貿易業務や通関業に関わる方であれば、一度は耳にしたことがある「乙仲(おつなか)」という言葉。しかし、「通関業者」や「フォワーダー」との違いについて、正確な意味や使い方を理解できていない方も少なくありません。
この記事では、フォワーディング業務を行うShippioが、「乙仲」の定義やフォワーダーとの違い、さらには具体的な業務事例までを分かりやすく解説します。
乙仲とは
乙仲(おつなか)は、「海運貨物取扱業者」を指す言葉で、港湾地区での貨物手続きや貿易関連業務を専門に行うプロフェッショナルを指します。貿易業務の煩雑さや法規制への対応が求められる中で、乙仲はその専門知識を活かして輸出入手続きやリスク管理を支援する重要な存在です。
乙仲の定義
乙仲の業務範囲は多岐にわたり、以下のような役割を果たします。
- 輸出入手続きの代行
税関への申告やインボイス・パッキングリストなどの貿易書類の作成をサポートします。
- 貨物管理とスムーズな輸送手配
港湾地区での貨物取り扱いの調整や、スケジュール管理を行い、貨物がスムーズに輸送されるよう支援します。
- リスク管理とトラブル対応
法規制や税関手続きに関する問題を解決し、輸出入業務のリスクを最小限に抑えるサポートを提供します。
乙仲は、貿易業務の専門家として、複雑な手続きやリスク管理を一手に引き受け、輸出入業務の効率化を実現します。
乙仲という言葉の由来
乙仲という言葉は、戦前に施行されていた「海運組合方法」という法律に由来します。この法律では、仲介業者を次のように分類していました。
- 乙仲(乙種仲立業)
定期船貨物の取次を行う仲介業者。主に、スケジュールが決まっている船舶の貨物を扱いました。
- 甲仲(甲種仲立業)
不定期船貨物の取次を行う仲介業者。必要に応じて手配される船舶の貨物を扱いました。
この制度は現在では廃止されていますが、当時の名残として「乙仲」という言葉が今でも使用されています。現在の乙仲は「海運貨物取扱業者」という立場で、貿易における不可欠な存在として機能しています。
乙仲とフォワーダー・通関業者の違いとは?
貿易業務でよく耳にする「乙仲」「フォワーダー」「通関業者」は、似ているようでそれぞれ異なる役割を持つ用語です。この章では、それぞれの定義や特徴、そして違いについて詳しく解説します。
フォワーダーとは?
フォワーダーとは「貨物利用運送事業者」のことで、輸出入に関する国際輸送全般を手配する業者です。主に海外との物流を専門に扱い、製品を輸入・輸出する際の全体的なサポートを提供します。
▪フォワーダーの役割
-
- 船舶・航空機・トラックなどの輸送手段を手配
- 輸送スケジュールの管理
- 通関業者や保険会社との連携
- 倉庫や貨物の管理
フォワーダーは、貿易物流全体を管理・調整するスペシャリストであり、貨物の輸送をスムーズに進めるための 総合的なコーディネーター として機能します。
通関業者とは?
通関業者は「通関法」に基づき、税関への申告や税務手続きを代行する専門業者です。輸出入に必要な税務関連の手続きは非常に煩雑であり、通関士という国家資格を持つ専門家がその業務を請け負います。
▪通関業者の主な業務
-
- 税関への輸出入申告
- 必要書類(インボイスやパッキングリスト)の作成と提出
- 関税や消費税の計算および納付
税務の専門知識を持つ通関業者は、貿易を円滑に進めるための重要なパートナーです。
広義に使用されることがある「乙仲」
先にも述べたように、「乙仲」という言葉は戦前の法律「海運組合方法」で定められた用語であり、港湾地区で貨物を取り扱う業者(乙種仲立業)を指していました。しかし、この制度が廃止された現在では、「乙仲」という言葉は曖昧な使われ方をされることが増え、広義にはフォワーダーや通関業者を指す場合もあります。
▪乙仲(現在の解釈)
主に港湾地区での貨物取り扱いや通関手続きを担当する専門業者です。ただし、現在は文脈に応じてフォワーダーやNVOCCを意味する場合もあります。
▪フォワーダー
国際輸送全体をコーディネートし、輸送手配や倉庫管理、通関手続きなど、幅広い業務を包括的に管理する業者です。乙仲と比較すると、より広範な範囲で物流全体をカバーします。
▪NVOCC(Non-Vessel Operating Common Carrier)
自らは船舶を保有せず、貨物輸送を取りまとめる事業者で、輸送契約を代理で締結し、複数の貨物を効率的にまとめて輸送します。
▪通関業者
税関手続きや税務申告に特化した業者。税務関連の専門知識を活かして、輸出入をスムーズに進めます。
乙仲という言葉は、現在では用途や意味が広がり、特定の業務を明確に指し示すものではなくなっています。一方、フォワーダーは国際輸送全体を管理し、通関業者は税関業務を専門的に担当します。それぞれの違いを理解することで、貿易業務を効率的に進めるための適切なサポートを選ぶことが可能になります。
乙仲が現在行っている業務事例
乙仲業者は、港湾地区での貨物取り扱いを中心に、さまざまな物流関連業務を担っています。以下に、乙仲が現在行っている代表的な業務をご紹介します。
1.港湾での荷役業務
乙仲の基本的な業務の一つが、港での貨物の積み卸しや運搬作業です。大型クレーンやフォークリフトを使い、コンテナの搬出や仕分け、切り崩しを行います。これにより、輸出入貨物が効率的かつ正確に輸送されるように準備します。
2.貨物の状態確認と鑑定
船舶での貨物輸送は損傷や事故のリスクが伴うため、貨物が安全に輸送されたか確認することが重要です。乙仲は、以下のような貨物鑑定業務を行います。
- 貨物の損傷確認:輸送中の破損がないかを調査
- 損害の原因調査:問題が発生した場合の原因分析
- 必要な手続きの助言:保険請求や補償に関するサポート
これにより、貨物が安全に輸送されたことを確認し、トラブル時には迅速な対応を可能にします。
3.倉庫業務と梱包作業
港湾で受け取った貨物を、安全かつ適切に保管する倉庫業務も乙仲の役割です。
- 貨物の安全な保管:日用品や冷蔵品、危険物など多様な貨物を適切に保管
- 在庫管理:貨物の入出庫や受発注情報の管理
- 梱包作業:貨物の輸送に適した形で準備
- 法律遵守:倉庫業法に基づいた運営
これらの業務は、物流の安定供給を支えます。
4.フォワーダーとしての業務
乙仲は、フォワーダー業務を兼ねる場合もあります。フォワーダーは、輸出入に必要な物流手配を一括で行う 国際輸送の調整役です。
- 輸送手段の選定と手配(船舶、航空機、トラックなど)
- 輸送スケジュールの調整
- 複数の運送手段を組み合わせた複合輸送(船舶やトラックなどの手段を組み合わせた輸送)
フォワーダーの役割は、シームレスな国際物流を提供することにあります。
5.通関手続き
輸出入には、税関への申請や手続きが不可欠です。乙仲は通関業者と連携し、以下をサポートします。
- 税関申告:正確な申請手続きの代行
- 品目ごとの特別手続き:検査や許認可が必要な貨物への対応
- 通関士による専門対応:法的要件を満たしつつスムーズに手続きを進行
複雑な通関手続きをスムーズに進めることで、輸出入業務の効率化を図ります。
乙仲業者の選び方:依頼前に押さえておきたいポイント
乙仲業者の業務内容がイメージできたら、次は具体的に依頼する際の選び方について考えましょう。適切な乙仲業者を選ぶことで、貿易業務のスムーズな進行とリスクの軽減が期待できます。以下では、選定時に重要なポイントをわかりやすく解説します。
1.依頼したい業務内容を明確にする
「乙仲」という言葉は明確な定義がなく、フォワーダーやNVOCCを指す場合もあります。そのため、依頼したい業務内容を明確に整理することが最優先です。以下の質問を基に、自社の要件を洗い出しましょう。
- 依頼したい作業は何か?
荷役作業、通関手続き、倉庫管理、フォワーディングなど、具体的な業務を特定します。
- 扱う貨物の種類は?
日用品、冷蔵品、危険物など、特殊な取り扱いが必要な貨物が含まれるか。
- 輸出入業務全般を任せたいのか?
フォワーダーとしての広範囲なサポートが必要かどうか。
依頼内容が曖昧だと、選んだ業者が対応できない、または適切でないサービスを受けるリスクが高まります。まずは自社が求める業務範囲を明確にしましょう。
2.コストだけでなく実績やサービス内容も考慮する
乙仲業者を選ぶ際には、単純にコスト面だけで判断するのではなく、実績や提供される付加価値サービス も含めて総合的に評価することが重要です。
- 実績の確認
特に繊細さや専門性が求められる貨物(例:危険物や冷蔵品)を扱う場合、その分野での実績が豊富な業者を選ぶと安心です。過去の取引経験や業界での評判を確認しましょう。
- 付帯サービスの活用
従来の乙仲業務に加えて、付帯サービスを提供している業者も増えています。
- デジタルシステムの提供:輸出入案件の管理を効率化するオンラインプラットフォーム
- 物流のトラッキング機能:貨物のリアルタイム追跡が可能な仕組みを提供
- 柔軟な対応力:物流プロセス全体を最適化する提案が可能かどうか
デジタル化が進む中、最新の技術を取り入れている業者は、業務効率や精度の向上に貢献します。
こうした付帯サービスは、業務の効率化や透明性の向上に役立ちます。単純なコスト比較だけでなく、自社として何を重要視したいかによって乙仲業者を選定するとよいでしょう。
乙仲とは?フォワーダー・通関業者との違いと業務事例を解説
本記事では、「乙仲」の言葉の定義や具体的な業務内容、さらにフォワーダーや通関業者との違いについてご紹介しました。乙仲は港湾地区で貨物の手続きや調整を行う専門家で、貿易業務を支える重要な役割を担っています。
「乙仲」という言葉は、かつての「海運組合方法」という法律に基づく制度に由来しています。この制度は廃止されていますが、その名残として現在も広く使われています。ただし、現代では「乙仲」という言葉の定義が曖昧になり、フォワーダーや通関業者を含む広義の意味で使用されることが少なくありません。会話の文脈や相手によって「乙仲」の解釈が異なるため、具体的に何を指しているのか確認することが重要です。
Shippioは、デジタルフォワーダーとして、フォワーディング業務だけでなく、貿易業務の効率化を支援するクラウドサービスを提供しています。当社の強みは、デジタル化やDXを活用したソリューションで、輸出入業務をスムーズに進めるためのサポートを行っている点です。貿易や物流のデジタル化にご興味がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。