―ビジネスモデルと主な業務について教えてください
私たちYKK APは、住宅やビル、エクステリア、産業製品など、窓を始めとする多様な建築材料の製造・販売をグローバルに展開しています。
特に、中期経営計画では海外売上高の大幅な成長を目標に掲げており、海外事業の強化が重要な取り組みです。この事業の核となるのが、海外からの原材料調達や製品輸送を担う国際物流であり、その効率化が事業全体の成長を支えています。
「当たり前」を疑うことから見えてきた、現場の非効率
―導入の経緯と課題
当社のDX推進は、経営の主要課題です。しかし、国際物流の現場に潜む具体的な課題は、Shippioのような外部のサービスを知り、改めて調査するまで明確には見えていませんでした。現場では伝票も管理もバラバラで、出発地である海外工場に尋ねても「みんなバラバラなんです」と返ってくる状況。これは何らかの手を打つ必要があると感じたのが、改革の始まりです。
実際に現場でその非効率性を肌で感じていた担当者は、最低限の引き継ぎで海外からの輸入業務を担当し、その複雑さに直面していました。
当時は、発注や納期回答の書式が6通りもあり、納入予定も1つのインボイスに1シートという状況で、全体像が見えませんでした。季節要因で遅延が発生したり、緊急の発注が入ったりする度に、膨大な書類から該当コンテナを探し出し、船会社のサイトで一つひとつ状況を確認するという、手間のかかる作業に追われていました。
物量が増えても簡単に増員できない中で、常に効率化が求められる状況でした。また、海外拠点では多くの人が一日中メールのやり取りをしており、「いつ入りますか?」「分かりません、確認中です」といった会話が常態化。まるでモグラ叩きのように、場当たり的な対応に終始していたのです。こうした状況の根底には、社内向けの輸送を担う部署は顧客との距離が遠いため、顧客接点のある部署と比較して、仕組み化の優先順位が低くなっていたという、長年の慣習がありました。
常務執行役員 CLO(兼)ロジスティクス部長 岩﨑 稔様
自社にないノウハウと、データ活用の「ビジョン」への共感
―導入の決め手
課題解決に向けて様々なツールを検討する中で、最終的にShippioを選んだ決め手は、機能面とサポートの両面にありました。
最大の理由は、自社にはない国際物流のノウハウが、業務プロセスとしてサービスにしっかりと組み込まれている点でした。特に、船のスケジュールが正確に把握できることは大きな魅力でした。
一方で、当初は「業務がそこまで逼迫していなかったので、正直なところ、あまり期待はしていませんでした」という声も現場にはありました。しかし、その考えはすぐに変わります。
デモを通じて、これまで手作業で確認していた情報が「黙っていても更新される」ことや、書類の保存や依頼、結果がすべて「見える化」されることを知りました。これまで感覚で判断していた遅延状況がデータとして残ることで、今後の発注量や在庫計画に活かせる、という可能性に気づきました。
他社ツールが輸送状況のトラッキングなど単一機能に特化していたのに対し、Shippioは業務プロセス全体をカバーする網羅性と、デジタルネイティブ世代にも馴染みやすい直感的なデザイン、そして丁寧なサポート体制が際立っていました。
東北製造所 樹脂素材製造部 生産管理室 今野 絵里 様
「一日がかりの作業」からの解放と、ストレスフリーな働きがい
―導入後の効果は?
Shippio導入の成果は、単なる業務効率化に留まりませんでした。
導入の過程で、データ整理と登録を楽にするために「発注書式を統一すれば良いのでは?」という気づきが生まれました。これが大きな変化のきっかけです。長年「誰が決めたのかも分からない」まま運用されていた6種類の発注書式を統一するという提案は、勇気がいりましたが、海外工場からも「その方が楽だ」と協力的に受け入れてもらえました。
この「当たり前」の見直しが、劇的な効果を生み出します。
書式の統一によって、簡単にデータ登録ができるだけでなく、これまで1日かかっていた発注依頼の集約作業も、大幅に楽になりました。納期回答も非常に早くなり、その後のデータ整理の工数も激減しました。
情報の可視化も大きな効果でした。担当者だけでなく、他のメンバーもクラウド上でいつでも状況を確認できるようになったことで、問い合わせが減り、業務の属人化からも脱却が進みました。
一番の導入効果は、ストレスがたまらないことかもしれません。「仕事が楽しくなった」という現場の声が、すべてを物語っています。さらに、海外工場とのコミュニケーションも円滑になり、仕事の踏み込んだ会話だけでなく、雑談もできるほど距離が縮まりました。
ロジスティクス部 業務管理課 輸出入業務室長 北田 和也 様
DXの成功体験を、グローバルな物流基盤へ
―今後の活用について
私たちは、2030年までに海外売上高を倍増させるという高い目標を掲げています。
目標達成には、物流量の大幅な増加が伴います。今回、国内で得られたDXの成功体験を、今後はインドネシアや台湾など、物流担当者が不足しがちな他の海外拠点へも展開していきたい。Shippioをもっと応用的に使っていけるのでは、と大きな期待を寄せています。
YKK APの根底には、「自分たちが何でも作る」という「川上遡上主義(※)」の思想があります。今回のShippioとの連携は、その思想に基づき、外部の優れたパートナーと共に「当たり前」を疑い、現場を巻き込みながら、業界全体のDXを推進していくという、私たちの新しい挑戦の始まりです。
(※)原材料の調達・製造という事業の「川上」から、販売・サービスという「川下」まで、自社で一貫して手掛ける思想のことです。自社で努力できる範囲を広げることで、品質を高めながらコストダウンに繋げられること。
Shippioでは国際物流の可視化を実現し、情報共有機能や、貿易書類・請求書管理、納期調整を一元管理できるクラウドサービスを提供し、貿易業務の可視化・効率化をサポートしております。
貿易業務で人手が不足している、現状のやり方ではDXが進まないなどのお悩みがございましたら、お気軽にお問い合わせください。