輸送量は5.2万TEUと前年比で9.9%増、前月比では2.7%増でした。前回お伝えした、日本発コンテナ貨物のトランシップ増加傾向が続いています。日本から米国に向けて輸出されるコンテナ貨物のうち43.2%を占める2.2万TEUが韓国、中国などで積み替えられています。品目では、自動車部品、機械類、タイヤなどのゴム製品が増加しています。このところ、東京港から直航貨物輸送量より、日本港湾で積み込んだ貨物を釜山でトランシップして米国へ運ぶ量が多い状況が続いています。11月においては東京港から米国に直航で輸送された量は1.2万TEU(前年同月比0.6%減)であるのに対し、釜山港を経由して運ばれたコンテナ貨物輸送量は1.4万TEU(同15.1%増)でした。

 

b.運賃動向

 Freightos社の発表によると、2022年1月6日の中国・東アジア-米国西岸のコンテナ運賃は前週比1.0%増の1,396ドル/FEU(図2参照)、中国・東アジア-米国東岸のコンテナ運賃は前週比1.4%減の2,858ドル/FEU(図3参照)となりました。西岸向け運賃は7月22日の6,957ドル/FEUと比べると79.9%の下落、東岸向け運賃は同10,000ドル/FEUと比べ71.4%の下落となっています。日本発の運賃も同様に下落傾向にあります。

米国向け航路の運賃下落の要因としては、荷動きが減少に転じたことに大きな要因があります。鉄道輸送や西岸の労使交渉といった問題はまだ残されているものの、コロナ禍による内陸輸送の問題が荷動き減少を受けて緩和しつつあることも影響しています。すなわち、内陸輸送や港湾の混雑問題が解決に向かっているため、コンテナ船のスペースを確保することが以前より容易になった(=供給が増えた)ことが運賃下落につながっています(図4参照)。

西岸における労使交渉問題が解決していないことが西岸向け運賃と東岸向け運賃の動向に影響しています。西岸でのスローダウンやストライキを警戒した荷主が、荷動きの東岸経由への貨物輸送へのシフトを進めたため、西岸向け運賃に比べ東岸向け運賃の下落が大きくない状況となっていました。ただし、直近では米国向け貨物自体が減少傾向にあるため、東岸向け運賃も下落傾向が現れています。

全体としては、コンテナ船社による欠便の効果もあって直近では運賃下落の勢いが小さくなっていますが、微減傾向は続いています。下げ止まりから上昇につながるかが改めて注目点です。

 

図2:中国・東アジア-米国西岸航路の運賃週次推移(2022年10月-2023年1月、単位:米ドル/FEU)

データ出所:Freightos

 

図3:中国・東アジア-米国東岸航路の運賃週次推移(2022年10月-2023年1月、単位:米ドル/FEU)

データ出所:Freightos

 

図4:米国の荷動き量トップ10港の平均遅延日数(2022年10月-2022年12月、単位:日)

データ出所:デカルト・データマイン

 

2. 海上コンテナ:北米復航(米国→アジア)  

 

a. 荷動き動向


 デカルト・データマイン社の発表によると、2023年12月の米国発アジア主要10カ国・地域向け航路(北米復航)のコンテナ貨物輸送量は前年同月比5.1%増の45.5万TEUとなりました(図7参照)。前月比では2.4%減でした。2022年のアジア向け輸送は12月までほとんどの月で2021年を下回る水準で推移しました。通年でも3.7%減でした。品目では、飼料(牧草、調整飼料)や木材の減少が目立っています。木材の減少は中国の対米制裁関税の問題も背景にあります。

 
図7:北米復航の輸送量月次推移(2019年1月-2022年12月、単位:TEU)
データ出所:デカルト・データマイン

 2022年12月の米国から日本のコンテナ貨物輸送量は5.5万TEUと前年比で4.4%増ではあるものの、前月比では0.1%減でした。品目では、牧草が大きく減少を続ける一方、紙パルプ類が増加しています。復航でも日本向けのトランシップは1.1万TEUと20.4%を占めています。


b. 運賃動向


 Freightos社の発表によると、2023年3月3日の米国西岸-中国・東アジアのコンテナ運賃は前週比9.1%上昇の817ドル/FEU(図8参照)、米国東岸-中国・東アジアのコンテナ運賃は前週比2.5%上昇の881ドル/FEU(図9参照)となりました。西岸発運賃は7月22日の874ドル/FEUと比べると11.6%の下落、東岸発運賃は同850ドル/FEUと比べ 3.6%の上昇となっています。米中貿易戦争やドル高の影響もあり、米国からの輸出は難しい局面が続いています。北米復航運賃も往航ほどではないものの下落傾向にあります。北米復航も大きな運賃上昇などは見込みづらい状況です。

 
図8:北米西岸-アジア航路の運賃週次推移(2021年3月-2023年3月、単位:米ドル/FEU)
データ出所:Freightos

 
図9:北米東岸航路―アジアの運賃週次推移(2021年3月-2023年3月、単位:米ドル/FEU)
データ出所:Freightos


3. 欧州往航(アジア→欧州)


a. 荷動き動向


 Container Trades Statistics社のデータを取りまとめた(公財)日本海事センターの発表によると、2022年12月のアジア―北欧州・地中海航路(欧州往航)のコンテナ貨物輸送量は前年同月比16.4%減の126.8万TEUとなりました(図10参照)。前月比では8.7%増でした。2022年の欧州向け輸送は7月まで2021年を若干下回る水準での推移が続いていましたが、8月以降乖離が大きくなった状態が続いています。ただし9月以降は2022年も荷動き自体が緩やかな上昇傾向にあります。中国(香港含む)、北東アジア積みでの下落が続いている一方で、東南アジア積みはわずかに増加する傾向が続いており、生産拠点の中国からのシフトを反映しているものとみられます。品目では、機械類のほか、家具・寝具、玩具・遊戯用具など巣ごもり需要に対応した製品の輸出の減少傾向が続いています。

 
図10:欧州往航の輸送量月次推移(2019年1月-2022年12月、単位:TEU)
データ出所:Container Trades Statistics

欧州でも消費マインドはあまりよくありません(参考図2参照)。ただし、22年の後半以降、消費マインドに改善が、12月以降ではPMIも改善しており、景況感が持ち直しているとの見方も出ています。とはいえ、貨物量の減少は否めず、欧州往航でも減便などの対処が続いています。日本発欧州向けのコンテナ貨物輸送量は、もっとも新しいデータである10月時点で前年同月比2.0%減の4.4万TEUとなっています。


b. 運賃動向

 

 Freightos社の発表によると、2023年3月3日の中国・東アジア-北欧州航路のコンテナ運賃は前週比16.7%下落の2,179ドル/FEU(図11参照)、中国・東アジア-地中海航路のコンテナ運賃は前週比13.8%下落の3,437ドル/FEU(図12参照)となりました。北欧州向け運賃は7月22日の10,219ドル/FEUと比べると78.7%の下落、地中海向け運賃は同12,030ドル/FEUと比べ 71.4%の下落となっています。日本発運賃も同様に下落傾向にあります。

 
図11:中国・東アジア-北欧州航路の運賃週次推移(2021年3月-2023年3月、単位:米ドル/FEU)
データ出所:Freightos

 
図12:中国・東アジア-地中海航路の運賃週次推移(2021年3月-2023年3月、単位:米ドル/FEU)
データ出所:Freightos

 先述した通り、欧州では経済見通しがあまりよくないこともあり、輸送需要の減少が見込まれています。たとえば、Drewryによると欧州往航における消席率は2022年1月では90%を超えていたのに対し、9月から11月は70%を切る状態が続き、12月も70%代になっています。Drewryはこの航路における消席率が23年の第一四半期も80%を下回る水準になると予測しています。


4. 欧州復航(欧州→アジア)


a. 荷動き動向


 Container Trades Statistics社のデータを取りまとめた(公財)日本海事センターの発表によると、2022年12月の北欧州・地中海―アジア航路(欧州復航)のコンテナ貨物輸送量は前年同月比1.6%減の56.4万TEUとなりました(図13参照)。2022年の欧州復航は2020年および2021年の水準を一貫して下回っています。アジア諸国(日本と中国除く)の消費者物価の上昇が需要減の要因となっています。
品目別ではほとんどの上位品目で減少していますが、その中でも有機化学品や食料品の減少が目立っています。

 
図13:欧州復航の輸送量月次推移(2019年1月-2022年12月、単位:TEU)
データ出所:Container Trades Statistics


b. 運賃動向

 

 Freightos社の発表によると、2023年3月3日の中国・東アジア-北欧州航路のコンテナ運賃は前週比2.9%下落の337ドル/FEU(図14参照)、地中海ー中国・東アジア航路のコンテナ運賃は前週比15.1%減の578ドル/FEU(図15参照)となりました。北欧州発運賃は8月5日の558ドル/FEUと比べると39.6%の下落、地中海発運賃は同1,093ドル/FEUと比べ 47.1%の下落となっています。日本向け運賃も同様に下落傾向にあります。

 
図14:北欧州ー中国・東アジア航路の運賃週次推移(2021年3月-2023年3月、単位:米ドル/FEU)
データ出所:Freightos

 
図15:地中海ー中国・東アジア航路の運賃週次推移(2021年3月-2023年3月、単位:米ドル/FEU)
データ出所:Freightos

 先述した通り、欧州では経済見通しがあまりよくないこともあり、輸送需要の減少が見込まれています。アジア側の需要減に加え、欧州からアジアへの空コンテナ回送の需要が落ち込むとみられていることもあってコンテナスペースに余裕が発生しており、引き続き欧州復航に運賃の下げ圧力になっています。


5. 大西洋往航(欧州→北米)

 

a. 荷動き動向

 

 Container Trades Statistics社によると、2022年12月の北欧州―北米航路(大西洋往航)のコンテナ貨物輸送量は前年同月比7.9%減の43.1万TEUとなっています(図16参照)。前月比では4.8%増でした。2022年の大西洋往航は2020年および2021年の水準を一貫して下回っていますが、今のところ減少度合いはほかの航路に比べてあまり大きくありません。

 
図16:大西洋往航の輸送量月次推移(2019年1月-2022年12月、単位:TEU)
データ出所:Container Trades Statistics


b. 運賃動向


 Freightos社の発表によると、2023年1月6日の北欧州-北米東岸航路のコンテナ運賃は前週比8.0%下落の5,087ドル/FEU(図17参照)となりました。北欧州向け運賃は7月22日の8,423ドル/FEUと比べると45.8%の下落となっています。まだ大西洋往航では北米航路や欧州航路ほどの運賃下落は見られておらず、コロナ禍の時期の運賃がそれなりに保てていることから現時点では収益性の高い航路です。そのため、大西洋航路に海運会社がほかの航路から船腹を移動させており、それが運賃下げ圧力となっています。今後もこの動きは続くとみられ、運賃は下がっていくものと見られます。

 
図17:北欧州-北米東岸航路の運賃週次推移(2021年3月-2023年3月、単位:米ドル/FEU)
データ出所:Freightos


6. 大西洋復航(北米→欧州)

 

a. 荷動き動向

 

 Container Trades Statistics社によると、2022年12月の北米―北欧州航路(大西洋復航)のコンテナ貨物輸送量は前年同月比10.6%増の21.5万TEUとなっています(図18参照)。前月比では4.2%増でした。2022年の大西洋復航の荷動きは12月以外、2021年の水準を下回っています。

 
図18:大西洋往航の輸送量月次推移(2019年1月-2022年12月、単位:TEU)
データ出所:Container Trades Statistics


b.    運賃動向

 

 一方、Freightos社の発表によると、2023年3月3日の北米東岸―北欧州航路のコンテナ運賃は前週比1.9%上昇の481ドル/FEU(図19参照)となりました。北欧州向け運賃は7月22日の727ドル/FEUと比べると33.8%の下落となっています。

 
図19:北米東岸-北欧州航路の運賃週次推移(2021年3月-2023年3月、単位:米ドル/FEU)
データ出所:Freightos


7. アジア域内航路・日中航路

 

a. 荷動き動向

 

 Container Trades Statistics社によると、2022年12月のアジア域内航路のコンテナ貨物輸送量は前年同月比4.5%減の379.7万TEUとなっています(図20参照)。前月比では5.9%減でした。2022年のアジア域内航路のコンテナ貨物輸送量は2021年とだいたい同じ水準で推移していますが、8月以降、前年比でマイナスが続いています。アジア域内航路では、Drewryによるアジア域内運賃指数は2月時点で1,341ドル/FEUで、23年に入ってから微減傾向がみられています。アジア地域のインフレを起因とする、中国の製造業からの輸出減や東南アジアへの生産拠点移動によるアジア域内航路のコンテナ貨物減少が見られています。また、北米航路や欧州航路でのコンテナ貨物に積む製品の部品や材料がアジア域内で運ばれているため、欧米での需要減がアジア域内航路の荷動きにも波及する可能性もあります。

 
図20:アジア域内航路の輸送量月次推移(2020年1月-2022年12月、単位:TEU)

 (公財)日本海事センターによると、2022年10月の日本-中国航路のコンテナ貨物輸送量は前年同月比13.9%減の71.2万トンとなっています。2022年の日本-中国航路のコンテナ貨物輸送量は2020年および2021年の水準を下回って推移しています。また、プラスチック関連品の他、ほとんどの品目で輸出量が下落しています。
運賃は1月時点で840ドル/FEUであり、大きな変化はみられていません(図21参照)。

 
図21:横浜ー上海航路の運賃月次推移(2020年1月-2022年11月、単位:米ドル/FEU)
データ出所:(公財)日本海事センター

 一方、2022年12月の中国-日本航路のコンテナ貨物輸送量は前年同月比12.3%減の166.4万トンとなっています。直近では、機械類、食品、アパレルなど多くの品目で輸入量が増加しています。2022年の中国-日本航路のコンテナ貨物輸送量は2021年とほぼ同じ水準となりました。


b. 運賃動向

 

運賃は1月時点で1,590ドル/FEUであり、2021年と近い水準での推移が続いています(図22参照)。

 
図22:上海-横浜航路の運賃月次推移(2020年1月-2022年11月、単位:米ドル/FEU)
データ出所:(公財)日本海事センター

C. 航空貨物市場

1.  アジア-北米間 航路

 

 Freightos社の発表によると、2023年3月5日の日本―北米の航空貨物運賃は前週比6.8%上昇の6.59ドル/kg、中国―北米の航空貨物運賃は前週比80.6%上昇の7.62ドル/kg(図23参照)となりました。中国発の運賃上昇は春節明けに伴って、貨物が増えたことによるものとみられます。2022年1月10日時点の北米向け運賃はそれぞれ、10ドル/kg、14.17ドル/kgでした。海上コンテナ輸送の需給が緩んでいることから、これまで海上輸送のスケジュール混乱を気にして航空輸送を利用していた荷主が、海上輸送にも戻っており、運賃の変動は23年に入って基本的には大きくない状況です。
 


図23:日本、中国―北米の航空貨物運賃週次推移(2021年1月-2023年3月、単位:米ドル/kg)
データ出所:Freightos

 一方、2023年3月5日の北米―日本の航空貨物運賃は前週比5.5%下落の2.24ドル/kg、北米―中国の航空貨物運賃は前週比7.9%上昇の2.18ドル/kg(図24参照)となりました。2022年3月から6月にかけて日本向けで運賃上昇がみられたものの、復航ということもあり、それ以外の大きな変動は見られていません。

 
図24:北米―日本、中国の航空貨物運賃週次推移(2021年1月-2023年3月、単位:米ドル/kg)
データ出所:Freightos

2. アジア-欧州間航路

 

 Freightos社の発表によると、2023年3月5日の日本-欧州の航空貨物運賃は前週比5.0%下落の4.72ドル/kg、中国―欧州の航空貨物運賃は前週比21.6%下落の4.03ドル/kg(図25参照)となりました。2月後半に北米方面と同じく、春節明けに伴う中国発の運賃上昇が見られましたが、直近では下落しています。2022年初時点の欧州向け運賃はそれぞれ、7.52ドル/kg、8ドル/kgでした。ウクライナ侵攻による迂回飛行や燃料搭載量増加により供給減があるものの、海上コンテナ輸送の需給が緩んでおり、基本的にはその影響を受けたゆるやかな運賃下落傾向がみられています。

 
図25:日本、中国―欧州の航空貨物運賃週次推移(2021年1月-2023年3月、単位:米ドル/kg)
データ出所:Freightos

 一方、2023年3月5日の日本-北米の航空貨物運賃は前週比1.2%下落の3.22ドル/kg、中国-欧州の航空貨物運賃は前週比5.9%下落の2.52ドル/kg(図26参照)となりました。日本向け運賃はウクライナ侵攻による迂回飛行や燃料搭載量増加による供給減の影響が続いています。

 
図26:欧州―日本、中国の航空貨物運賃週次推移(2021年1月-2023年3月、単位:米ドル/kg)
データ出所:Freightos

 

D. 参考:使用データについて

 

 コンテナ運賃や航空運賃にはさまざまな指標があることが知られています。たとえば、コンテナ運賃で代表的なものとしては、上海航運交易所が発表するCCFI(China Containerized Freight Index; 中国輸出コンテナ運賃指数)とSCFI(Shanghai Containerized Freight Index)や、英国の調査会社Drewryが発表するWorld Container Indexなどがあります 。航空運賃でもバルチック航空貨物運賃指数などが知られています。
 今回のレポートでは、Freightosが発表するFreightos Baltic Index(FBX)を使用します。FBXは、世界の主要12航路のコンテナ運賃、および各航路の運賃を荷動き量のシェアで加重平均したグローバル運賃指数を発表しています。対象航路は、中国/東アジア・北米西岸(太平洋航路)、中国/東アジア・北米東岸(北米東岸航路)、中国/東アジア・北欧州(欧州航路)、中国/東アジア・地中海(地中海航路)、北米東岸・北欧州(大西洋航路)、欧州発南米東岸着、欧州発南米西岸着(欧州・南米航路)です。
 運賃は40フィートドライコンテナを対象としたスポット運賃であり、BAF(Banker Adjustment Factor; 燃油サーチャージ)、CAF(Currency Adjustment Factor; 通貨変動調整係数)、PSS(Peak Season Surcharge; ピークシーズンサーチャージ)など各種サーチャージが含まれています。一方で、THC(Terminal Handling Cost)など発着港湾での料金や通関費用は入っていません。同社は海運会社、フォワーダー、NVOCCから運賃情報を収集しており、運賃データは毎日更新されています。同社のWebサイトは、これらのデータをもとに、2018年からバルチック海運取引所と共同でコンテナ運賃情報であるFreightos Baltic Index(FBX)を公表しています。
 航空運賃についてもFreightos Air Index(FAX)を使用しています。同指標は毎週日曜日に、前週の100~300キロと300~1,000kgの2つの重量区分に分けて、1キロあたりの米ドル建てスポットレートを示しています。FAXでは、①主要61空港間の空港ペア、②17地域間のトレードレーン、③世界の単一指標について運賃指標を提供しています。また、一般貨物のみを対象としています。

 

 

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