コンテナ運賃の動向は?海上運賃変動の要因や調べ方を解説

2023.02.06

高騰してきたコンテナ運賃、2022年後半に入り急落? 一体、国際海上輸送に何が起きているのでしょうか? 
海上運賃の推移、変動の要因、運賃の調べ方まで解説します。

 

コンテナ運賃の推移

新型コロナ禍などにより国際海上コンテナ輸送運賃は高騰、加えて輸送及び港湾能力低下による運航遅延などが影響し、世界中でサプライチェーンの混乱が発生しています。

 

この記事では、なぜコンテナ運賃が高騰したのか、背景を振り返りながら、2023年コンテナ運賃市況を見通します。

2020~2021年:コンテナ運賃は右肩上がり

 

2020年夏以降のコンテナ運賃高騰は、中国主要港から日本向けのコンテナ運賃でも同様に発生しています。

この運賃高騰及び輸送混乱は次の4つの項目が起因したと言われています。

 1. 2018年米中経済摩擦で世界的に新造コンテナ数が減少した
 2. 中国製造業V字回復と欧米巣ごもり消費などで輸出入が増加した
 3. 新型コロナ禍や港湾労使交渉などで一時的に港湾機能が低下した
 4. コンテナトラックドライバーやシャーシが不足傾向にある

 

燃料油価格や用船料の上昇による各種サーチャ-ジ(後述)増に加え、スケジュール順守率低下や遅延の拡大により、慢性的な貨物スペース不足と空コンテナ不足が生じている状況にありました。

2022年:コンテナ運賃は後半から下落

 

2022年初めに過去最高値まで高騰したコンテナ運賃は、年央まで高止まりで推移していました。

しかし8月には中国・上海から欧米向けの運賃が下落し始め、米国西海岸向け40フィートコンテナ1本当たりのコンテナ運賃は10月中旬時点で2,097ドルと 2月最高値8,117ドルから8割近く下落しています。

 

また米国ロサンゼルス港のコンテナ輸入量は新型コロナ以前の水準を割り込んでおり、その対応として予定運行便数の20%以上減便といった対応を余儀なくされ、船会社からは「想定以上に需要が鈍化している」といった声も聞かれています。

 

たった半年の間でコンテナ市況がここまで急落した要因は次の3つだと考えます。

 1. 景気減速懸念の在庫調整とインフレにより消費財の荷動きが鈍く輸送量が減少している
 2. コンテナ不足の対応として業界内外での共有や融通が浸透し需給が改善している
 3. コンテナ船不足の対応として臨時船の追加投入などで需給が改善している

2023年度のコンテナ市況見通し

 

2023年は世界的インフレや金融引き締めによるリセッションが継続することで、輸送量=コンテナ需要へ負の影響を与えると推察されます。供給面では環境規制に伴う減速航行から実行輸送能力は2023年以降15~20%減少すると予想されていますが、中国船社などによる新型造船投入が予定されていることもあり現有能力は維持される見込みです。

 

不透明な要因としては、OPECプラスの大幅減産発表により原油価格の上昇に伴う燃料サーチャージ増加の懸念があります。また米国西海岸港湾労使交渉が停滞しており、11月時点でも妥結目途が見えておらず長期化する可能性があることです。仮にストライキ実施となると港湾能力が減少し、再び沖待ちするコンテナ船が増加、滞留することでサプライチェーンが混乱、空コンテナが戻らずスペース不足に陥るという2020~2021年当時と同様の混乱及び運賃高騰が危惧されます。


以上の状況から、世界経済の停滞もありコンテナ市況軟化は継続するものの、需給を考慮した抜港減便などの海運各社の対応などもあり、2023年以降のコンテナ運賃は新型コロナ禍以前の運賃水準までは低下せず、2022年10月並み、新型コロナ禍以前の2~3倍水準で推移するという見通しが多くなっています。


貿易を生業とする荷主にとってはコンテナ運賃高止まりは悩ましいところですが、コンテナ輸送の特徴を理解しながら、自社にとって最適な輸送形態を選択することがより重要になってきていることは確かです。

コンテナ運賃を決定する主な3つの変動要因

国際海上コンテナ輸送運賃は同一航路でのダンピングを避けるため、特別に容認されている海運同盟による協定運賃をもとに、基本運賃(ベースレート)、割増運賃(サーチャージ)、その他の地域航路別割増などで構成されています。

それぞれについて詳細を解説します。

①基本運賃(ベースレート、オーシャンフレート)

1つ目の変動要因は基本運賃(ベースレート、オーシャンフレート)です。

基本運賃は、品目別運賃と品目無差別運賃の2種類に分けられます。 

品目別運賃


どのような貨物か、品目によって設定されるのが品目別運賃です。
貨物の種類や形状、価格や包装など、さまざまな要素において、船会社に有利な基準が適用されて決まるのが品目別運賃です。下記の3つの基準があります。


① 容積建て
容積建ては多くの貨物において採用され、容積を基準として運賃を算出するものです。フレートトン (※後述)を基準とします。


② 重量建て
重量建ては重さを基準とする算出法であり、容積が少なくても重量がある貨物に対して適用されます。こちらもフレートトン(※後述)を基準とします。

 

※フレートトン:貨物の単位にはフレートトンというものがあり、これは、容積1.133立方メートル、重量1000キログラムを1トンとし、容積と重量のうちいずれか大きい数値をもって計算するという考え方です。この算出方法において小数点以下は、第1位を四捨五入します


③ 従価建て
高額な貴金属など、付加価値の高い貨物に適用されることがある算出方法で、貨物の価格の一定割合で運賃を設定します。

品目無差別運賃

品目にかかわらず設定される運賃であり、コンテナあたりで設定されるものが品目無差別運賃にあたります。コンテナ1個当たりについて設定される「ボックスレート」が該当します。

②割増運賃

2つ目の運賃決定要素として、割増料金があります。この割増料金はサーチャージとも呼ばれており、以下の4つになります。

① 船舶燃料価格と連動する割増料金(サーチャージ)
 BAF:Bunker Adjustment Factor(燃料費調整係数)
燃料の価格変動に応じて調整されるのがBAFです。トンまたはコンテナあたりで価格が決定します。BAFは航路によってBSやEBS、FAFなど、異なる名称となることがありますが、燃料の価格変動に対して調整されるという点はどれも変わりません。

② 通貨変動に連動する割増料金(サーチャージ)
 CAF:Currency Adjustment Factor(通貨変動調整係数)
為替レートの変動に応じて調整されるのがCAFであり、基本料金に対する割合で価格が決められていることが一般的です。CSとも呼ばれます。


 YAS:Yen Appreciation Surcharge(円高損失補填料金):
東南アジア航路などにおいては日本円の高騰に対して課徴するサーチャージが適用されることがあり、これをYASと言います。

③ 貨物取扱に準ずる割増料金(サーチャージ)
 THC:Terminal Handling Charge  (FCLコンテナヤードの利用料金)
 CHC:Container Handling Charge(LCLコンテナヤードの利用料金)
THC、CHCともコンテナヤードの利用料金であり、業者がいずれかを適用するだけで内容に違いはありません。

④ その他
 その他、船の混雑や貨物量の増加に応じて適用される割増料金、書類作成や貨物引き渡しの指示料金として加算される割増料金があります。
 Congestion Surcharge(船混み割増料金):特定港の船が荷役中の船で混雑し、滞船が長期化する場合に適用されるチャージ。
 Peak Season Surcharge(ピーク・シーズン割増料金):クリスマスなど季節的に貨物量が激増する時に適用されるチャージ。
 D/O FEE(Delivery Order Fee):貨物の引渡指示を行う際に発生する料金
 DOC Fee(Documentation Fee):アライバルノーティスもしくは船荷証券(B/L)作成費

地域独自のチャージ

3つ目の運賃決定要素は、地域独自のチャージです。代表的な地域独自チャージを下記します。

  • 中国航路独自のチャージ

 ・ SPS(上海港を使用する場合にかかるチャージ)
 ・ CRS(日本から積載し、中国向けの輸送の際にかかるチャージ)
 ・ CRC(香港から積載し、アジア域内に輸送する際の運賃にかかるチャージ)
 ・ DCF(書類作成する際にかかる費用)
 ・ System Charge(中国発のフォワーダー扱い時に発生することが多い)

 

  • 台湾独自のチャージ
 ・ KAC(基隆港から輸出する貨物にかかるチャージ)

  • 韓国独自のチャージ
     ・ CNTR TAX(韓国から輸出する際のコンテナへの税金)
     ・ Wharfage(埠頭の使用料)

  • 北米独自のチャージ
     ・ SPSC(北米向け輸送の海上運賃に適用される夏季限定チャージ)
     ・ AMS(北米、EU向けの船積みに適用。24時間ルール対応の手続きのためのチャージ)

  • 運河通行料金
     その他にも、運河を通行する航路を利用する際にかかるチャージもあります。
     ・ STF(スエズ運河の通過にかかるチャージ)
     ・ PCS(パナマ運河の通行にかかるチャージ)
    このように、国や航路によってさまざまなチャージがあるためフォワーダーへ確認する必要があります。

コンテナ運賃を調べる


フォワーダーへ依頼する際に値段交渉や見積もりの妥当性を確認する観点で、コンテナ運賃の相場を自ら調べられることは、重要なスキルになります。コンテナ運賃を調べるには、船会社、フォワーダー、輸送コンサルタント会社などが提供するオンライン検索等の利用が手軽で有効な手段です。

Shippioなら簡単にお見積りを提供

 

Shippioは、デジタルフォワーダーとして、従来の海上輸送・航空輸送・通関手配・陸送手配などのフォワーディングサービスに加えて、顧客の貿易業務を効率化するクラウドサービスを提供しています。

Shippioをご利用いただければ、条件を入力頂くことで、輸送コストや日程も含めたお見積をスピーディーに発行することが可能です。また、貿易関係者それぞれが何時でも最新の情報にアクセスできるようになることで、社内コミュニケーションコストの低減、業務のスピードアップを期待できます。 

 

コンテナ運賃目安は「Freightos」で入手


Freigtos社提供のFreight Calculatorでは、無料でコンテナ運賃目安を入手できます。
出発地港、到着地港、貨物サイズ・パレット数・重量などを入力するだけで海上輸送運賃見積概算額(サーチャージなど含まず)がわかるため、運賃相場の変動把握や運送手段選定の目途付けなどで利用する場合は有効です。残念ながら日本語版はありません。


また公益財団法人日本海事センターのウェブサイトでも、主要航路のコンテナ運賃動向を確認できます。こちらはPDF資料ですが、大まかな運賃を算出するのには役立ちます。
その他、JETRO「投資関連コスト比較調査」サイトから海上コンテナ輸送費概算額を参照できましたが、現在は運賃変動が大きいこともあり調査対象外となっています。

繰り返しになりますが、オンラインサイトではコンテナ運賃目安しか入手できません、確定した運賃や燃料サーチャージなどその他費用などは、必ずフォワーダーから見積取得するなどしたうえで輸送納期及び品質などを考慮したうえで利用判断して下さい。

コンテナの運賃の動向と運賃変動の要因、調べ方

本記事では2022年の運賃動向や2023年の見通し、運賃変動の要因、運賃の調べ方を解説しました。

サプライチェーンの混乱下を経て、引き続きコンテナ運賃は日々、様々な要因で変化しています。

本記事で紹介したコンテナ変動要因や調べ方などを業務に活かし、素早く運賃動向を掴めるきっかけにしていただければ幸いです。

また、最新の海上運賃・航空運賃の動向は、下記の市況レポートから最新情報を確認できますので、どうぞアクセスください。

 

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