2026.06.03

サミットテーマ:国際物流の輸送データの取得から活用までのステップ

国際物流のデジタル化を推進するShippioが開催した「貿易DXイノベーターズサミット」。メインセッションでは、アイリスグループの輸出入業務を担う株式会社オーヤマ(以下、オーヤマ)の佐藤氏が登壇。同社がどのようにアナログな現場を変革し、投資対効果(ROI)を出したのか。Shippioの竹原が、成功の舞台裏を詳しく掘り下げました。

■ 現場と他部署、双方が「迷わない」UIが導入の鍵

Shippio 竹原: オーヤマ様では、非常に多岐にわたる国際物流を管轄されていますが、当初、貿易業務の効率化を目的にShippioを検討された際、どのような点を重視されたのでしょうか?

オーヤマ 佐藤氏: 一番は、貿易の専門知識がないスタッフでも直感的に使える「UI(ユーザーインターフェース)」です。 弊社では実務担当者だけでなく、営業や在庫管理部門の担当者も貨物の動静を確認します。 貿易を知っている人が見ればわかるツールは他にもありましたが、他部署の担当者が見たときに「結局、何が書いてあるかわからない」と言われてしまう懸念がありました。 Shippioは非常にシンプルで、1画面に知りたい情報が凝縮されています。この「見栄えの良さ」と「分かりやすさ」が、全社展開を見据えた際に大きな決め手となりました。

Shippio 竹原: 実務担当者だけの効率化に留まらない視点があったのですね。

佐藤氏: そうですね。特に営業部門からは、お客さまからの「荷物は今どこか?」「いつ届くのか?」という問い合わせにタイムリーに答えたいという強い要望がありました。 これまでは営業が貿易部門に聞き、それを貿易担当が調べて……という伝言ゲームが発生していました。 最終的には、お客さま自身がシステムにログインして直接状況を確認できる環境をゴールに置いていたので、貿易実務経験の有無に関わらず誰にでも使いやすいことは必須条件でした。

株式会社オーヤマ 佐藤 太地 氏

■ 社内調整の極意:相手によって「訴求ポイント」を使い分ける

Shippio 竹原: 社内での導入決定プロセスについても伺わせてください。 既存のやり方を変えるための上申には、苦労もあったのではないでしょうか?

佐藤氏: 弊社の場合、まずは小規模なフォワーディング業務からShippioを使い始めたため、スモールスタートで実績を作ることができました。 その後、全社的にシステムを導入する際の上申では、説得する相手によって「刺さる言葉」を明確に使い分けました。

Shippio 竹原: 具体的にはどのように変えられたのですか?

佐藤氏: 実務を熟知している現場の部門長に対しては、「動静確認作業から解放される」「輸出入案件に関わる書類がクラウドで一元管理できる」といった、「現場の負担がどれだけ軽減できるか」という実務目線のメリットを強調しました。 一方で社長に対しては、業務工数削減による人件費抑制や、IT導入補助金の活用によるコスト低減、そして何より「企業イメージの向上と投資対効果」という経営目線の話に終始しました。

Shippio 竹原: 経営層が最終的な判断を下すポイントはどこにあったと思われますか?

佐藤氏: やはり、単なる効率化だけでなく「波及効果」まで示した点だと思います。 リードタイムが正確に可視化されれば、過剰在庫を減らすことができ、結果としてキャッシュフローが改善されます。 物流の枠を超えた経営上のメリットを数値化して説明したことが、導入の決定打になったと感じています。

■ 現場の変化:「鳴り止まない電話」が激減し、生まれた心理的余裕

Shippio 竹原: 実際に導入されてから、現場の空気感や具体的なオペレーションの変化はどうでしょうか。

佐藤氏: 以前は在庫管理部門などから「あの荷物、いつ着くの?」「昨日から遅れてない?」といった電話がひっきりなしにかかってきていました。 電話を切った瞬間に次の電話が鳴るような状況もあり、その都度担当者の作業が止まってしまっていたんです。 現在は、「Shippioを見れば最新状況がわかるので、そちらを見てください」と言えるようになり、問い合わせの電話自体が劇的に減りました。

Shippio 竹原: それは大きな改善ですね。担当者の方々のメンタル面にも影響はありましたか?

佐藤氏: 非常に大きいです。繰り返し聞かれるストレスや負担がなくなったことで、心に余裕を持って本来の業務に集中できるようになりました。 トラッキングが完全自動化されていなくても、キーとなるタイミング(出港・入庫など)の情報が可視化されるだけで、現場の安心感は全く違います。

Shippio利用イメージ ※Shippioのデモ環境をベースに作成

■ 未来への展望:データで「真のリードタイム」を可視化する

Shippio 竹原: 今後、蓄積された輸送データをどのように活用していきたいとお考えですか。

佐藤氏: 基幹システムとのデータ連携によるリードタイムの適正化です。基幹システムにある「発注日」と、Shippioで得られる正確な「納品日」を掛け合わせ、「発注から納品まで実際には何日かかっているのか」という真の実績値を可視化したい。 例えば、今までは「120日」と設定していたマスターデータが、実は実績値では「150日」だった、といったズレが見えてきます。 この実績に基づいてマスターデータを修正し続けることで、真の在庫適正化が実現できると考えています

■ 最後に:貿易DXを志す皆様へ

佐藤氏: 私も新卒の頃から、貿易実務のアナログで面倒な作業に疑問を感じてきました。今回、現場からも「なぜ紙がなくならないのか」というDXを望む声があったことも、一歩踏み出せた大きな要因です。現場の「こうなったらいいな」という希望を、デジタルという手段で実現していくことが、これからの貿易実務には不可欠だと感じています。