キャッチオール規制とは|リスト規制との関係性やホワイト国の定義も解説

2023.04.28

輸出業務において理解すべき重要な用語の一つに、「キャッチオール規制」があります。

この記事では、キャッチオール規制について、リスト規制との関係性やホワイト国の定義、さらにキャッチオール規制の該当条件などを詳しく解説します。

キャッチオール規制は安全保障輸出管理の一つ

「キャッチオール規制」は、安全保障輸出管理の一環として設けられた規制の一つです。安全保障輸出管理は、国際社会の平和と安全を維持するために不可欠であり、特にウクライナ情勢の悪化に伴い、軍事的リスクの高まりが指摘される中その重要性が増しています。

そのため、武器や軍事目的で利用される可能性もある輸出品に対し、国際的なルールが設定され、日本では外国為替及び外国貿易法に基づいて規制が行われています。

キャッチオール規制ってなに?リスト規制との関係性について

軍事利用の可能性がある品目や兵器開発に利用される懸念のあるものは「リスト規制」に指定され、輸出には経済産業大臣の許可が必要です。しかし、このリスト規制ではカバーしきれない範囲を補完するために「キャッチオール規制」、またの名を「補完的輸出規制」が設けられています。

 

リスト規制には以下の15項目が指定されています。各項目はさらに細分化されていますので、詳しくは経済産業省のウェブサイトをご確認ください。

なお、この15項目以外のすべての貨物(食料・木材・紙製品を除く)はキャッチオール規制の対象となり、輸出の際に経済産業大臣の許可が必要です。

 

項番号 主なもの 輸出規制 規制地域
1  武器
リスト規制
全地域
2  原子力
3-1  化学兵器 例)弁、ポンプ
3-2  生物兵器
4  ミサイル
5  先端材料
6  材料加工
7  エレクトロニクス
8  コンピュータ
9  通信関連
10  センサー・レーザー
11  航法関係
12  海洋関連
13  推進装置 例)人工衛星、無人航空機
14  その他
 例)粉末状の金属燃料、電気制動シャッター
15  機微品目 例)電波の吸収材、水中探知装置
16

 リスト規制品目以外で食料や木材等を除く

 全ての貨物・技術

   キャッチオール規制

全地域

(ホワイト国を除く)

民生品の軍事利用への転用例

具体的に、軍事利用の懸念がある民生品には、どのようなものがあるでしょうか。

たとえば、ゴルフクラブやキャンプ道具などは、その素材や部品が軍事兵器に転用されるリスクが指摘されています。また、シャンプーや薬品は、含まれる成分によっては化学兵器の原料となる可能性も否定できません。

このように、一見すると無関係に見える製品や技術であっても、軍事利用に転用されるリスクを検討し、法的に規制することで未然に防ぐのが「キャッチオール規制」の役割です。

キャッチオール規制を無視するとどうなる?

キャッチオール規制を守らずに無許可で輸出を行った場合、外為法違反として処罰の対象となります。

経済産業省が刑事告発に踏み切るケースもあり、違反者には罰金(2,000万円以下)や7年以下の懲役、さらに輸出禁止処置などの厳しい罰則が科されます。

2017年10月1日には改正外為法が施行され、罰則はさらに強化されています。

キャッチオール規制の対象外となるホワイト国(グループA)

キャッチオール規制は、すべての国に適応されるわけではありません。信用性の高いと認められる国々は「ホワイト国(現在は「グループA」と呼称)」として指定され、キャッチオール規制の対象外となっています。

以下に、ホワイト国(グループA)をまとめた表を示します。
(2024年11月現在)

 

オセアニア オーストラリア、ニュージーランド
アジア 大韓民国
南北アメリカ アルゼンチン、カナダ、アメリカ合衆国
ヨーロッパ

ポルトガル、スペイン、スウェーデン、スイス、イギリス、オーストリア、ベルギー、ブルガリア、チェコ、デンマーク、フィンランド、ハンガリー、アイルランド、イタリア、ルクセンブルク、オランダ、ノルウェー、ポーランド、フランス、ドイツ、ギリシャ

ホワイト国への輸出では、キャッチオール規制の対象貨物であっても経済産業大臣の許可は不要です。ホワイト国の国々は信頼性の高い国として認定されており、この特例が適用されます。

ホワイト国(グループA)の選定基準は?

経済産業省は、輸出規制の対象国をグループAからDまでにランク分けしています。各ランクの条件は以下の通りです。

グループA:輸出管理における優遇措置対象国
グループB:国際輸出管理レジームに参加しており、一定要件を満たす国・地域
グループC:グループA・B・Dのいずれにも該当しない国
グループD:国連武器禁輸国、懸念国とみなされる国・地域

この分類により、輸出規制の対象範囲が明確化され、各国のリスクに応じた管理が行われています。

輸出許可が必要かどうかの判別条件

 

キャッチオール規制は、以下2種類に分類されています。

  • 大量破壊兵器キャッチオール規制
  • 通常兵器キャッチオール規制

 

規制品目の詳細は、経済産業省のレポートから確認できます。

特に、大量破壊兵器キャッチオール規制に該当する場合は、より厳格な要件確認が求められ、輸出の際には慎重な対応が必要です。
※要件確認とインフォーム確認については、次項にて詳しくご説明いたします。

 

▼大量破壊兵器キャッチオール規制

対象地域 規制要件
インフォーム要件 客観要件
用途要件 需要者要件
グループA(ホワイト国)を除く地域

▼通常兵器キャッチオール規制

対象地域 規制要件
インフォーム要件 客観要件
用途要件 需要者要件
国連武器禁輸国・地域 不要
グループA(ホワイト国)を除く地域 不要 不要

経済産業省 安全保障貿易管理 HPよりShippio作成

※国連武器禁輸国・地域

アフガニスタン、中央アフリカ、コンゴ民主共和国、イラク、レバノン、リビア、北朝鮮、ソマリア、南スーダン、スーダン

客観要件とインフォーム要件について

「大量破壊兵器キャッチオール規制」と「通常兵器キャッチオール規制」のいずれにおいても、客観要件とインフォーム要件の2つの要件確認が必要です。これらの要件のいずれかに該当する場合には、経済産業大臣への許可申請が必要となります。詳しくは、以下の表をご参照ください。

 

①客観要件
■輸出者による判断

客観要件は、次の2つの要件に分けて審査をします。

 

  1. 用途確認(輸出物の用途)
    輸入者等において、大量破壊兵器や通常兵器の開発等に用いられる恐れがあるか

  2. 需要者確認(グループAか、もしくはそれ以外か)
    輸入者等が、大量破壊兵器等の開発などを行っている(または行った)か。あるいは、特定の(外国ユーザー)として指定されているか否か、など。:経済産業省:外国ユーザーリスト
    • グループAに属している:許可が不要
    • グループB・C・Dに属している:許可が必要

 

輸出者が要件確認とインフォーム確認の2つを行った結果、輸出予定の貨物や提供しようとする技術が、①大量破壊兵器等の開発、製造、使用、または貯蔵などに利用されるおそれがある場合、または②通常兵器の開発、製造、または使用に利用されるおそれがある場合には、経済産業大臣への許可申請が必要となります。

※通常兵器キャッチオール規制の場合、需要者確認は不要になります。

②インフォーム要件
■経済産業省による判断

大量破壊兵器等の開発等、または通常兵器の開発等のおそれがあるものとして、経済産業省から許可の申請をすべき旨の特定の通知(インフォーム)がされている場合に、許可申請が必要となる。

経済産業省 安全保障貿易管理 HPよりShippio作成

 

 

キャッチオール規制とは|不明なことがあれば、プロに相談しよう

「キャッチオール規制」は安全保証輸出管理の一環で、「リスト規制」では網羅できない範囲を補完する役目を担っています。輸出許可の必要性を判別する際には要件を確認し、外為法違反とならないよう細心の注意が求められます。

輸出リスク管理のためにも、キャッチオール規制についてしっかりと理解し、必要な要件を確認することが重要です。不明点や懸念がある場合には、経済産業省に相談することをお勧めします。

また、Shippioはデジタルフォワーダーとしてフォワーディング業務に加え、貿易業務を効率化するクラウドサービスを提供しています。輸出手続きに関してご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。



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