近年、世界的に「環境負荷の低減」や「カーボンニュートラル」が大きなテーマとなっています。その流れは国際貿易や物流の現場にも及び、各企業やサプライチェーン全体が積極的に環境対策を実行する時代へと移行しつつあります。そこで登場したのが「グリーンロジスティクス」という考え方です。従来は「コスト削減」「スピード化」が優先されがちだった物流分野において、環境面での責任が厳しく問われ、DX(デジタルトランスフォーメーション)やトレーサビリティを活用した新しい仕組みづくりが進んでいます。
本記事では、「グリーンロジスティクス」の重要性や歴史的背景、どのように企業やサプライチェーンに影響を及ぼすのかを徹底解説します。環境配慮と競争力向上を両立する具体的事例や、今後の課題・展望、さらにはサプライチェーンを支援するソリューションとしてのShippioのサービス紹介も盛り込んでいますので、ぜひ最後までお読みください。
目次
- グリーンロジスティクスの概念:なぜいま注目されるのか
- 環境配慮が必須となった理由:歴史的背景と重要性
- 取り組み事例・実務フロー:具体的に何をどう変える?
- 課題と業界動向:法規制、DX、サプライチェーン
- まとめ:グリーンロジスティクスが拓く未来
- 今後の展望:環境配慮が当たり前になる時代へ
- “持続可能な物流”を始める1stステップ
1. グリーンロジスティクスの概念:なぜいま注目されるのか
1-1. グリーンロジスティクスとは何か
「グリーンロジスティクス」とは、物流における環境負荷(CO₂排出量、廃棄物、騒音など)を最小化しつつ、効率的で持続可能なサプライチェーンを構築しようとする考え方です。単なるエコへの取り組みだけでなく、最終的にはコスト削減や企業価値向上にもつながるとされています。具体的には以下のような要素を含みます。
- CO₂排出量削減: 輸送モードの見直し、効率的なルート選定
- 資源・エネルギー使用の最適化: 倉庫や車両の省エネ、梱包材の削減
- 廃棄物管理: リサイクル可能な包装材やリユースパレット導入
- DXを用いたリアルタイム管理: トレーサビリティや在庫管理を通じた無駄な輸送の排除
1-2. ぶつかり合う目標:コスト優先か、環境優先か
従来の物流では、できるだけ安く早く届けることが最優先でした。しかし、環境問題への意識が高まるなか、「コスト削減」と「環境配慮」を両立させるのは難しい面もあります。そこで登場するのがDX(デジタルトランスフォーメーション)やトレーサビリティなどの技術です。クラウドやIoTセンサーを活用すれば、過剰在庫や無駄な輸送が可視化でき、結果としてエコとコスト削減が同時に進む可能性があります。
1-3. グリーンロジスティクスとSDGs・ESG投資の関連
近年、SDGs(持続可能な開発目標)やESG投資(環境・社会・ガバナンスを重視する投資)が世界的に注目されています。企業が環境負荷を軽減し、社会的責任を果たす姿勢を示すことは、投資家や顧客からの評価を高めるだけでなく、長期的な企業価値向上にも寄与します。グリーンロジスティクスは、物流領域における具体的なESG対応の一環とも位置づけられます。
2. 環境配慮が必須となった理由:歴史的背景と重要性
2-1. 地球温暖化と国際的な環境規制の高まり
産業革命以降、CO₂排出量が急増し、地球温暖化による気候変動が深刻化しています。国連のパリ協定や各国政府のカーボンニュートラル宣言などを受け、物流業界も排出ガス低減に取り組まなければならない状況です。自動車排ガス規制や海運の燃料規制強化(低硫黄燃料への移行)など、法規制が次々と導入されています。
2-2. 消費者意識の変化と企業ブランディング
消費者も環境に配慮した商品や企業を支持する傾向が強まっています。物流の過程で排出される温室効果ガスや、過剰包装による廃棄物などが批判の対象になることも。企業はグリーンロジスティクスを推進することで「環境に優しい企業」というイメージを獲得し、ブランド力を高められます。
2-3. コスト最適化との両立が鍵
「環境対応はコストがかかる」という見方が以前は主流でしたが、最新のDX技術を組み合わせると、サプライチェーンの無駄が削減され、結果としてトータルコストが下がるケースがあります。たとえば輸送ルートを最適化して走行距離を短縮すれば、燃料費だけでなくCO₂排出量も削減できます。これがグリーンロジスティクスの大きな魅力です。
2-4. 法律や規制の強化
- EUの環境規制: ヨーロッパではCO₂排出量に応じた課税が検討され、物流企業にも影響
- 日本のグリーン成長戦略: 脱炭素社会へ向けた産業変革を推進
- 米国の規制: カリフォルニア州をはじめ、トラックの排ガス基準を厳格化
これらの動きは、企業が環境対応をしないと海外取引で不利になる、あるいは国内でも規制違反となるリスクを伴っています。
3. 取り組み事例・実務フロー:何をどう変える?
3-1. 輸送モードの見直し:モーダルシフト
モーダルシフトとは、トラック輸送から鉄道や船舶へと輸送モードを切り替え、CO₂排出を抑制する取り組みです。鉄道や海運はトン・キロ当たりの排出量がトラックに比べ低く、長距離輸送ではコストも削減できる可能性があります。
- 事例: 大手飲料メーカーが関東~関西間の輸送をトラックから鉄道コンテナに切り替え、年数千トンのCO₂削減に成功
- メリット: コストダウン、渋滞回避、ドライバー不足対策
- デメリット: 運行頻度が少ない、リードタイムの調整が必要
3-2. 倉庫の省エネと在庫管理
倉庫は、冷暖房や照明、フォークリフトなどの電力消費が大きく、省エネ対策を進めることでCO₂排出削減につながります。また、DXを活用して在庫量を最適化すれば、過剰在庫の保管にかかるエネルギーも削減可能です。
- 具体策:
- 照明をLED化し、センサー制御で必要なエリアだけ点灯
- 冷凍・冷蔵倉庫では壁面断熱を強化し、温度ロスを抑制
- WMS(倉庫管理システム)と連動し、在庫のロケーションを最適化
3-3. パレットや梱包材のリユース・リサイクル
梱包材やパレットの使い捨ては、製造業から物流における大きな廃棄物問題となっています。プラスチックパレットのリユースや、紙製梱包材のリサイクルを推進することで、産業廃棄物を大幅に減らすことができます。また、木製パレットの循環利用なども盛んに行われています。
3-4. DXで進めるトレーサビリティ
クラウドを使い、サプライチェーン全体をリアルタイムで見える化することで、以下のメリットがあります。
- 空車回送の削減: 輸送スケジュールを最適化し、無駄な走行を減らす
- 在庫配置の最適化: 需要予測と連動して、余計な輸送や保管を避けられる
- 温度管理: 食品や医薬品など、必要な場所に必要な量だけ正確に運ぶことでロス減少
事例として、ヨーロッパの大手スーパーがIoTセンサーとクラウドを活用し、生鮮食品の運搬ルートを統合管理した結果、年間で数十%の食品ロスと燃料費をカットしたという報告があります。
4. 今後の課題や業界動向:法規制、DX、サプライチェーン
4-1. カーボンボーダー調整措置
EUを中心に、海外から輸入される製品のCO₂排出量に応じて追加コストを課す“カーボンボーダー調整措置”が導入されつつあります。これは実質的に製品のライフサイクル全体(製造~物流)での排出を監視する動きであり、グリーンロジスティクスの取り組みが不十分な企業は国際市場で不利になる恐れがあります。
4-2. サプライチェーン全体での協力が不可欠
企業単体での取り組みだけでは不十分で、サプライヤーやフォワーダー、荷主、倉庫事業者などが協力し、共通のプラットフォームでデータを共有する必要があります。これがデジタル化の最大の強みであり、クラウドやAPI連携で異なる企業システムを接続する動きが活発化しています。
4-3. トラックドライバー不足とモーダルシフトの拡大
日本では、ドライバー不足や働き方改革による労働時間制限が進行しており、これらが物流業界に大きな影響を与えています。モーダルシフトや共同配送、夜間配送の削減などを通じて環境配慮と人材確保を両立する動きが、今後ますます求められます。
4-4. リスク管理とBCP強化
災害大国である日本や、世界各地の気候変動リスクを考えると、BCP(事業継続計画)と環境対策は表裏一体です。たとえば、低炭素型の輸送ルートや複数拠点の在庫管理を確保すれば、災害時にもリスクを分散できるという相乗効果があります。
5. まとめ:グリーンロジスティクスが拓く未来
グリーンロジスティクスは、環境に配慮しつつサプライチェーンを効率化するアプローチであり、企業や社会に以下のようなメリットをもたらします。
- 環境負荷の削減: CO₂排出量や廃棄物を大幅に減らし、持続可能な運営が可能
- コストダウン: 輸送モード最適化、DXによる在庫削減などで長期的にコストを抑制
- ブランドイメージ向上: ESG投資やSDGsに関連した取り組みとして、社会や投資家からの評価が高まる
- リスク回避: 法規制や災害に対する強靱性が高まり、ビジネス継続性が確保される
単に「環境に良いから」ではなく、企業の競争力や収益性を高める手段として、グリーンロジスティクスが注目されているのです。
6. 今後の展望:環境配慮が当たり前になる時代へ
6-1. DXと連携したさらなる最適化
将来的には、AIが気象データや交通情報をリアルタイムに分析し、最適な輸送ルートや荷物積載を自動提案する時代が来ると予測されています。燃料消費やCO₂排出を最小限に抑えるため、車両の自動運転やドローン配送も実用化が進むでしょう。これらすべてを統合的に管理するDXプラットフォームが、「環境負荷を減らしつつ、コストを下げる」世界を現実にしていきます。
6-2. コーポレートレベルでのCO₂排出トラッキング
大手企業を中心に、Scope1~3までのCO₂排出量を開示し、削減目標を設定する動きが加速しています。物流領域の排出は多くの場合Scope3(サプライチェーン全体)に当たり、そこをどう管理・削減するかが今後の鍵となります。トレーサビリティやIoTデバイスで貨物移動を追跡し、どのフェーズでどれだけ排出があるかを明確に示す取り組みが必要です。
6-3. サプライチェーン構造自体の再設計
グリーンロジスティクスの本質は、トラックや船舶の燃費改善だけでなく、サプライチェーン全体の構造を見直すことにあります。例えば、生産拠点を消費地近郊に移す「地産地消」的な試みや、二酸化炭素排出の少ない国に生産を移管するといった根本的な戦略変更が起こる可能性があります。これにより、国際輸送量を減らし、環境へのインパクトを抑える企業が増えるでしょう。
7. “持続可能な物流”を始める1stステップ
グリーンロジスティクスを現実のものとし、物流と環境保護を両立するためには、サプライチェーンの各段階をデータ連携し、実際の輸送状況や在庫、CO₂排出量を可視化する仕組みが不可欠です。株式会社Shippioのクラウドサービスは、企業が輸出入を含む国際物流を一元管理し、DXによる最適化とコスト削減を同時に実現するプラットフォームを提供しています。
- オンライン運賃比較・予約: 海上・航空・陸上輸送の費用を表示し、モーダルシフトの選択肢を検討
- 書類電子化・管理: インボイスやB/Lなどの貿易書類をクラウド上で統合し、エラーや二重作業を減らす
- トレーサビリティと在庫管理: 各貨物の位置を明らかにし、輸送ルートがどうなっているかを可視化
- リアルタイムアラート: 遅延やトラブルが発生した際、担当者に即座に通知し、柔軟にルートを変更
グリーンロジスティクスは、もはや一部の先進企業だけが取り組む“特別な施策”ではなく、サプライチェーン全体の標準となる可能性が高まっています。今のうちから環境配慮型の物流を構築することで、企業価値の向上や投資家・顧客からの信頼獲得にも繋がります。Shippioのサービスなら、物流DXと環境対応を同時に実現し、競争力を強化できるでしょう。
グリーンロジスティクスがこれからのサプライチェーンにおける“当たり前”の基準となり、企業が環境責任を果たしつつビジネスを発展させる道筋を示しています。CO₂排出量の削減や廃棄物抑制、サプライチェーン全体の効率化が求められる今こそ、DXやトレーサビリティを駆使して変革を起こすチャンスです。ぜひShippioのサービス資料をダウンロードし、グリーンロジスティクス時代の“持続可能な物流”を一緒に実現してみてください。