近年、EC市場の拡大などにより世界の荷動き量は右肩上がりとなっていますが、貿易業界にはDXが進んでいない分野も多く残されており、紙や電話、FAXなどアナログな業務管理が残っています。貿易業界に関わる方の中には、紙や電話ベースのやりとりが残る貿易業務を非効率に感じている方も多いのではないでしょうか?
今回の記事では、貿易業務のDXの内容と、DXにより何が改善できるかについて解説します。
DXとは、デジタルトランスフォーメーションの略で、デジタル革新の事を指します。貿易DXでは、デジタル技術を活用して、貿易業務プロセスの抜本的変革をすることという意味が含まれます。
国際貿易はDXが遅れていると言われる業界の一つです。
船荷証券、信用状、パッキングリスト、原産地証明書などの書類のやり取りが紙で行なわれていたり、納期調整や船のスケジュール確認などの際のコミュニケーション手法が統一されていなかったり、DXを進める上で様々な課題が蔓延っています。
ここでは、なぜ貿易業界でDXが進んでいないのかの原因を解説します。
貿易業界でDXが進まない理由として、貿易業界では、荷主と取引相手だけでなく、倉庫担当者や運送業者、通関業者、税関など、不特定多数の人が関わるため、安全な情報共有が難しいという点があります。また、業界慣習としてデータではなく実物に信頼を置く伝統的な慣習が多いこともDXが進みにくい理由の一つです。
DXが進みにくい理由
貿易業務の課題として非効率なコミュニケーションが挙げられます。貿易担当者が様々な関係者とのハブとなってコミュニケーションをとるため、情報共有に時間と手間がかかります。コミュニケーション手法もメールや電話、FAX、エクセルなど、多岐にわたることも非効率の原因となっています。コミュニケーションに時間と手間がかかると、情報のスムーズなやり取り、臨機応変な対応が難しくなることにつながります。
また、貿易業務が属人化しやすく、貿易担当者に大きな負担がかかることや、輸送の進捗状況を貿易担当者に確認する必要があること、貿易業務の引継ぎが難しいといった課題もあります。
国や地域により、必要な書類やルール、法規制も異なるため、書類管理に時間がかかることも課題となっています。
貿易業務の課題
貿易DXでは、デジタル技術を活用して、貿易業務プロセスの抜本的改革を目指します。安全な情報共有が課題となっていましたが、近年、ブロックチェーン技術を用いた貿易プラットフォームでのデータの一元管理が行われ始めており、安全性が向上する兆しが見えてきています。また、貿易DXによる効果として、貿易業務の効率化やコストの削減などが挙げられます。
国際貿易では、サプライチェーンが長くなり、多くの関係者とのやり取りが発生します。そのため、案件の見積やスケジュール、書類など様々な情報を整理して管理・共有する事が難しいという課題がありましたが、クラウド上にデータを集約して、関係者がアクセスできるようにすることで、貿易業務にかかる工数削減が期待できます。
これまでの貿易実務では、貿易担当者が関係者のハブとなって連絡をとっていたため、貿易担当者の大きな負担となっていました。そこで、貿易業務をDXすることによって、クラウド上で関係者をつなぎ、情報を一元的に共有することができます。
また、情報を一元的に共有することで、やりとりの回数を削減できるため、報告漏れや伝達ミスを等の人的ミスを削減することができます。
貿易をする際に重視される輸送コストですが、どの業者に依頼すればよいのか、適正価格がわからないといった悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか。(freigthosなどの)運賃比較サイトでは、出発地、目的地、輸送方法などを選択して検索すると、最新の運賃を比較することができるため、輸送業者選定にかかる時間や手間を削減することができます。
貿易DXにより、輸送手段の最適な組み合わせを選ぶこともできます。貿易DXのプラットフォームなどを使用することで、簡単に最適な輸送方法を選ぶことができ、コスト削減が期待できます。
貿易DXで実現できること
ここでは日本国外にも目を向けながら、貿易DXを推進するサービスを提供している最先端の企業を3社紹介します。
Freightosは、香港に本社を構え、荷主と物流業者をマッチングする、マーケットプレイス事業を展開しています。リアルタイムの運賃情報比較や運賃管理サービスを提供しており、 1200の貨物運送業のプロバイダと提携し、オンラインで運送の予約、管理、トラッキングなどのサービスを利用できます。
フレックスポートは、米国のデジタルフォワーダーで、受発注管理から国内配送、金融サービスまで、幅広いサービスを提供しています。荷主はフレックスポートのプラットフォームを使用することで物流費用をその場で見積、貨物輸送手段の最適な組み合わせを選択できます。また、このプラットフォームで貨物の状況や位置をリアルタイムで確認できるという特徴もあります。
また、フレックスポートは、貨物輸送だけでなく、金融サービスを提供しているという特徴があります。貿易の際には商品代金の支払いに時間差があるため、直ぐに入金が必要な場合には、金融機関からのトレード・ファイナンス(貿易金融)を受けることが一般的でしたが、輸送した商品の詳細情報これまでの貿易実績のデータを持つフォワーダーが直接金融サービスを提供する事で、審査期間を短くし、荷主にとっての利便性を向上することが期待できます。
日本初のデジタルフォワーダーのShippio(シッピオ)は、案件スケジュールや貿易書類、請求書などの情報を一元管理して、関係者と情報共有ができるクラウドサービスを提供しています。紙ベースでの手続きが根強い貿易業界ですが、クラウド上で書類や輸送情報の管理・共有を行うことで貿易業務の効率化が可能となります。情報の一元管理により、サプライヤー、貿易業務、生産管理などの様々な担当者が常に最新情報を入手でき、コミュニケーションコストを削減することができます。
また、クラウド上で本船動静が自動更新されるため、人力による確認・転記作業の必要がなくなり、常に正確な情報を共有することが可能になります。
DXする目的として業務工数削減、効率化などがありますが、ここでは貿易のDXを成功させるためのいくつかのポイントを紹介します。
1つ目のポイントは、事前に目標を明確にする事です。DXの失敗例として目標を明確にしていなかったことにより、成功を証明できず、DXプロジェクトが自然消滅してしまうケースがあります。事前に目標を明確にすることで、何をどう改善したか把握でき、継続的な業務改善につなげることができます。
2つ目は、サービス導入と業務プロセスの改善を組み合わせることです。サービス導入を機に業務プロセスの見直しまで踏み込むことで、より大きな効果が期待できます。
3つ目は、定量的に結果を分析することです。サービス導入前と比べてどうなったか、目標達成できるかを具体的に振り返り、進捗を確認することが大切になります。
これらのポイントを押さえて貿易業務をDXすることで、サービス導入による効果を大きくでき、成功へとつなげることができます。
ここまで貿易DXの内容や効果について解説してきましたが、貿易DXの効果としては、貿易業務を一元管理することで貿易業務量を削減、コミュニケーションの効率化、輸送運賃の比較や見積を簡単に出すことができるなどがあり、紙ベースでのやり取りが残る貿易業務を効率化することが可能です。近年、企業の貿易DXをサポートするSaaSは様々登場していますが、貿易DXを成功させるためには目標を明確にし、導入前後で定量的に分析を行うことや、業務プロセスの見直しと組み合わせるなどの対策を行う事が大切になります。貿易業務でお困りの方や、業務改善をお考えの方は、貿易DXサービスの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
Shippioは、日本初のデジタルフォワーダーとして、従来のフォワーディング業務に加え、貿易業務を効率化するクラウドサービスを提供しており、デジタル化やDXの支援を強みとしております。クラウドサービスにより、見積から本船動静確認、貿易書類の管理、関係先とのコミュニケーションまで一括管理を実現し、貿易業務改善に貢献しています。ご興味がありましたら、お気軽にお問い合わせください。