2024年4月1日から施行される働き方改革関連法による「2024年問題」。物流業界の「2024年問題」とは、ワークライフバランスの重視から、自動車運転業務の年間時間外労働時間の上限が960時間に制限されることによって発生する問題を指しています。
国土交通省も「我が国が直面する課題」の一つとして2024年問題を挙げています。この問題を解決するために、DXの必要性が見直され、強靭で持続可能な物流ネットワークの構築が求められています。
Shippioでは2023年8月17日に「新戦略:地方港活用による安定輸送とコスト削減」と題して、2024年問題への対応策としての地方港の活用と、Shippioのソリューション展開とその効果について、セールスマネージャーの金城がセミナーを行いました。
Profile
金城 健/セールス マネージャー
株式会社フルスピードにてアドテク事業の新規事業立ち上げのSalesとして携わり、BtoBマーケティング実施企業の顧客開拓や大手広告代理店との提携を担当。後にフルスピードが広告代理店とアドテク事業を分離するために戦略的子会社、クライドを設立。クライドの部長として、DSP事業の成長に尽力し、売上と組織を急成長させる一方、新規事業の立ち上げにも関わる。現在はShippioでセールスマネージャーとして従事。
施行まで1年を切った働き方改革関連法による「2024年問題」です。具体的には、トラックドライバーの時間外労働時間が年間960時間に制限されることにより、一人当たりの走行距離が短くなり、長距離でモノが運べなくなることが懸念されています。さらに、運送業界の売上減少、トラックドライバーの収入減少、それに伴う離職の増加なども考えられています。運送業界は慢性的な人手不足が続いており、そこに労働時間の上限が加わることで、安定輸送がさらに困難になるとも言われています。
ドライバーの人材不足や運搬量の減少から、物流コストの上昇や商品価格への価格転嫁も課題視されています。陸送コストが高騰した場合、主に500㎞以上の長距離輸送の受け入れ拒否が起きる可能性があります。それに伴い、料金やスケジュールに対する交渉も増加すると考えられています。
地方港を上手く活用し、陸走距離の短縮・最適化を提案します。輸送能力の減少と物流コストの上昇が不可避であれば、新たな対策を講じる必要があると思っています。
現状、「主要港+長距離ドレー」で配送しているものを、「地方港+短距離ドレー」へ切り替えることで、安定輸送とコスト削減が実現できると考えます。
島国である日本は、各地にコンテナ荷下ろしに利用できる港を多く持っています。
いわゆる主要港として、東京港・横浜港・川崎港・名古屋港・大阪港・神戸港などが挙げられますが、今回ご提案したい地方港は仙台港や新潟港、金沢港、長崎港など、主要港以外の地域の港を指します。この地方港を上手く利用することで、新たな可能性が生まれると考えています。
メリットとして、安定輸送とコストが考えられます。
配送先に近い港まで船で運び、そこから短距離ドレーを手配すれば、配送会社も案件を受けやすく、2024年問題に伴う影響を緩和した「安定輸送」が実現すると考えています。また、長距離ドレーを回避することにより、料金やスケジュールの交渉もし易くなると思います。
また、地方港を選択肢として持つことで、有事の際の安定輸送に寄与できるサプライチェーンの選択肢となり、BCP対策にも有益であると考えています。
コストメリットに関して、4つの例でご紹介します。リードタイムは、あくまでShippioの実績データを元に推定した目安であり、ドレージ費用に関しても平均値を記載しています。配送場所によりコストの差異が生じる点は、ご了承ください。
以下の2ルートで比較します。
地方港へ切り替えると、リードタイムはおおよそ6〜11日伸びると考えられます。海上運賃も7万円ほど上乗せとなる見込みですが、長距離ドレーから短距離ドレーへ切り替えることで、ドレージ費用を11万円ほど下げることが可能です。それにより、トータルコストで見ると、約4.5万円のコスト削減が可能になる見込みです。
以下の2ルートで比較します。
地方港である金沢港へ切り替えるためには、釜山港を経由して運びます。これによりリードタイムは、おおよそ3〜8日伸びると考えられます。さらに、海上運賃も5万円ほど上乗せとなる見込みですが、長距離ドレーから短距離ドレーへ切り替えることで、ドレージ費用を7.5万円ほど下げることが可能です。トータルコストで見ると、約2.5万円のコスト削減が可能になる見込みです。
以下の2ルートで比較します。
こちらも、リードタイムはおおよそ6日、海上運賃も2〜5万円ほど上乗せとなる見込みですが、ドレージ費用は10万円ほど下がる見込みです。それにより、トータルコストで見ると、約5〜8万円のコスト削減の可能性が考えられます。
以下の2ルートで比較します。
同様に、リードタイムはおおよそ3〜8日、海上運賃も6万円ほど増加する見込みですが、ドレージ費用が9万円ほど減少する見込みです。それにより、トータルコストで見ると、約3万円のコスト削減の可能性が考えられます。
貿易業務はステークホルダーが多く、コミュニケーションツールも電話、メール、ファックスにExcelなど、多岐にわたり煩雑です。そのすべての情報は、貿易実務担当者がハブとなり、ひとりで担っているケースがほとんどです。
地方港へ切り替えることにより、以下3つのオペレーションコストの増加が懸念されます。
Shippioのクラウドサービスは、対象となる港を絞り込み検索で即座に抽出することが可能です。
例えば博多港を利用した場合、検索窓に以下の条件を入れて絞り込みをします。
これで、一覧には博多港を利用しているシップメントのみが表示されます。さらに、特定のシッパーを利用している場合、シッパーの絞り込みも可能です。
このようにワンクリックで、探したい情報を一覧で出すことが可能なので、揚げ地追加による物流管理コストの改善が見込めます。
主要港から地方港へ切り替えると、リードタイムが長期化し、海上輸送の距離も増加します。それにともない、海上輸送の進捗管理や本船動静管理の工数も増えます。
Shippioのクラウドサービスは、シップメントごとの進捗管理をマイルストーンで表示します。本船の遅延日数も、最新の日付(ETD、ETA)と、当初取得のオリジナルETAを比較して算出します。さらに、遅延の履歴も確認できます。
また、Shippioの本船動静トラッキングサービスは、データ取得を1日2回行い、自動更新します。船会社サイト等を含む複数のデータソースの情報を元に、当社独自のロジックにより精度のETD、ETAや洋上にある本船位置などを自動で算出する仕組みになっています。システムによる自動取得と、マニュアルでの手入力の組み合わせとなっているため、高い精度の自動トラッキングを実現しています。これにより、B/L番号などを元に各船会社のサイトへ見に行き、手打ちで検索する工数が削減できます。
配送先・揚げ地変更により増加する海運貨物取扱業者や配送先への連絡コストも、Shippioのクラウドサービスで改善が可能です。
PDFやFaxで届いた関係書類は、シップメントごとに紐づけてクラウドサービス上で管理ができます。海運貨物取扱業者や配送先へアカウント発行をすれば、簡単に最新情報にアクセスすることが可能となり、貿易担当者を介して情報を得なくとも、自ら欲しい情報をクラウドサービスから取得することが可能になります。
さらに、シップメントごとにチャット機能があるので、メールを開かずとも画面上のチャットでコミュニケーションが取れます。
シップメントごとにラベルを貼ることで、視覚的に管理することが可能です。ラベルは5種類あり、好きなワードでカスタマイズできます。
重要な貨物なのか、急ぎなのか、優先で運んで欲しいのか、短納期なのか、それ以外にも管理したいワードを自由に入れることができるので、輸出入の特徴に柔軟に対応できます。また、ラベル管理はシップメント一覧で表示されるので、クリックして詳細を開かずとも一目でメッセージが伝わり、細やかなコミュニケーションに寄与できると考えています。
輸送リードタイムを始めとした物流情報は、データとして蓄積され、保存されます。クラウドサービスを利用すれば、現行の業務フローをこなすだけで自然とデータが溜まる体制をつくることが可能です。
実績としてデータがシステムに蓄積されれば、分析に活用できるようになります。今まで経験で補ってきた業務に対して、過去データに基づいた対策・施策が打てるようになり、主要港と地方港利用の比較や最適なルート検討など、再現性のあるサプライチェーンの構築と戦略的な活動が可能となります。
施行まで1年を切った、働き方改革関連法による「2024年問題」。地方港活用を選択肢にして、陸走距離の短縮・最適化で持続可能な物流ネットワークの構築をしてみてはいかがでしょうか。Shippioでは輸送リードタイムデータなどを活用し、荷主さまに最適な輸送ルートのご提案ができます。ご興味がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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