乙仲と通関業者、フォワーダーの違いは?業務事例、業者の選定方法まで詳しく解説

2022.12.21

貿易業務や通関業の関係者は「乙仲(おつなか)」という言葉を一度は聞いたことがあると思います。「通関業者」や「フォワーダー」など類似する言葉も存在するため、正しく意味や使い方を理解できていない、という方も多いのではないでしょうか。
今回の記事ではフォワーディング業務を行うShippioが「乙仲」の言葉の定義から、フォワーダーとの違い、実際の業務事例まで詳しく解説します。

 

 

乙仲とは

乙仲という言葉について、由来や類似ワードとの違いを解説します。

乙仲の言葉の定義

乙仲とは「海運貨物取扱業者」を指します。海運貨物取扱業者は文字通り、海運貨物を取り扱う業者のことで、港湾地区での貨物の手続きや手引きを行う専門のプロフェッショナルです。

貿易業務は書類手続きやリスク管理が煩雑で、法規制なども複雑なため、専門的な知識やルールの把握が必要となります。乙仲は、貿易における様々な業務を引き受ける海運貨物の専門家です。フォワーダーやNVOCC(Non-Vessel Operating Common Carrier)と混同して使用されることも多々あります。

乙仲という言葉の由来

乙仲という言葉が生まれた背景には、戦前に施行されていた「海運組合方法」という法律が密接に関わっています。現在は廃止されている海運組合方法では、仲介業者を「乙仲」「甲仲」の2種類に分類されていました。

乙仲:定期船貨物の取次をする仲介業者を乙種仲立業
甲仲:不定期船貨物の取次ぎをする仲介業者

この言葉の名残で、今現在も海運貨物取扱業者が「乙仲」と呼ばれていると言われています。

乙仲とフォワーダー・通関業者の違い

乙仲と類似している貿易用語として「フォワーダー」「通関業者」があります。
本章では、言葉の定義の違いや役割について詳しく解説します。

フォワーダーとは

フォワーダーとは「貨物利用運送事業者」のことです。フォワーダーは乙仲と同じく貨物の輸送を取り扱います。フォワーダーの特徴は、国際輸送を専門に取り扱う点です。海外で生産したモノを日本で流通させる「輸入」や、日本のモノを海外に送る「輸出」に関わるあらゆる手配を行う、国際輸送のスペシャリストです。
https://www.shippio.io/report/glossaries_forwarder/

通関業者とは

通関業者とは「通関法」という法律に則って、輸出入の税務に関する業務を荷主の代わりに行う業者を指します。輸出入の通関業務は非常に複雑です。輸出入を漏れなくスムーズに行うには、税務申告のエキスパートである通関士を抱える通関業者に業務を依頼することが推奨されています。

フォワーダー・通関業者と乙仲の違い

現在では乙仲という言葉は、戦前に施行され現在は廃止されている「海運組合方法」による、本来の定義より広い解釈で使用されることがあります。
乙仲という言葉は、その使われ方の曖昧さから、意味や使い方が掴みにくいですが、フォワーダーやNVOCCを意味することもあるため、話の文脈や対象の業務範囲から柔軟に解釈する必要があります。

乙仲が現在行っている業務事例

現在、乙仲業者が行っている代表的な業務事例をご紹介します。

 

港湾での荷役業務

港で貨物の積み卸し・運搬などを行う業務です。大型クレーンやフォークリフトなどを使ってコンテナなどを搬出し、切り崩し・仕分けなどを行います

貨物の鑑定

船での貨物運搬は、貨物の損傷や損害のリスクが常に伴います。貨物が安全かつ損傷なく輸送できたかどうか、確認する必要があります。損傷がある貨物がもし見つかった場合に、どの程度のレベルの損害なのか、どのような原因が考えられるのか、どういった手続きが必要か、などを調査し、鑑定する業務です。

梱包や倉庫業

港から受け取った貨物を安全かつ適切に保管するのが倉庫業の役割です。また、保管だけではなく在庫管理や受発注の情報の管理なども行い、安定的で適切な物流供給のための重要な役割を担っています。港に運ばれてくる貨物には日用品から冷蔵品、非鉄金属、危険物まで様々な種類があります。これらを適切に管理するために、倉庫業法という法律も存在しています。

フォワーダー業務

フォワーダーとは、荷主と実運送事業者の間に立ち、代行する国際輸送分野の「貨物利用運送事業者」を指します。海外で生産したモノを日本で流通させる「輸入」や、日本のモノを海外に送る「輸出」に関わるあらゆる手配を行う、国際輸送のスペシャリストです。
フォワーダーは、自ら輸送手段を持たず、船会社、トラック会社などが提供する様々な輸送手段を組み合わせて複合的でシームレスな物流サービスを提供することを強み・特長としています。

通関業務

通関業務は、商品の輸出入を行う際に、企業に代わって手配や申請をする業務を指します。輸出入の通関業務は非常に複雑です。品物によっては厳正な検査が必要な場合や許可の手続きも全く異なります。こういった業務をスムーズに行うために通関業者は存在します。

乙仲業者の選び方

実際に乙仲業者がどんな業務をしているか、イメージができたかと思います。ここからは、実際に乙仲業者に業務を依頼する場合、どんなポイントを押さえればよいかを簡単にご紹介します。

乙仲業者への依頼業務を明確にする

乙仲という言葉は前述の通り、明確な定義はなくフォワーダーやNVOCCを意味することもあるため、話の文脈や対象の業務範囲から柔軟に解釈する必要があります。
依頼する側が乙仲という言葉を曖昧に使用していると、選定業者のミスマッチが起こる可能性があるため、乙仲に依頼したい要件(自社がどのような業務を依頼したいのか)を明確にする必要があります。
荷役業務の人手が足りないのか、フォワーディングを依頼したいのか、依頼したい品物はなにか、などの点を明確にして、依頼したい業務に適切な乙仲業者を選びましょう。

コスト比較だけではなく、実績や付帯サービスも考慮に入れる

貨物の安全性や通関書類の手配などの乙仲業務は、特に専門性や繊細さが求められるため、その分野での乙仲業者の実績も大きな判断基準の一つになるでしょう。
また、従来請け負う業務に留まらず付帯サービスを提供する会社もあります。例えば、フォワーダーであれば輸出入案件を管理するシステムを提供して、荷主業務の効率化に貢献する、世のデジタル化の流れに対応したフォワーダーもでてきております。単純なコスト比較ではなく、自社として何を重要視したいかによって乙仲業者を選定するとよいでしょう。

乙仲とは?フォワーダー・通関業者との違いや業務事例について解説

今回の記事では「乙仲」の言葉の定義や代表的な業務例をご紹介しました。乙仲は港湾地区での貨物の手続きや手引きを行う専門のプロフェッショナルです。
現在は廃止されている「海運組合方法」の名残で残っているため、明確な定義はなく、現代では広義の意味で使用されていることが多いです。会話の文脈や相手によって「乙仲」という言葉の解釈が変わってきますので、どのような文脈で使われているかに留意する必要があります。

 

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