国連気候変動枠組み条約会議(通称COP26)が2021年10月31日〜11月13日まで英国で開催されました。各国・産業・企業において、SDGsに向けた対応の必要性が高まる中、SDGsの一つである「気候変動に具体的な対策を」の注目は益々高まっています。
今回は、ロジスティクスと気候変動問題、特に温室効果ガスの観点からのレポートになります。第一弾は温室効果ガスの基本編をお届けします。
温室効果ガスというとCO2を連想される方が多いのではないでしょうか。温室効果ガスは、いくつか種類があり地球温暖化対策の推進に関する法律によると、二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、一酸化二窒素(N2O)、フロンガス(HFC、PFC、SF6)が温室効果ガスに規定されています。各のガスによって温室効果は異なり、CO2を温室効果1とした時に、例えばメタンは二酸化炭素の25倍、一酸化二窒素は298倍の温室効果があるとされています。この温室効果ガスが地表から反射された赤外線などの一部を吸収することにより、気温が上昇し、異常気象を招いており、対策が急務です。
全世界でエネルギー起源によるCO2排出量は年間約335億トン排出されており、各国の排出量の割合は以下の通りです。
出典:全国地球温暖化防止活動推進センター(https://www.jccca.org/download/13327)
石炭依存度の高い中国やインド、エネルギー消費量の多い米国が世界の半分の温室効果ガスを排出しており、気候変動問題対策において中国・米国などの動向が注目されます。
日本の温室効果ガス排出源をセクター別に見ると、電気・熱配分前では、産業部門(工場など)が最大の温室効果ガス発生源であり、運輸部門は二番目に排出量が多い産業部門です。
出典:国立環境研究所 UNFCCC提出版 (https://www.nies.go.jp/gio/aboutghg/index.html)
運輸部門(旅客、貨物)の内訳は以下の通りです。日本の温室効果ガスの排出量全体の約10%が個人用の自動車や旅客の運輸によるものであり、約7%が貨物需要によるものです。
<年間のCO2排出量:旅客・貨物(単位:kt CO2)>
旅客: | 121,615 |
貨物: | 84,340 |
貨物の内訳は以下の通りです。国内の輸送部門(貨物)の温室効果ガスはトラック・自動車によるところが大きいです。
<年間のCO2排出量:鉄道・船舶・航空機(単位:kt CO2)>
貨物自動車/トラック: | 75,829 |
鉄道 : | 370 |
船舶 : | 6,930 |
航空機 : | 1,212 |
2021年10月31日から開催されたCOP26(第26回気候変動枠組条約締約国会議)は、近年続く異常気象の根源の一つと言われる温暖化を抑制するために、各国が具体的な削減目標をコミットすることが出来るかどうか、その目標が温暖化を食い止めるために十分に厳格な目標となるかが焦点でした。しかしながら、今後の気温上昇を抑制するほどの高い削減目標の合意形成までには至りませんでした。2015年、COP21にて採択されたパリ協定にて合意された2050年までに世界の温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするという目標に対して、後に様々な国が数値目標を踏襲した目標に留りました。日本の削減目標は2030年度の温室効果ガスの排出量を13年度との比較で46%削減、米国の削減目標は2030年までに温室効果ガスの排出量を2005年比50~52%削減などです。しかしながら、2050年温室効果ガス排出量実質ゼロを目指す中で、各国の中間目標たる2030年の目標値に届かないため、更なる削減目標の引き上げ、各国が各々の思惑で動くのではなく、団結することが次回のCOP以降も期待されます。
他には、石炭は主要な温室効果ガスの排出源の一つであるため、石炭火力発電の廃止をどこまで各国がコミットできるかどうかも重要な論点です。また、主に途上国などに対する気候変動対策に関する資金を先進国がどこまでコミットするのかについては、日本は5年間で最大100億米ドルを途上国に対し支援する旨を表明しました。
温室効果ガスの排出量の算出方法はいくつか手法があるが、最も一般的な方法は、環境省が公表している排出係数を基に消費した燃料やエネルギー量を基に計算する手法です。尚、電気消費量の場合は各電力会社が公表している排出係数を用いて算出します。
一つ例にして計算してみると、例えば環境省によると年間の一般家庭の電力使用量は4,322kwhです。そして、電気を例えば東京電力エナジーパートナー(排出係数: 0.000457(t-CO2/kWh)から購入している場合のCO2排出量は、
4,322(kWh) x 0.000457(t-CO2/kWh) = 1.975(t-CO2)
となります。つまり、日本の一般家庭は年間約2トンのCO2を電力消費により排出している計算となります。
物流における排出量の計算は使用した燃料を基に算出されます。例えば燃費5ℓ/kmの大型のガソリントラック車(ガソリンの排出係数:2.32(t-CO2/kℓ))が100km先の配送すると仮定した場合の温室効果ガス排出量は以下の通りです。
5(ℓ/km) x 100(km) = 500ℓ = 0.5kℓ
2.32( t-CO2/kℓ) x 0.5 kℓ = 1.16(t-CO2)
つまり、大型トラックが100km移動すると1トン強のCO2が排出されていることになります。
日本の温室効果ガス削減目標達成の対応、特に大企業の対応については、経団連が掲げている経団連低炭素社会実行計画に基づき必要な対策が取られています。経団連に所属する62の各団体が2030年までの実行計画を掲げており、各団体の目標達成が期待されます。また、中期的な展望としては、排出量取引の仕組みをどのように作り込んでいくか、日本政府が推進しているJ-クレジット制度の更なる普及と発展、国際的な排出量取引と連携していくのか、途上国を中心とした環境ビジネスに関する投資や事業、国内の新エネルギーへの投資強化など様々な分野、領域において環境ビジネスの大いなる進展が期待されます。
当社Shippioは、フォワーディングと自社で開発した貿易ソフトウェアをワンストップで提供する日本で初めてのデジタルフォワーダーです。国際物流分野において、デジタルを駆使した温室効果ガス削減にむけて将来的に貢献できる可能性のある事項は以下が考えられます。
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国際輸送に伴う温室効果ガスの排出量を各シップメント事に算出し、見える化し、月次・年次等でレポート化、荷主企業は国際輸送による温室効果ガスの排出量を認知する可能になります。環境問題対策で一番大切なことは具体的な対策もさることながら、先ずは現状の把握に貢献します。
見える化した上で、輸送に関わる排出量相当と同等の例えば排出権クレジットを提供し、当該輸送における温室ガス排出量をオフセットする提案、つまりゼロカーボンの国際物流サービスを提案・提供できる可能性もあります。
金額やリードタイムなど、輸送方法を選定する際の理由が幾つかあるが、航空、船舶、FCL/LCL、航路、本船、車両タイプ等により温室効果ガス排出量は変動します。今後、環境問題対策の機運が高まる中で、温室効果ガス排出は物流の輸送方法を選択するに際して、一つの重要な要素になり得るため、国際輸送のモードに応じた温室効果ガスの排出量の提案を行うことのニーズも高まる可能性があります。
より効率的且つ広く荷主企業をWebなどを通じて集客することで、本来では空きスペースであったコンテナのスペース販売ができたり、混載ニーズを上手くマッチアップできる可能性はあります。現在、海上コンテナは航路によるものの多くのコンテナが空のまま移動したり、空のまましばらく滞留していることもあり、ニーズを効率的にウェブ上でマッチングすることにより、遊休資産を有効的に活用することができるため、将来的には温室効果ガス削減に繋がる可能性があります。
(著:土屋 隆司)
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