本記事は、2024年12月11日に開催されたセミナーのレポートです。株式会社明治フードマテリア業務部の石渡氏が、貿易業務のデジタル化による物流効率化のプロセスや、その背景についてお話しされました。
Profile
石渡 大輔
株式会社明治フードマテリア 業務部 業務グループ
貿易(実務)に26年従事。
1998年、南米市場の営業兼輸出実務の担当者としてキャリアをスタート。
一度転職を経て2006年、明治製菓(株)にて果実缶詰等の輸入や販売に携わる。
その後(株)明治を経て現職。貿易実務を担当し部内外の支援を行いながら、国内の物流戦略の実行役も務めている。
無類の面倒くさがり屋であり、モットーは「three Ps + S /L」。
―ビジネスモデルと業務について教えてください
当社は「安全・安心をお届けする糖類・機能性素材のプロ」をミッションに掲げ、4つの主要事業を展開しています。基幹事業である砂糖事業では、国内外から砂糖を調達し、安定供給を実現しています。糖化穀粉事業では、ビタミンCやアスコルビン酸、水飴、ブトウ糖を取り扱い、食材事業では果実缶詰を中心にお客様への提案を行っています。また、機能性素材部門では、明治のチョコレートに使用されるプラクトオリゴ糖やポリフェノール、腸内フローラに関連する素材を提供しています。
全国に6つの支店を展開し、これらの事業を通じてお客様に最適なソリューションを提供しています。当社の取引の約3割は輸入が占め、年間で約2,900本(20L換算)の貨物を取り扱っています。残りの1割は輸出と三国間貿易が占め、多様な取引形態を通じて幅広いニーズに応えています。
こうした事業活動を通じて、お客様にとって最適なサービスを提供できるよう努めています。
「習慣」を覆す、現場が抱える課題とその転機
―導入時の背景と課題について教えてください
Shippioとの出会いは2020年、国際物流総合展でのことでした。社長、部長、私の3人で何気なくShippioのブースを訪れたのが始まりです。その後、部長から輸入通関を含む貿易実務の効率化について相談を受けましたが、26年間の実務経験から「効率化なんて無理だ」と思い込んでいました。長年の慣習に縛られた業務が当たり前となり、効率化への意識が持てなかったのです。そのため、当初Shippioが課題解決に繋がるとは考えられず、非常に懐疑的でした。
しかし、日々の業務における課題は明確に存在していました。「高齢化」「人手不足」という大きな問題が、現状の働き方を見直す必要性を浮き彫りにしました。特に「高齢化」による知識やノウハウの継承が深刻な課題でした。輸入通関や貿易業務を担当するチームの中で最年少だった私自身、この状況に強い危機感を覚えていました。
また、「業務負荷」の増大も見過ごせない問題でした。案件の増加に伴い、日々の作業は膨大なものとなり、特に本船の動静確認やコンテナドレーの確保には朝から晩まで時間を費やしていました。ネット検索や電話対応に追われても成果が出ないことが多く、業務が慢性的に逼迫していたのです。さらに、社内外の関係者との連絡業務を一手に担う状況が続き、現場は常に多忙を極め、業務改善に取り組む時間すら確保できない状態でした。
こうした厳しい状況の中で、「これまでのやり方を変えなければならない」という意識が徐々に芽生え始めましたが、目の前の業務に追われる日々の中で、抜本的な改善に着手する余裕がありませんでした。
―「Shippio」導入検討のきっかけについて教えてください
決定的な転機となったのは、新型コロナウイルスの「パンデミック」でした。この影響で当社も在宅勤務が導入され、それまで当たり前だった同僚との直接的な会話や上司への相談が難しくなり、仕事の進め方や業務プロセスを見直す必要性が高まりました。
在宅勤務をきっかけに、まずペーパーレス化が進行しました。従来行われていたハンコリレーによる承認プロセスは廃止され、FAXでのA/N(アライバルノーティス)の受け渡しもメールに移行するなど、効率化への取り組みが始まりました。
ちょうどこのタイミングで、チーム内の重要なメンバーが異動となり、補充が行われなかったことで深刻な人手不足に陥りました。これにより、現場では効率化を一層急務な課題として認識しました。
こうした背景の中、業務効率化への期待を込めてShippioのデジタルフォワーディングを導入することを決定しました。
業務負担を削減し、コア業務に集中
―導入後の効果はいかがですか?
デジタルフォワーディングを導入したことで、社内外の調整や関連業務にかかる負担が大幅に軽減されました。これにより、これまで手が回らなかった分析や企画、業務改善などのコア業務に取り組む時間が確保され、「業務の見える化」と「業務の効率化」という2つの大きな成果を実感しています。
導入前は、メール作成や過去のメールを探す作業が膨大な時間を占めており、見積もり、受発注、シップメント管理、請求処理など、各プロセスでメール対応が発生していました。しかし、これらがクラウド上のチャットに置き換わることで、作業が大幅に簡素化されました。営業担当者や現地担当者、倉庫担当者などがリアルタイムで同じ情報を共有できるようになり、不必要な連絡や確認が削減されました。例えば、ETA(到着予定時刻)の確認や納期調整がチャットでスムーズに行えるようになり、業務全体の流れが各段に効率化されました。
スケジュール管理も大きく改善されました。これまでは手動でExcelに情報をまとめて共有していましたが、クラウドサービスのエクスポート機能を活用することで、Excelでの個別管理が不要になりました。また、複数の通関業者とのやり取りが必要だった請求処理も、Shippioに集約したことで1社分の処理で済むようになり、月末の負担が大幅に軽減されました。
特に大きな変化として挙げられるのは、コンテナドレーの確保がスムーズになったことです。Shippioが本船動静を管理してくれることで、通関業者が先回りして予約を取れるようになり、以前のような確保が難しい状況はなくなりました。
こうした改善の結果、月間で私自身は16時間、同僚は33時間の業務時間が削減され、処理できる船積み案件の件数も増加しました。
―社内外の関係者との連絡業務はどう変わりましたか?
以前は、貿易実務者が全ての連絡を一手に担い、各地から集まる情報を必要な相手に展開する役割を担っていました。メール、電話、FAX、PDF、Excelなど多様な媒体で情報が届き、それを整理・展開する負担が集中し、業務が増大していました。
デジタルフォワーディングを導入したことで、この連絡業務がShippioに集約されました。これにより、情報の流れがシンプルになり、負担が大幅に軽減されました。図にすると矢印が大幅に減っているのが一目で分かります。また、ゲストアカウントを利用して現地法人や倉庫会社もShippioに参加してもらうことで、すべてのコミュニケーションがクラウド上で完結するようになりました。
この変化により、必要な情報を必要な時に各自が直接確認できるようになり、納期調整などの個別対応が不要になりました。Shippioで一元管理を実現したことで、業務の効率化と負担の軽減が大きく進みました。
―今後のShippioへの期待を教えてください
2021年10月にデジタルフォワーディングを導入し、社外の関係者も巻き込みながら段階的に運用を拡大してきました。2024年5月には全貨物を対象とした「Any Cargo」の利用も開始し、効率化を進めています。両サービスを単なるアウトソーシングとは考えず、ユーザー自身がコントロールタワーとして業務全体を指揮することが重要だと捉えています。
現在、両サービスを活用しながら業務効率化を進めていますが、まだ課題は残されています。その一例が、ExcelとShippioの二重管理です。Excelは柔軟なカスタマイズが可能な一方で、Shippioのエクスポート機能は基本項目に限定され、自社特有の項目を反映するには限界があります。将来的には、Excelを使わずにShippioのエクスポート機能だけで業務を完結できるようになることを期待しています。
また、当社の基幹システムとのAPI連携にも期待しています。この連携が実現すれば、業務がさらに「見える化」され、効率的になると考えています。しかし、現段階では技術的なハードルが高く、まだ実現に至っていません。今後、これらの課題が解消され、Shippioのサービスがさらに進化することで、業務の効率化がさらに推進されることを大いに期待しています。
Shippioでは国際物流の可視化を実現し、情報共有機能や、貿易書類・請求書管理、納期調整を一元管理できるクラウドサービスを提供し、貿易業務の可視化・効率化をサポートしております。
貿易業務で人手が不足している、現状のやり方ではDXが進まないなどのお悩みがございましたら、お気軽にお問い合わせください。