業務の属人化を解消し、情報のハブを構築するまでに。創業100年超の老舗が実現した貿易DX改革
輪ゴム「オーバンド」をはじめ、ゴム製品および合成樹脂製品の製造ならびに販売を手がける老舗企業の共和。貿易実務における長年の課題は業務の属人化とブラックボックス化でした。
「このままでは持続可能ではない」という強い危機感からShippioを導入し、いかにして現場主導でDXを推進したのか。その舞台裏とDX推進の秘訣を伺いました。
Profile
海外グループ 海外営業チーム 髙橋 昂輝様
西日本営業支援室 産業材マーケティングチーム 本田あゆみ様
「このままでは事業も働き方も持続可能ではない」という強烈な危機感
―導入の背景と課題について教えてください
本田氏:私が貿易実務に携わる中で、「業務の属人化」は長年の課題でした。 特に輸入業務に関しては、海外グループ8名中6名がそれぞれ案件を担当していましたが、実質的には担当者1人が業務を抱え込む”個人商店”のような状態でした。隣のメンバーが何の案件を進めているかすら、リアルタイムでは把握できていなかったのです。
やり取りはほぼメールベースのため情報は個人の受信ボックスに溜まり、共有フォルダに入れてもプロセスが見えない「ブラックボックス化」が起きていました。 特にコロナ禍では、担当者が急に休むと貨物のステータスが誰にも分からないという事態が発生し、「これは事業継続のリスクだ」と痛感しました。
当時、私は製造拠点の移管プロジェクトを担い、品質交渉やデザイン関連の業務も兼務しており、多忙を極めるとどうしても重要書類の整理などが後回しになっていました。「何ヶ月も溜めてしまった」「保管漏れがあるかもしれない」という焦りと不安が常にありました。
加えて、通関業者からの電話やメールも頻繁にあり、チーム内で同じような連絡を重複して受けることも日常茶飯事でした。正直なところ、「業務に追いつめられている。この働き方は持続可能ではない」という強い危機感を持っていたんです。
決め手は「情報のハブ化」。書類の保管漏れリスクからの解放
―Shippio Cargo導入の決め手は何だったのでしょうか。
本田氏:数あるツールの中からShippio Cargoを選んだ決め手は、「情報のハブ」となる機能性です。 これまでは、人がハブになっていたことで属人化・ブラックボックス化が起きていましたが、Shippioというクラウドがハブになれば、社内外のすべての関係者がいつでも最新情報にアクセスできる。そのコンセプトは、私たちの課題解決にぴったりでした。
特に魅力的だったのは、クラウド上でチャットや書類のやり取りが案件ごとに完結する点です。 遅延があれば通知が来ますし、何より書類が必ずShippio上に蓄積されるため、書類のブラックボックス化も保管漏れのリスクがなくなることに大きなメリットを感じました。Shippioを通じてやり取りすれば、自分の保管漏れもないですし、書類や情報が漏れることもない、という安心感が得られ、長年の不安から解放されたことが一番ありがたい点ですね。
成功の鍵は「ミドルアップダウン型」。現場の熱意が経営層と関係者を動かす
―導入のプロセスと社内の巻き込み方について教えてください。
本田氏:まずはデジタルフォワーディングの「Shippio Forwarding」をスモールスタートで試しました。 いきなり全てを変えるのではなく、既存フォワーダーさんとのしがらみが少ないLCL(混載貨物)貨物から始め、チームメンバーに協力してもらいながら実績を作りました。実際に使ってみると、進捗や書類が一元管理される「見える化」のメリットは皆すぐに実感でき、この初期の成功体験が本格導入への後押しになりました。
経営方針に「DX化」が掲げられていたこともあり、経営層に対しても地道に対話し続けました。 単に「大変だ」と言うだけでなく、例えば当時の「船便の遅延率が30%にも上る」という具体的なデータを示しました。さらに煩雑な業務をDXすることで経営に与えるインパクトを客観的に説明し、理解を得ることができました。トライアル導入として特別予算枠で申請し、システムを慎重に精査したことも、本格導入に有効だったと思います。
髙橋氏:現場への浸透については、私自身が前担当者から引き継いだ際に正直メールでのやり取りが非常に面倒だ、と感じていたので、少しでも楽をしたい!その一心でガンガン進めていこう、と思っていました。その上で、「まずは自分からやらないと誰もやらない」ので、自分の担当案件をすべてShippioに移行しました。
さらにDXに抵抗がないメンバーを味方につけ、徐々に慎重派の人たちを説得していく形を取りました。社内説明会や海外子会社へのWeb会議などで地道にメリットを伝え続け、今では生産管理や品質管理といった関連部署でも活用されるまでになっています。
電話とメールが激減。担当者不在でも「自走する」体制へ進化
―導入後の効果はいかがでしたか。
本田氏:想定以上に、通関業者さんとの電話やメールが大幅に減少しました。 毎日かかってきていた確認電話がShippio内のチャットで完結するようになって、これは本当に大きな変化でした。
また、担当者の退職や異動の際の引き継ぎも格段にスムーズになりました。私自身もマーケティングチームへ異動しましたが、Shippioを見れば過去のやり取りや書類が全て残っているので、後任者へのフォローも非常に楽にできました。一番の変化は、担当者不在時の安心感ですね。 以前は海外出張に行くと案件が滞りそれが不安な状態でしたが、今はShippio上で「この案件、お願いします」と海外メンバーに依頼するだけで業務が進みます。書類は自動でアップロードされ履歴も残るので、帰国後に状況を即座に把握できて安心です。
髙橋氏:まさに「業務が自走する仕組み」ができた。これが導入して最も良かった点です。
私が外出・出張していても、サプライヤーさんと通関業者さんが直接やり取りして業務が進んでいく。かつてのように担当者が何度もボールを持つ必要がなくなったのです。
「なんとかしないと」現場の想いがDXを推進し未来を創る
―今後の活用とShippioへの期待についてお聞かせください。
髙橋氏: 現在は一部のサプライヤーさんに参加していただいていますが、今後は全取引先をShippioに巻き込んでいくのが目標です。また、品質保証部門での活用をさらに深め、出荷判定までの全プロセスをShippioで完結させたいですね。 Shippioさんが私たちの意見を毎月聞いてくれて、日々システムを改善してくれる手厚いサポートも成功の大きな要因でした。これからもパートナーとして期待しています。
本田氏: 私たちのDXは、私の「このままでは業務が回らない」という危機感と担当者の「これは面倒だ。なんとかしたい」という素直な気持ちから始まりました。 この現場の「面倒」を解消したいという強い思いこそが、DXを成功させる何よりの原動力だと思います。
Shippioでは国際物流の可視化を実現し、情報共有機能や、貿易書類・請求書管理、納期調整を一元管理できるクラウドサービスを提供し、貿易業務の可視化・効率化をサポートしております。
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