本記事では、海上輸送の基礎知識として、コンテナヤード、コンテナターミナルについて解説します。
コンテナの保管や積み替え、通関手続きなど、海上輸送における重要なポイントを理解することで、貿易業界や物流業界での業務をよりスムーズに進められるようになるでしょう。
Shippioは国際輸送を手配するデジタルフォワーダーです。通関や輸送に関して何か気になる点ございましたら、お気軽にお問い合わせ/資料請求ください。
海上輸送の基礎知識|国際輸送のプレイヤーと輸送費の関係性
国際輸送には大きく分けて、3つのプレイヤーがいます。
- 貨物を動かしたい荷主(Shipper)
- 貨物の輸送を手配するフォワーダー(Forwarder)
- 貨物を実際に動かす船会社(Carrier)
ここで、荷主が船会社に直接依頼すればよいと考える方もいらっしゃるかもしれませんが、船会社は運航している区間のコンテナスペースをできるだけ多く販売することを優先します。
フォワーダーは定期的に一定量の貨物を輸送するため、船会社と安定した契約を結びやすい一方、輸送する頻度や分量が少ない荷主にとっては、船会社と直接契約するメリットがあまりありません。そのため、直接契約による輸送費は、フォワーダーを介した場合よりも同程度、または高くなる傾向にあります。
コンテナターミナルってなに?
コンテナターミナルは、海上輸送と陸上輸送をつなぐ重要な拠点であり、外国貨物の一時保管場所としての機能も持っています。ここでは、貨物の内容点検、改装、仕分けなども行われます。貨物の蔵置期間は1ヶ月と定められており、関税法上の自主管理制度を利用して貨物の搬出入を管理しています。
また、返却されたコンテナは、次回の使用に耐え得るかの検査がなされ、必要に応じて内部の清掃・洗浄や破損部分の修理が実施されます。これにより、コンテナは常に良好な状態に維持され、貨物の安全な輸送が確保されています。
以下はコンテナターミナルのイメージ写真です。
この赤いキリンのようなクレーンはガントリークレーン (Gantry Crane) と呼ばれています。ガントリークレーンは、コンテナ船が着岸する港湾に設置され、コンテナ貨物の積み下ろしを行うための巨大なクレーンです。世界中の貿易港のほとんどに設置されており、貨物の荷役作業において不可欠な設備となっています。
CFSとCYの違いを解説
コンテナターミナルを理解する上で抑えるべき2つの用語、CFSとCYについて解説します。- CFS(Container Freight Station)
CFSは、船会社が貨物をコンテナに詰め込む作業(バンニング)や、コンテナから貨物を取り出す作業(デバンニング)を行う場所です。CFSに搬入される貨物やCFSで荷渡しされる貨物は「CFS貨物」と呼ばれ、LCL(Less than Container Load)貨物と同義です。異なる荷主の貨物を1つのコンテナにまとめる混載作業をコンソリデーション(Consolidation)と呼ぶため、まとめられた貨物はコンソリデーションカーゴとも呼ばれます。
- CY(Container Yard)
CYは、保税地域内で海上コンテナを一時的に保管する施設です。通常、船会社やその指定する港湾運送事業者が所有・管理しています。輸入の場合、FCL(Full Container Load)貨物はCYに搬入された時点で輸入申告が可能となります。また、輸出・輸入のどちらでも、CYを利用した通関手続きにより、リードタイムの短縮が可能となります。
CYオープン、CYカットについての解説
バンニングを終えたコンテナは、CY(コンテナヤード)で本船の船積みを待ちますが、CYにコンテナを搬入できる期間は決まっています。
CYオープンとはCYにコンテナの搬入が開始できる日を指し、CYカットは搬入の期限日を意味します。CYカットまでに税関から輸出許可を取得する必要があり、許可が間に合わない場合は予定していた船に積載できず、納期の遅れにつながります。
そのため、貨物が税関で検査対象になる場合でもCYカットまでに輸出許可が取得できるように、余裕を持ったスケジュールを組むことが重要です。
特に貿易経験の少ない方は検査対象になりやすいため、注意が必要です。一般的には、CYオープンは出航の1週間前、CYカットの締め切りは前日の夕方(例えば16時30分)に設定されている場合が多く、出航前の準備を計画的に進めることが求められます。
海上輸送の際に費用や用語
- ターミナルハンドリングチャージ(Terminal Handling Charge: THC)
コンテナターミナル内で発生する費用を指します。具体的には、ガントリークレーンでコンテナを本船からコンテナヤードに降ろす作業、コンテナヤード内の所定の場所に移動させる作業、コンテナの維持・管理、税関への届け出など、これらの作業をまとめた料金です。
- コンテナフレートステーションチャージ(CFS Charge)
CFSで発生する混載貨物の取扱費用です。LCLサービスチャージやCFSレシービングチャージとも呼ばれています。混載貨物はCFSに運ばれ、コンテナから取り出された後、コンテナに積載されている貨物リストと実際の貨物の個数や容量を確認し、税関に届ける手続きが必要です。これらの作業にかかる費用です。
- エンプティーコンテナハンドリングチャージ(Empty Container Handling Charge: ECHC)
オフドック(港湾区域外にあるコンテナヤードや荷主の倉庫など)で発生する費用を指します。例えば、荷主の都合で一旦コンテナをシャーシから降ろし、後日コンテナを回収する際に発生する、シャーシへの揚げ・降しにかかる費用などが含まれます。
- デリバリーオーダーフィー(Delivery Order Fee)
デリバリーオーダーやアライバルノーティスを発行するための手数料です。輸入者が船会社に支払うもので、一般的にD/O feeと表記されることが多いです。
- ドレージ(Drayage、ドレー)
FCLで輸送する際、倉庫などからCYまで専用のトレーラーで陸上輸送が行われます。その輸送費には、倉庫からCYまでの往復料金が含まれています。
- デマレージ(Demurrage)とディテンション(Detention Charge)
デマレージとは、船会社と荷主(またはその代理人)との間で合意したコンテナヤードでの無料保管期間(フリータイム)を超過した場合に、荷主が船会社に支払う必要のある超過保管料のことです。
一方、ディテンションは、荷主が船会社との間で合意したコンテナ返却の無料期間(フリータイム)を超過した場合に、荷主が船会社に支払う超過コンテナ使用料を指します。
デマレージとディテンションについての詳しい説明は「デマレージとは|言葉の定義やディテンションとの違い、計算方法やデマレージの回避策について解説」をご一読ください。
海上輸送の大まかな流れ
海上輸送の流れについて、輸出と輸入に分けて解説します。
それぞれ、LCL(混載)とFCL(フルコンテナ)に分け、計4つのパターンをご紹介します。
輸出・LCLの場合
- CFSに貨物を搬入
荷主が自身でCFSに貨物を搬入するか、集荷手配を行います。CFSで積み下ろし作業を行い、貨物の重さや長さ、外装の確認が実施されます。
- NACCSシステムで税関申告
NACCSシステムを利用して税関に申告します。一般的には、税関から認可を受けた通関業者に委託します。申告は、簡易審査、書類審査、または検査扱いに分類され、ここで輸出許可を取得しなければ船積みできません。
- CFSでバンニング(コンソリデーション)
船会社は他の混載貨物と相積みをし、1本のコンテナにまとめます。混載にする場合は相積みを考慮した梱包が必要です。
- CFSからCYに搬入
バンニング後、貨物はCYに搬入され、本船への船積みを待ちます。
- 本船出航
船積み完了後、もしくは本船が出航すると、B/Lが発行されます。B/Lやインボイスなどの船積み書類を輸入者に送ります。
輸出・FCLの場合
- コンテナで集荷
空のコンテナを荷主の工場や倉庫まで配送し、貨物を積み込みます。この際、コンテナの陸上輸送にはドレージ費用が発生します。
- CYに搬入
荷詰めしたコンテナをCYに搬入します。
- NACCSシステムで税関申告
NACCSシステムを利用して税関に申告します。一般的には、税関から認可を受けた通関業者に委託します。申告は、簡易審査、書類審査、または検査扱いに分類され、ここで輸出許可を取得しなければ船積みできません。
- 本船出航
LCLの場合と同様に、B/Lやインボイスなどの船積み書類を輸入者に送付します。コンソリデーションがないため、LCLよりも準備作業が少ないのが特徴です。ただし、LCLでもFCLでも、税関で検査対象となった場合は、手続きに1日程度かかることがあります。
輸入・LCLの場合
- 本船到着
本船の到着予定日は、事前に船会社からのアライバルノーティスにより輸入者へ通知されます。
- CYからCFSに移動
作業のため、CYからコンテナがCFSに移されます。
- CFSでデバンニング
CFSでコンテナから貨物が取り下ろされ、仕分け作業が行われます。
- 輸入申告
NACCSシステムを利用して輸入申告を行います。一般的には、税関から認可を受けた通関業者に委託します。申告内容に問題がなければ、輸入許可が下ります。もし検査が必要な場合は、X線検査や全量検査が行われ、その後のスケジュールに影響が出ることがあります。
- 配送
輸入許可が下り次第、配送手続きを進め、貨物が輸入者の指定場所へ配送されます。
輸入・FCLの場合
- 本船到着
本船の到着予定日は、事前に船会社からのアライバルノーティスによって輸入者へ通知されます。
- CYに蔵置
到着後、コンテナはCYに保管されます。
- 輸入申告
NACCSシステムを利用して輸入申告をします。一般的には、税関から認可を受けた通関業者に委託します。申告内容に問題がなければ輸入許可が下ります。検査が必要となった場合、X線検査や全量検査が行われ、その後のスケジュールに影響が出ることがあります。
- 配送
輸入許可が下り次第、配送手続きに入ります。
ただし、食品や危険物など、輸入に際して別途申請が必要な貨物については、この限りではありません。これらの場合、輸入申告前の段階で追加の手続きや書類準備が必要となり、スケジュールがさらに慌ただしくなることがあります。
まとめ:海上輸送の流れやコンテナヤードについて詳しく解説
本記事では、海上輸送の流れとコンテナヤードについて詳しく解説しました。特に重要な要素であるCFSとCYについて説明し、海上輸送の大まかな流れについてもご紹介しました。
海上輸送や物流業務に携わる方々にとって、海上輸送の流れやコンテナヤードに関する知識は、業務をスムーズに進めるための重要な要素です。この記事を参考に、海上輸送における基礎知識をしっかりと身につけ、日々の業務に役立てていただければと思います。
Reference
JETRO コンテナのデマレージとディテンション・チャージとの違い:日本
東京港埠頭株式会社 コンテナ埠頭の施設紹介