新型コロナウイルスのワクチン接種が、とうとう先月より日本でも始まりました。これまで、ワクチンを載せた航空機計7便がベルギーから成田空港に到着しています。今回は、コロナが航空貨物市況に及ぼした影響を振り返ります。
2020年3月、新型コロナウイルス感染症拡大により、各国でロックダウンが始まると、世界の国際旅客便の9割が運休・減便に追い込まれました。
従来、航空貨物の約半数は、旅客便の床下にある、ベリーと呼ばれる貨物室で輸送されます。旅客便の運休によりベリースペースが激減するなか、マスクや医療物資などの緊急輸送の需要が高まり、輸送運賃は急騰。
各航空会社はスペース供給のため、旅客機を貨物用へ転用するなどの対応に追われます。座席を取り払った客室に貨物を載せた”旅客機貨物便”の姿をニュースなどでご覧になった方も多いのではないでしょうか。
チャーター便や貨物臨時便の運航も急増します。
2020年上期、成田空港における国際線貨物便の発着回数は、前年同期比の129%(15291回)を記録し、2004年以来の最高値を更新しました。
夏以降、運賃の高騰はいったん落ち着いたかに見えましたが、テレワークの普及によるIT機器向けの半導体や電子部品、また自動車メーカーの生産活動再開による自動車関連部品などの荷動きが活発化し、再び高騰します。
クリスマス商戦や年末商戦、さらには、コンテナ船のスペース不足による「船落ち」貨物の航空シフトも相まって、欧米向けを中心に運賃は高止まりしました。
IATA(国際航空運送協会)は、今年1月の国際貨物量はコロナ感染拡大前である2019年の水準まで回復し、22ヶ月ぶりにプラスに転じたと発表しました。一方、旅客需要がコロナ以前のように戻るのにはあと数年はかかるだろうとの見方を示しています。
経営難に苦しむ航空会社は、需要の高まる国際貨物輸送に生き残りをかけています。
ANAカーゴは、旅客機を使用した貨物臨時便を大幅に増やしたほか、貨物専用機による臨時便・チャーター便を設定。3月の国際貨物便数は過去最高になる見通しで、4月には大型貨物専用機ボーイング777Fを成田~ロサンゼルス間で運航予定です。
また、独ルフトハンザ・カーゴも2020年11月、関空で使用する貨物機6機をボーイング777Fに更新。
韓国・大韓航空は遊休旅客機を貨物機に転用するなどし、営業黒字を確保しました。
年明け以降、化学品関連など、通常ではコンテナ船で輸送される貨物の航空シフトが目立ちます。
戻らぬ旅客需要や依然「コンテナ不足」が叫ばれる海上輸送の混乱を受けて、航空輸送の高い需要も今しばらく続きそうです。
我々は今後も物流業界の「いま」を皆様にお伝えしてまいります。
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Air Cargo Market Analysis (IATA)
『【激変・コロナ禍の国際物流】 航空貨物スペース動向 機材なく、年内の新規チャーター困難』
(Daily Cargo電子版、2020年12月10日)
http://www.daily-cargo.com/new/news/143310/release_dt
『【記者座談会・航空会社この1年】 国際線ベリー9割減、航空大打撃 世界各地で旅客機貨物便運航』
(Daily Cargo電子版、2020年12月21日)
http://www.daily-cargo.com/new/news/143538/release_dt
『航空不況、減収分を「貨物」で稼ぐ=航空会社』
(カーゴニュース、2020年11月19日)
http://cargo-news.co.jp/cargo-news-main/2606
『日本発航空運賃、アジア向けが高騰。例年の2倍。長契、上昇避けられず』
(日本海事新聞、2021年3月26日)
https://www.jmd.co.jp/article.php?no=266080