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釜山トランシップの増加で、荷主が取るべきアクションを解説

作成者: Shippio|2023.06.21

本記事は6月13日(火)に開催した「データから読み解く、増えるトランシップの現状と荷主に求められる対応」のスピンオフ記事です。

 

当日のウェビナーの基礎的な内容に加え、

・「荷主に求められる対応やアクション」についての具体的な解説

・ウェビナー内で回答しきれなかったご質問への回答

 

などを追加しています。

 

日本と韓国をめぐる航路や釜山港トランシップの現状から、いま荷主が取るべき対策や必要なアクションについて、初回放送時の視聴者からのご質問を踏まえ、より具体的に解説しますので、ぜひご参考にしてください。

1.釜山港トランシップの注目度

釜山港はコンテナ取扱量世界7位と言われており、世界の注目度は大きく高まっています。
一方で、以下の理由から日韓航路はコンテナ輸送における注目度は高くありません。

 

  • 韓国船社が大きなシェアを持っていること
  • 参入している日本船社がほとんどないこと
  • 近距離輸送であり運賃収入の面からあまり魅力がないとみなされていること


一方で日本から欧米にコンテナ輸送を行うための積み替え拠点である釜山港へ貨物を運ぶための航路として日韓航路は大きな役割を持っています。釜山港における日本との間のコンテナ取扱量は、日韓両国を目的地とするローカル輸送が119.8万TEU、フィーダーまたはトランシップが行われたコンテナの数は171.7万TEU(いずれも2021年)にのぼります。

 


これは、日本を発着するコンテナの約一割に上ります。日本の地方港にとって、釜山港との航路は重要な国際航路であり、釜山港は外国との貿易に際して通過するチェックポイントです。日本発着貨物は釜山トランシップへの依存度を高めています。
日韓航路のデータを用いたより細やかな現状を知りたい方は、以下ページから資料のダウンロードが可能です。

データから読み解く、増えるトランシップの現状と荷主に求められる対応

 

2.日韓航路は韓国の中小船社が多くのシェアを占める


日韓航路で気になる点は韓国の中小船社のシェアが圧倒的に高いことです。2017年には日韓航路の船腹量で65%を韓国船社が占めていたとの話があります。

 


日系の海運会社でフルコンテナ船を用いて海外との定期航路を運航している船社は、Ocean Network Express(ONE)以外には神原汽船があるものの、日韓航路のサービスはONEによる苫小牧・釜山間のHokkai Arirangサービスのみです。

この原因は1967年に韓国で制定された「海運振興法」が影響しています。より細かな歴史的背景を知りたい方は以下ページから資料のダウンロードが可能です。

データから読み解く、増えるトランシップの現状と荷主に求められる対応

3.政府主導の船社再編とコンテナ船の大型化

韓国船社には再編の動きがみられています。再編が進むと航路の合理化が行われて、寄港しない港が発生します。その影響は背後の荷主企業や地域経済全体にも及ぶことになります。


また、中小船社の合併は今後も起こる可能性があります。たとえば、中小の海運会社が多い韓国での再編などを考えることができます。韓国では、2016年の韓進海運の倒産をきっかけに韓国船社14社が集まって、政府の肝煎りで韓国海運連合(KSP)が結成されました。

 



再編に加え、コンテナ船の大型化傾向も地方港にとって懸念点です。図表11は韓国の中小船社のうち、高麗海運・長錦商船・興亜海運および南星海運の1隻当たり船腹量の推移を示しています。2000年代から2010年代にかけて1隻当たり船腹量大型化が進み、2005から2023年までの間に3社の船腹量はそれぞれ1.9倍から2.7倍となりました。日韓航路でも1990年代に韓国船社が主力としていた340TEU型の船舶が入れ替わるなかで、700TEU型や1,000TEU型への入れ替えが進行しています。

 



4.荷主に求められる対策とサプライチェーンの可視化

韓国船社の動向を注視し、リスクに備えることが必要です。具体的には、船社の再編や共同運航の増加、さらには大型化の傾向が強まることで、荷主にとってリードタイム増加やコスト増の問題を引き起こす可能性があります。

 

輸送シェアが高い日韓航路に参入する船社の間で再編や共同運航の増加が見られれば、船社間で航路や寄港地の重複が起こり、合理化が促されます。ここで寄港頻度の低下と運賃の上昇が懸念されます。

 

頻度低下はリードタイムの増加を通じて、運賃の上昇は輸送コストの増加を通じて地方港の利点を減ずることになります。

こうしたリスクに備えるためにも、荷主はサプライチェーンの可視化が求められています。

 

サプライチェーンの可視化によって、船の位置や状況を示す動静情報を活用することで売上機会損失や過剰在庫を防ぎ、売り上げの確保と在庫費用や商品の廃棄コストの削減を可能にします。また、調達や生産、販売に関しても適切な輸送スケジュールの設定などに役立てることができるため、業務効率化を促進して売上増やコスト削減につなげられます。

 

動静情報を物流関係者の間で、時間差なしで同じ形で位置情報を共有することは意外と難しいものの、近年の技術革新によって大きく進展しました。さらに、最近ではコンテナ船スペースの情報も可視化が進み、海運会社やフォワーダーが顧客企業の生産・販売計画とコンテナ船スペース情報をすり合わせることも以前より容易に行えるようになっています。

 

5.Shippioの活用事例

Shippioは、サプライチェーンを可視化するクラウドサービスを提供しています。Shippioのクラウドサービスでのトラッキングは、複数データソースからのデータ取得に加え、独自のロジックやオペレーションによって、トランシップについても、スムーズにトラッキングを行うことが可能です。

 

 

Shippioのクラウドサービスが日韓航路や釜山トランシップに、どのように活用できるかを事例を交えて解説します。釜山⇔日本各港のトランジットタイムは1-3日程度であるものの、ロールオーバー(積み残し)リスクがあったり、冬季、日本海側の地方港への航路については荒天によりスケジュール変更が頻繁に発生しやすいため、敬遠されることもあります。

 

しかしながら、サプライチェーンの可視化を行いながら、釜山でのトランシップをうまく活用することで、コストダウンやBCPルートとしての活用も期待できます。つまり、Shippioをご利用いただくことで、釜山トランシップルートの利用ハードルを下げることが可能になります。

 

釜山トランシップでのShippio活用事例

 

顧客Aは欧州から某地方港向けに釜山経由での輸入を行っており、釜山での積み替え・接続確認のための問い合わせ工数、積み残しが発生した際のドレージの手配の再調整工数が課題となっていました。

 

Shippio導入後は、2nd vesselへの積載時期がタイムリーに把握することができるようになり、動静確認工数及び遅延が発生した際のドレージ再手配の工数を大幅に削減することに成功しました。

 

 

6.ウェビナーでのご質問の回答集

─ US向けの船便で釜山港の混雑があった場合、釜山港トランシップではなく、神戸港ダイレクト便を使うことが多いです。その他に選択肢や良い航路の候補はありますでしょうか?

 

このケースでは、3通りの航路の活用が考えられます。

1.USへの直行便
2.釜山港トランシップ
3.釜山港以外のトランシップ

いずれも状況に応じて使い分けることをおすすめします。

 

─ トランシップ港における評価のポイントは具体的に何が挙げられますでしょうか?

 

トランシップを評価するポイントとして以下が挙げられます。

 

・荷役効率が高い(シンガポールなど) 
・トランシップの時間が短く済む 
・自動化が進んでいる(上海やシンガポール)
 ・ストライキが少ない

Shippioのクラウドサービスを活用することで、遅延に関するデータを蓄積し、データに基づいて判断することが可能となります。

 

─ 昨年末のスト以来、韓国内の輸送費が急上昇しておりますが、こちらが下降局面になる時期はいつになるか見通しはございますでしょうか?

 

原油価格に大きく左右されるかと思います。物価高もあり、見通しは現状不透明です。

 

─ 釜山経由北米向けは運賃、リードタイムでも有効ですが、中国、東南アジア向けは直行の方が競争力があると考えますが、如何でしょうか?

 

日本主要港発の場合でも、釜山経由中国、アジア向けの場合、海上運賃が直行便よりも安くなるケースもあります。
リードタイムとトータルコストでご判断いただければと思います。

 

 

─ 釜山港は、CYが離れているため、トランシップ港としてうまく機能していないと思います。それでも釜山港はおすすめ港なのでしょうか?

 

釜山港は、コンテナ取り扱い数世界第7位(2020年時点)で、世界でも有数なハブ港といえます。釜山経由便もコスト、リードタイムで判断しながら、状況に応じてうまく使いわけていくことをおすすめします。

 

まとめ

本記事は「データから読み解く、増えるトランシップの現状と荷主に求められる対応」のスピンオフ記事として、「荷主に求められる対応やアクション」についての具体的な解説、ウェビナー内で回答しきれなかったご質問への回答について、加筆・編集したものです。

荷主に求められる対策として、様々なリスクを管理するためにも、サプライチェーンの可視化は急務と言えます。

ぜひ本記事を参考に、自社のサプライチェーンの可視化に向けてチャレンジしてみてください。