導入事例

SCMは会社の成長を支える事業戦略の武器、コストセンターからプロフィットセンターへ

WHILL株式会社

「すべての人の移動を楽しくスマートにする」をミッションに掲げ、近距離モビリティ及び付随サービスの開発と展開を行っている。
”近距離モビリティ”とは、免許不要で歩道を走れる移動手段。歩行領域の移動をカバーすることで、他の公共交通機関などの移動インフラや、空港、駅、遊園地などさまざまな場所をシームレスにつなぎ、快適に利用できるようにしている。デザインとテクノロジーの力を生かした、誰でも乗りたいと思える近距離モビリティを好きな時に自由に使えて、楽しくスマートに移動できる世界を構築し、近距離の移動における新しいスタイルを提案。現在世界20以上の国と地域で事業を展開する。

  • 目的

    ・サプライチェーンの標準化、効率化を図る
    ・物流や在庫管理を統合的に見直し、経営全体の改善を目指す

  • 課題

    ・社内外に点在する情報が集約できていない
    ・国際物流と国内物流間の情報伝達に工数がかかっていた
    ・多岐にわたるコミュニケーションツールが存在する
    ・在庫管理エラー起因で欠品が発生していた

  • 効果

    ・製造後のフローが可視化できた
    ・製造やその他のチームとのコミュニケーションが円滑になり質が向上した
    ・国内の外部納品先倉庫もシステムを利用し、可視化・標準化の範囲が広がった

  • 家具
  • 業務標準化

急速なビジネス拡大が起こると、SCM体制の構築スピードが追い付かず、事業とのアンマッチを起こします。物流業界のサプライチェーンは、多岐にわたる部署と人員が関わります。従来のアナログな情報管理を見直し、調達物流におけるSCM体制の可視化・標準化・効率化に着手する企業も増えてきています。

Shippioは2023年6月8日に、近距離モビリティを開発・展開するWHILL株式会社(以下、WHILL)と「ビジネス拡大を牽引するボトムアップからのSCM再構築」と題してウェビナーを行い、サプライチェーンマネジメント部門のコストセンターからプロフィットセンターへの位置づけの変遷について語りました。

登壇者

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石黒 のぞみ/WHILL株式会社 サプライチェーンマネジメント部
新卒で日本通運株式会社に入社、国内引越の営業・オペレーション担当を経て、医療機器倉庫のロジスティクス業務を担当し、センター長として現場改善や配送フロー構築に従事。
その後、WHILL株式会社 SCM部にて、国内倉庫の業務委託化や在庫管理、配送フローの改善等に従事し、現在はサプライチェーン全体のDX化に取り組んでいる。

 

 

 

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津崎 泰生/Shippio コンサルティングセールス 
新卒で日本通運株式会社の海運事業部に入社し、保税倉庫での荷捌き業務、フォワーディング営業を経験。その後自動車部品メーカーの専属担当としてサプライチェーンに携わる。
現在は株式会社Shippioにて事業会社向けのセールスに従事している。

 

 

 

 

 

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早急な効率改善が求められたSCM部

― 今回「SCMの再構築」をテーマとしていますが、再構築に至った背景は何ですか?


石黒:現在はサプライチェーンマネジメント部(以下、SCM部)となり役割も明確ですが、WHILL入社当時はオペレーション部と一括りで、物流管理と在庫管理を人海戦術で行っている、いわゆる労働集約型ビジネスモデルが定着している状態でした。

生産性に対する問題意識はあるものの、具体的なソリューションが描けない状況でした。さらにコロナ渦の厳しい状況が続く中、コストセンターとしての立ち位置が根強く残る部署とあり、早急な効率改善が求められていました。


― SCM再構築の進め方はどういうものでしたか?

 

石黒:私自身、物流企業出身ということもあり、まずは倉庫オペレーションや在庫管理の改善から実行しました。実際に倉庫へ足を運び、作業一つ一つまで具体的にすり合わせを行うことで、オペレーションの標準化・効率化を図り、課題の潰し込みを実施しました。泥臭いことも多々ありましたが、現場で何が起きているのか、何が必要なのかを知る良い機会だったと思います。

その後、定量的な情報が取得できるレベルになったため、全社KGIからブレイクダウンしたKPI設定を行いました。あるべき状態を数値で示すことで、業務委託先も含めた全員が、あるべき姿との乖離を明確に認識することができました。これにより、より有効な手段の設定や議論ができるようになりました。

 

― どのようなKPI項目を、各部門で設定したのですか?


石黒:フェーズを分けてKPI管理をしました。ファーストフェーズは、欠品率・ロス率を設定しました。これは、現場改善を先に着手していたため、1年ほどで目標達成出来ました。先にKPIを決めていたら、現場との乖離が発生してしまい、1年では達成できなかったと思います。

直近では、セカンドフェーズに移っています。生産性・業務精度でKPIを設定しています。例えば、人件費や保管費、保管能力や流通加工能力といった倉庫に関するKPIや、配送費や配送能力といった配送に関するもの、それらに付随するエラーや、在庫のロス率や廃棄率など、細かくKPIを見ています。

これも一方的にKPIを押し付けるのではなく、業務委託先関連業者も含めて、共にKPIの目線を合わせ改善に取り組んでいます。


― SCM再構築を進める中で出てきた課題はありますか?


石黒:社内外に点在する情報の集約作業が、一番のボトルネックでした。調達・製造部門は、社内外の多くの人と関わるため、Excel・メール・Teamsとコミュニケーションツールが複数存在し、情報集約に時間がかかっていました。タイムリーに正しい日付(ETD、ETA)が把握できず、予期せぬ欠品が発生し、お客様へご迷惑をお掛けしてしまったこともありました。

調達・製造部門は物流の上流に当たるため、このボトルネックは非常に大きく、思い描くあるべき姿を実現するには、改善は避けて通れないと強く認識しました。そこで、可視化・標準化を行うために何をすべきかを模索し始めました。

 

情報共有の重要性を踏まえたShippio導入までのアプローチ

 

― 可視化・標準化を行うパートナーとして、Shippioを選んだ理由は何ですか?


石黒:可視化・標準化を行うために何をすべきか模索し始めた頃、Shippio様のことを知り、要件を網羅できているシステムだと感じたのが最初です。

また、Shippio様と導入に向けて打合せを行う中で、”物流課題解決に向けた社会への貢献”という価値観に触れ、ソフト面でも共感する部分が非常に多く、是非一緒に課題解決に向けた取り組みを行いたいと思うようになりました。


― ”物流課題解決に向けた社会への貢献”とありますが、どのような価値観ですか?

 

津崎:日本は島国なので、貿易は日本社会の基盤だと思っています。しかし貿易業務は、いまだにアナログ業務が多いのが現状です。労働人口が減るなか、デジタルの力で貿易業務を省力化することが急務だと考えております。

同時に、単純に業務の効率化を進めるだけでなく、意識の変化も必要だと思っています。一般的にはSCM部門はコストセンターという意識が強いですが、同時にさまざまなデータを持っている部門でもあります。そのデータをもっと戦略的に活用し、コストセンターからプロフィットセンターへと意識を変えていきたいと強く思っています。

 

― 導入アプローチでは、特にどのような点を意識しましたか?


津崎:複数の部署と、さまざまな担当者が関わっており、国際物流と国内物流間の情報伝達に工数が掛かっている点が大きな課題でした。

そこでまず、どのタイミングで誰がどの情報を伝達するか、業務フローを可視化しました。そこから、その業務フローをShippioクラウドシステムに落とし込むと、どのような動き方をするのか明確にし、ご提案しました。意識した点としては、ヒアリングと目線合わせの時間を充分に取り、課題をきちんと把握した点だと思います。

石黒:Shippio様が我々のゴールをきちんとヒアリングし、あるべき姿を一緒に描いてくださったので、非常に話がスムーズに進みました。

SCMは、物流や在庫管理を統合的に見直し、経営全体の改善を目的としています。ただ、この考え方を実践していくには、組織や企業の壁を越えた情報共有が必要です。その課題に対する目線がお互いに揃っていたので、ストレスなく導入まで進めたと感じています。

津崎:ShippioのクラウドシステムはSaaSです。ベンダーに開発を依頼し、要件定義を経て企業ごとの業務フローに最適化したシステムでありません。ゆえに、運用開始までのスピードは大変早く、開発コストもかかりません。

この特徴を最大限に活用いただく上で、ゴールである「あるべき姿」を双方で擦り合わせ、立上げ時の運用サポートを行う。コミュニケーションが正しくとれたことが、上手くいった要因の一つだと思います。

SCM領域の課題改善に向けた数値化の重要性

― Shippio導入で得られた効果はありますか?

 

石黒:Shippioクラウドシステムを使用することで、製造後のフローが可視化できました。これにより、製造チームとはもちろん、その他のチームとのコミュニケーションも円滑になったことが大きいです。

弊社は各分野のプロフェッショナルがそろっていると自負しています。それゆえ、無意識のうちにセクショナリズムな環境が生まれていたことも事実です。その環境下においてUXの高いツールやシステムが、コミュニケーションをより有効にし、専門性を更に活かす結果に繋がりました。


― WHILL様のどのような点が、早期のShippio定着化に繋がったと思いますか?


津崎:二点あると思っています。まず一つ目は、WHILL様の中で課題が明確になっており、業務フローの整理を丁寧に行っていただけたことです。

二つ目は、石黒様のチームが、WHILL内におけるSCMの重要性を強く認識されているところです。会社のP/Lに対し、どこがコストになっているかSCMの役割で分析できるチームだったことがとても大きいと感じています。KPIもフェーズごとに切り分けし、課題を段階ごとに捉えていました。

課題解決への打ち手が明確になっていたので、まずは着手しやすい国内の自社物流をSCM部で改善し、その後に他部署を巻き込んだ国際物流の改善と、導入後のロードマップが描けました。Shippio導入後は、社内コミュニケーション改善を実施し、その後に国内の外部納品先倉庫様にもシステムを利用していただくことで、可視化・標準化の範囲を広げて進めていけた点が、早期定着化に繋がったと思います。


― SCMの重要性を、どのようにチームで共有しているのでしょうか?


石黒:オペレーション部からSCM部となるタイミングで、PLから見直してSCM領域の課題把握をしました。その際、在庫金額の差異が課題として挙がり、在庫管理エラー起因で欠品が発生している事が分かりました。欠品が発生すると、分納による余計な配送費用が掛かるだけでなく、お客様からの信頼も失い、ビジネス機会の喪失となるため、他部署の協力を得ながら課題改善に取り組みました。この課題を、セールスチームと一緒に認識できたことが大きいと思います。

財務面できっちり課題を定義し、それに対するアプローチから話すと、やはり経営層からしても非常に受け入れやすいと感じました。すると、他部署からのサポートや連携もスムーズになります。物流業務は、数値で示せる箇所が難しく、分かりづらい印象でしたが、そこがうまく数値化できたところがポイントだったと考えています。

サプライチェーンの円滑化にやりがいを

― 今後のSCM部として注力していくポイントはどこですか?


石黒:現在、より戦略的なSCM体制を構築するために、デジタルによる情報管理・物流管理を模索しています。その一環としてOMS・WMSの導入を検討しています。これは単純に、デジタル化をすることで生産性を上げることが目的ではありません。デジタルとフィジカルが相互で作用する体制構築をすることで、よりビジネスを円滑に行えるシステムをつくっていきたいと考えています。

SCMが弊社にとって戦略の武器となり、会社の成長を支える存在になりたいと思っています。


― 今後、WHILL様のビジネスをShippioとしてどうサポートしていく予定ですか?


津崎:ここまで、デジタル面、ITソリューションの話が多くを占めましたが、Shippioはデジタルフォワーダーとして輸送の実手配業務もあります。WHILL様には、実手配部分もご依頼いただいているので、まずここを安心してご利用いただけるオペレーション提供は、ベースとして一番大事だと考えています。

またWHILL様は急成長中の企業であり、今後も物量が増えていく事が見込まれます。今の取扱量が倍になったとしても安定して稼働出来るオペレーションや、クラウドシステムは追求していく必要があります。

「SCMが戦略の武器となり、会社の成長を支える存在」になることが目標とありました。私も強く思っていることなので、その目標をサポートできるよう、可視化出来る情報、ご提供できるデータを増やして行くことが求められると思っています。WMSの分野に対してもそうですし、国際物流の輸送リードタイムに関しても、フィジカルに活用しやすいデータにしていく必要があると考えています。


― 荷主企業でサプライチェーンに関わっている方へメッセージをお願いします。


石黒:我々メーカーは、モノが届かなければ商売が始められませんし、モノが止まればさまざまなトラブルを引き起こすと考えていますので、サプライチェーンを円滑化していくことにやりがいを感じています。

この同じ志を持った方が、メーカー全体あるいは日本全体に増えれば、物流業界はもっと良くなると思っています。

 


 

Shippioでは国際物流の可視化を実現し、情報共有機能や、貿易書類・請求書管理、納期調整を一元管理できるクラウドサービスを提供し、貿易業務の可視化・効率化をサポートしております。
貿易業務で人手が不足している、現状のやり方ではDXが進まないなどのお悩みがございましたら、お気軽にお問い合わせください。

 

 

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