【モーダルシフトとは?】環境負荷軽減に向けた物流の新常識の概要や課題、今後の動向を解説

2025.02.19

近年、運送モードの最適化や環境負荷低減に向けて注目されるようになった「モーダルシフト」。従来のトラック輸送から鉄道・船舶・航空などへ輸送手段を切り替えることで、物流の効率化やCO₂排出量の抑制など、多様なメリットが得られるといわれています。
本記事では、物流・貿易の担当者やサプライチェーンマネジメントに携わる方、CLO(物流統括管理者)の皆さまに向けて、モーダルシフトの定義や歴史的背景から具体的な活用事例、今後の課題や業界動向、さらにはDXとの連携まで幅広く解説します。

 

 

 

目次

 

  1. モーダルシフトの全体像:定義と歴史的背景
  2. なぜ今モーダルシフトが重要なのか:存在意義とメリット
  3. モーダルシフトの実際:事例紹介・用語解説・実務フロー
  4. モーダルシフトをめぐる課題と今後の業界動向
  5. まとめ:モーダルシフトが変える未来の物流
  6. 今後の展望:DX×モーダルシフトがもたらす新時代
  7. Shippioのサービス紹介:資料請求で実現する国際物流の最適化

1. モーダルシフトの全体像:定義と歴史的背景

1-1. モーダルシフトとは

モーダルシフト(Modal Shift)とは、輸送手段(モード)を転換することで物流効率を高めたり、環境負荷を低減したりする取り組みを指します。例えば、従来はトラックのみで行っていた長距離輸送を、鉄道や船舶へ切り替える形が代表例です。

 

  • トラック輸送:小回りの利くメリットがある一方、CO₂排出量や交通渋滞などの課題が顕在化
  • 鉄道輸送:大量輸送が得意で、定時性が高い
  • 海上輸送(船舶):コストを抑えながら、一度に多くの貨物を運べる

これらの輸送手段を適材適所で組み合わせることで、コスト・時間・環境面の最適解を見つけるアプローチが、モーダルシフトの本質といえます。

1-2. 歴史的背景:なぜ注目されるようになったのか

かつて日本の物流は、道路インフラ整備や高速道路の充実により、トラック輸送が中心でした。しかし、近年ではドライバーの人手不足や高齢化、排出ガス規制の強化など、トラック輸送の持続可能性に疑問が投げかけられています。
一方で、鉄道や船舶はCO₂排出量が比較的少なく、長距離輸送時のコストパフォーマンスにも優れた面が注目され始めました。こうした背景から、国や自治体、民間企業が連携し、モーダルシフトを推進する機運が高まっています。


2. なぜ今モーダルシフトが重要なのか:存在意義とメリット

2-1. 環境負荷軽減

サプライチェーン全体で排出される温室効果ガス(GHG)は、世界的な課題となっています。トラックから鉄道や船舶への切り替えを進めることで、同じ距離を運ぶ場合のCO₂排出量を大幅に削減できる可能性があります。ESG投資の観点からも、モーダルシフトは企業価値向上に寄与すると期待されています。

2-2. 労働力不足への対応

日本国内では、トラックドライバーの平均年齢が上昇する一方、若年層の参入は伸び悩んでおり、人材確保が困難になっています。大量輸送を行う鉄道や船舶に切り替えれば、ドライバー不足を一部補完し、長距離輸送の負担軽減に役立ちます。

2-3. コスト最適化とリードタイム管理

トラックのみの長距離輸送は、燃料費や高速料金、ドライバー人件費などがかさむ傾向にあります。鉄道や船舶を利用すれば、大量輸送によるスケールメリットを得られ、1個当たりの輸送コストを削減できる可能性が高まります。ただし、鉄道や船舶は頻度や停泊地が限られるため、CLO(物流統括管理者)が中心となってリードタイムを綿密に計画する必要があります。

2-4. サプライチェーン全体への影響

モーダルシフトは輸送部分だけの話ではなく、サプライチェーン全体に波及します。

 

  • 在庫配置:拠点や倉庫の場所を再検討する契機となる
  • 流通加工:船舶や鉄道を利用する場合、積載単位や梱包形態の見直しが必要
  • トレーサビリティ:輸送モードの変更が生じると、追跡システムやデータ連携の仕組みも変わる

このように、一部の輸送モードを変えるだけで、企業全体の物流戦略が大きく変革する可能性があるのです。


3. モーダルシフトの実際:事例紹介・用語解説・実務フロー

3-1. 実際の事例:鉄道利用で成功した企業

ある飲料メーカーでは、原材料や製品の長距離輸送を従来のトラックから鉄道コンテナへ移行し、年間の輸送コストを約15%削減したと報告されています。また、CO₂排出量は約20%低減し、環境負荷の観点でも大きな成果を得ました。

 

  • 導入前:トラック輸送のドライバー手配や夜間運行の負担が深刻化
  • 導入後:鉄道コンテナを中心に、最終区間のみトラックで配送する形に変更
  • 成果:燃料費削減と人手不足対策、企業イメージ向上

3-2. 用語解説:インターモーダル輸送とマルチモーダル輸送

 

  • インターモーダル輸送:複数の輸送手段を組み合わせて貨物を運ぶが、貨物の積み替えなし(コンテナごと)で移動できる形態。鉄道コンテナや海上コンテナをそのままトラックに積載して運ぶ例が多い。
  • マルチモーダル輸送:複数の異なる輸送モードを組み合わせる輸送。インターモーダル輸送もマルチモーダル輸送の一種だが、マルチモーダルのほうがやや広義で、貨物の積み替えを伴うケースも含む。

3-3. 実務フロー:モーダルシフト導入のステップ

 

  1. 現状分析
    • トラック比率や輸送距離、コスト構造などを可視化
    • ドライバー不足やCO₂排出量などの課題を数値化
  2. 代替輸送モードの検討
    • 鉄道や船舶、場合によっては航空輸送も比較し、コスト・リードタイムの試算
    • 船積み港や鉄道ターミナルのアクセス状況を調べ、最適ルートを検討
  3. 試験導入・効果測定
    • 一部路線や特定区間でテスト導入し、費用対効果や顧客満足度を検証
    • トラブル発生時の対応フローを明確化
  4. 本格導入と拡大
    • サプライチェーン全体での展開方法を策定
    • DXツールやトレーサビリティシステムを連動させ、効率化を加速

このフローにおいて、CLO(物流統括管理者)の役割が重要になります。輸送モードを切り替えるだけでなく、在庫配置や需要予測とのバランスを取りつつ、全体最適を実現しなければ効果が最大化しないからです。


4. モーダルシフトをめぐる課題と今後の業界動向

4-1. 課題1:インフラや設備の制約

鉄道や船舶を利用したい企業が増加しても、物理的なインフラ(線路容量・港湾設備・船舶の便数など)が不足しているケースがあります。また、鉄道コンテナの駅や港までの陸送手段を確保しなければならず、地方では選択肢が限られることも。

4-2. 課題2:日程調整とリードタイム確保

鉄道や船舶は、必ずしも毎日運行しているわけではありません。トラックに比べて便数が少なく、スケジュールがタイトな場合、リードタイムが長くなるリスクがあります。急な需要変動や納期変更に対応しづらい面もあり、需要予測や在庫戦略をしっかり行う必要があります。

4-3. 課題3:コスト構造の把握

モーダルシフトで期待されるコスト削減効果は、輸送モードの組み合わせや貨物量、距離によって大きく左右されます。鉄道輸送の初期投資として、特殊コンテナの調達やダイヤ調整に費用がかかることもあり、事前の詳細なシミュレーションが不可欠です。

4-4. 業界動向:サステナビリティと国際連携

  • サステナブル物流へのシフト:企業が環境配慮型の輸送を行うことで、ブランドイメージ向上や投資家からの評価アップが期待される
  • 国際輸送への波及:海上輸送や鉄道輸送を活用したインターモーダルは、海外との貿易ルートでも普及が進む見込み
  • DX活用の加速:IoTセンサーやビッグデータ解析によるトレーサビリティ強化が進み、輸送モードを柔軟に切り替えることが容易に

5. まとめ:モーダルシフトが変える未来の物流

モーダルシフトは、単なる「輸送モードの切り替え」にとどまらず、サプライチェーン全体の構造を最適化する大きな契機となります。

 

  • 環境負荷の低減やドライバー不足の解消など、社会的意義も大きい
  • 企業のコスト削減やリードタイム管理に寄与し、競争力の向上につながる
  • トレーサビリティを強化し、安全面や品質面のリスクも低減できる

これらのメリットを得るには、CLO(物流統括管理者)や現場担当者、経営陣が一丸となって、デジタル技術を活用しながら最適な輸送モードを選択していく必要があります。今後、物流業界がさらに複雑化・高度化する中で、モーダルシフトは不可欠な戦略のひとつとして位置づけられていくでしょう。


6. 今後の展望:DX×モーダルシフトがもたらす新時代

DXが変えるモーダルシフトのかたち

  • クラウド管理でトレーサビリティ向上:輸送経路やステータスをリアルタイムで把握し、問題発生時に迅速対応
  • AI需要予測:どのタイミングで、どれだけの貨物をどのモードで運ぶのが最適か、ビッグデータをもとに瞬時に判断
  • RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の活用:通関や書類作成を自動化し、人為的ミスを大幅に削減

モーダルシフトの導入が進むほど、複数の輸送モードを管理するために扱うデータ量も増加します。そこで、クラウドプラットフォームやAIアルゴリズムを活用し、サプライチェーンの各工程を自動化・可視化する流れが加速していくと考えられます。


7. 貿易プラットフォームで実現する国際物流の最適化

モーダルシフトをはじめとする物流改革を成功させるには、国際物流やサプライチェーンの可視化と効率化が欠かせません。そこで注目したいのが、Shippioが提供する国際物流DXサービスです。

Shippioが支援するポイント

  1. オンライン予約と運賃比較
    • 各船社・航空会社の見積もりやスケジュールを比較し、最適な輸送モードを選択
    • モーダルシフトとの相性も考慮し、コストとリードタイムのバランスを実現

  2. クラウド管理とトレーサビリティ強化
    • インボイスやB/Lなど貿易書類を電子化し、複数の輸送モードを含むデータを一元管理
    • 貨物の位置情報をリアルタイムで把握し、遅延やトラブルに即応

  3. DXコンサルティング
    • サプライチェーン全体を分析し、モーダルシフトに適したルート設計や在庫最適化を提案

 

いまモーダルシフトを含む国際物流改革のノウハウを早期に取り入れることで、競合に先んじて持続可能なサプライチェーンを構築するチャンスが広がります。

 


モーダルシフトは、環境負荷の軽減や人手不足対応、コスト削減など、多くのメリットをもたらす可能性を秘めています。しかし、その実現には輸送モード選択だけでなく、企業全体のサプライチェーン戦略やDXとの連携が欠かせません。データを駆使しながら、最適化と継続的な改善を続けることが成功のカギとなるでしょう。
ぜひこの機会に、Shippioのサービスを検討していただき、モーダルシフトを含む物流改革の具体的ステップや最新事例をチェックしてみてください。サプライチェーンの未来を切り拓く一歩が、きっとそこにあるはずです。

 

 

 

 

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