筆者:松田琢磨(拓殖大学 商学部 国際ビジネス学科 教授)
※こちらは【2023年11月時】のレポートです。最新版の市況レポートは以下からアクセスできます。
目次
- はじめに
1.筆者について - コンテナ海運市場
1.北米往航(アジア→米国)
2.北米復航(米国→アジア)
3.欧州往航(アジア→欧州
4.欧州復航(欧州→アジア)
5.大西洋往航(欧州→北米)
6.大西洋復航(北米→欧州)
7.アジア域内航路・日中航路 - 航空貨物市場
1.アジア-北米
2.アジア-欧州
参考:使用データについて
はじめに
筆者について
拓殖大学商学部教授。筑波大学第三学群社会工学類卒業,東京工業大学大学院理工学研究科博士課程単位取得退学、博士(学術)(東京工業大学)。2011年より(公財)日本海事センター研究員、2018年同主任研究員。同センターでは主にコンテナ輸送に関する調査、分析に従事。2020年より現職。2023年4月より拓殖大学商学部国際ビジネス学科長。研究分野は海運経済学、コンテナ輸送、国際物流など。2014年度日本海運経済学会賞(論文の部)、2014年度および2020年度日本物流学会賞(論文等の部)、2021年度日本海運経済学会国際交流賞、Emerald 2023 Literati Awardをそれぞれ受賞。近著に『新国際物流論 基礎からDXまで(晃洋書房)』(共著,2022年)、『日の丸コンテナ会社ONEはなぜ成功したのか?(日経BP)』(共著,2023年)、『コンテナから読む世界経済 経済の血液はこの「箱」が運んでいる!(KADOKAWA)』(2023年)がある。所属学会は日本海運経済学会(常任理事、産官学連携委員長、編集副委員長)、日本物流学会(理事、編集委員)など。2021年5月よりNewsPicksプロピッカーも務め、海運・物流のニュースを中心にコメントしている。
コンテナ海運市場
1. 北米往航(アジア→米国)
荷動き動向
デカルト・データマイン社の発表によると、2023年10月のアジア主要10カ国・地域発米国向け航路(北米往航)のコンテナ貨物輸送量は前年同月比11.1%増の153.1万TEUとなりました(図1参照)。前月比でも2.7%増でした。1-10月の累計は前年同期比14.7%減となっています。2022年以降、北米向け輸送は7月まで2021年を若干上回る水準で推移してきました。しかしながら、8月には前年を下回る水準に転じ、9月以降は大幅な減少が続いています。2023年はコロナ禍前の2019年とほぼ同じ水準で推移を続けて来ましたが、9月以降は2019年を上回る勢いとなっています。
ただし、まだ大きな盛り上がりとはいいがたい状況です。輸送量が盛り上がらない理由として①米国での金利が高い水準となったために住宅市場が不調であること、②小売業者の在庫が高水準で過剰と認識されていることが引き続いて挙げられます。
①に関して、米国の住宅市場は、住宅ローン金利上昇の影響を受けて、着工件数や許可件数の低下が続いてきました。住宅着工件数は 2022 年 2~4 月には月次(季節調整済み・年換算)で 177 万軒の水準でしたが、9 月には 140万軒台、12月には130万軒台に低下しています。2023年2月以降は改善傾向にあったものの、6月は再び130万軒台になるなど調子のよくない状況となっています。2023年9月では135.8万軒です。許可件数も2023年に入って平均145.4万軒と2021年の174.0万軒、2022年の166.6万軒を下回る推移が続いています。住宅市場の中心である中古住宅販売も2020年後半から2022年初頭までの600万軒台から下落が続き、2023年に入ってからは平均420万軒で推移を続けています。
②の小売市場の在庫については、2022年夏以降、大手小売業者を中心に在庫水準が高まっています。ウォルマート、ターゲットなど米国小売大手では、2022年半ばから過剰在庫の問題に直面しており、アジアからの輸入量を絞り込んでいます。
図1:北米往航の輸送量月次推移(2019年1月-2023年10月、単位:TEU)
データ出所:デカルト・データマイン
住宅市場の回復の足取りはまだ不明確です。小売については3月以降は改善が続いています。消費マインドも直近では回復傾向にあるものの、今後の動きを注視する必要があります(参考図1参照)。
参考図1:米国の消費者信頼感指数(2019年1月-2023年10月)
データ出所:ミシガン大学
参考図1:日本積み北米往航貨物輸送量の推移(2022年9月-2023年9月)
データ出所:デカルト・データマイン
2023年9月の日本から米国のコンテナ貨物輸送量(荷受け地ベース)は6.1万TEUと前年同月比で26.7%増、前月比では25.3%増でした(参考図1参照)。品目別では機械類、自動車部品、タイヤなどゴム製品の主力輸出品目が荷動きを増やし、全体の輸送量を押し上げました。9月は、増加した荷動き量の多くが日本での母船積みであったため、日本発コンテナ貨物のトランシップ比率は減少しました。2023年7月の時点で、日本から米国に向けて輸出されるコンテナ貨物のうち26.7%を占める1.6万TEUが韓国、中国などで積み替えられています。2022年には、東京港から直航で米国に運ばれる貨物輸送量より、日本港湾で積み込んだ貨物を釜山でトランシップして米国へ運ぶ量が多い状況が続き、直近でも東京港からの直航が釜山経由のトランシップを下回る状況がみられていました。ただし9月においては東京港から米国に直航で輸送された量は1.9万TEU(前年同月比56.8%増)となり、釜山港を経由して運ばれたコンテナ貨物輸送量1.1万TEU(同20.2%減)を上回りました。横浜積みの直航が増加を続けており(9月は前年同月比186.0%増の2,932TEU)おり、CMA-CGMの北米東岸航路開設の影響が続いています。
運賃動向
Freightos社の発表によると、2023年11月10日の中国・東アジア-米国西岸のコンテナ運賃は前週比6.4%上昇の1,711ドル/FEU(図2参照)、中国・東アジア-米国東岸のコンテナ運賃は前週比2.7%上昇の2,421ドル/FEU(図2参照)となりました。西岸向け運賃は2022年12月30日の1,382ドル/FEUと比べると23.8%の上昇、東岸向け運賃は同2,898ドル/FEUと比べ16.5%の下落となっています。背景には7月以降、運賃上げ(GRI)が何度か成功している一方で、下落圧力があるためにそのあとに下落してしまうことが挙げられます。運賃がGRIによっていったん上がるものの、その後下落する形で運賃の上下が続いているということです。日本発の運賃は基本的に下落傾向が続いています。
米国では消費に改善傾向の兆しがみられているものの、北米航路における需要の反転とはまだ言い切れない状況が続いています。平均遅延日数にまだまだ改善の余地が残っているなど、港湾混雑・内陸輸送の問題もまだ残されています。パナマ運河の喫水制限は通航時間への影響は大きくない様子となっているものの、通航回避が進んでいる効果が含まれている点に注意です。
運賃がいつ下げ止まりから上昇につながるかは改めて注目点ですが、現時点では需要の反転がみられていないこともあり大きな上昇は難しいと思われます。
図2:中国・東アジア-米国西岸/東岸航路の運賃推移
(2021年7月-2023年7月、単位:米ドル/FEU)
データ出所:Freightos
2.北米復航(米国→アジア)
荷動き動向
デカルト・データマイン社の発表によると、2023年9月の米国発アジア主要10カ国・地域向け航路(北米復航)のコンテナ貨物輸送量は前年同月比5%増の44.0万TEUとなりました(図3参照)。前月比では増加が続いています。2023年に入って、北米復航の動向はコロナ禍の時期と大きな変化はみられていませんでしたが、6月に急減したのち、増加に転じています。
図3:北米復航の輸送量月次推移(2019年1月-2023年6月、単位:TEU)
データ出所:デカルト・データマイン
2023年8月の米国から日本のコンテナ貨物輸送量は5.0万TEUと前年比で17.3%減、前月比では8.7%増でした(参考図2参照)。日本向け品目では、牧草が大きく減少を続ける一方、紙パルプ類や肉類が増加しています。復航でのトランシップは減少傾向にあり、2023年4月時点で日本向けトランシップは1.0万TEUと日本向け貨物の15.7%のシェアとなりました。
参考図2:日本積み北米往航貨物輸送量の推移(2021年8月-2023年8月)
データ出所:デカルト・データマイン
運賃動向
Freightos社の発表によると、2023年11月10日の米国西岸-中国・東アジアのコンテナ運賃は前週比0.5%下落の369ドル/FEU(図4参照)、米国東岸-中国・東アジアのコンテナ運賃も前週比変化なしの417ドル/FEU(図4参照)となりました。2022年12月末と比べて、西岸発運賃は698ドル/FEUから47.1%の下落、東岸発運賃は同963ドル/FEUから56.7%の下落となっています。米中貿易戦争やドル高の影響もあり、米国からの輸出は難しい局面が続いています。北米復航も貨物の増加が見込めず消席率も低い水準にあるため、運賃下落傾向が続いており、大きな運賃上昇は見込みづらい状況です。
図4:北米西岸/東岸-アジア航路の運賃推移(2021年7月-2023年11月、単位:米ドル/FEU)
データ出所:Freightos
3.欧州往航(アジア→欧州)
荷動き動向
Container Trades Statistics社のデータを取りまとめた(公財)日本海事センターの発表によると、2023年8月のアジア―北欧州・地中海航路(欧州往航)のコンテナ貨物輸送量は前年同月比6.3%増の142.1万TEUとなりました(図5参照)。前月比では5.2%減ではあるものの、1-8月の累計では3.3%増となっています。2022年10月以降は前月比で見ると荷動きの増加が続いています。この背景には完成自動車(EV)や建機の輸送量の増加、中欧班列で運ばれていた貨物のコンテナ輸送へのシフト、トルコ向け貨物の増加が指摘されています。
品目では、機械類のほか、家具・寝具、玩具・遊戯用具、繊維(アパレル)など巣ごもり需要に対応した製品の輸出の減少傾向が続いています。一方で電気機器や鉄鋼製品、自動車部品などで輸送量の増加がみられています。
図5:欧州往航の輸送量月次推移(2019年1月-2023年8月、単位:TEU)
データ出所:Container Trades Statistics
欧州では消費マインドに改善傾向がみられているものの、水準自体はあまりよくありません(図6参照)。また、小売在庫についてはユーロ圏でも過剰感があるため、コンテナ貨物の荷動きを増加させづらい状況です。住宅市場も金利の上昇に合わせて盛り上がりを欠く状況が続いています。
なお、日本発欧州向けのコンテナ貨物輸送量は、もっとも新しいデータである2023年6
月時点で前年同月比9.0%増の4.5万TEUでした。
図6:EUにおける小売業者の景気動向指数及び消費者の信頼感指数(2019年1月-2023年10月)
データ出所:欧州委員会
b. 運賃動向
Freightos社の発表によると、2023年11月10日の中国・東アジア-北欧州航路のコンテナ運賃は前週比で10.5%上昇の1,381ドル/FEU(図7参照)、中国・東アジア-地中海航路のコンテナ運賃は前週比0.6%上昇の1,559ドル/FEU(図7参照)となりました。北欧州向け運賃は2022年12月末の2,636ドル/FEUと比べると47.6%の下落、地中海向け運賃は同3,883ドル/FEUと比べ59.8%の下落となっています。日本発運賃も同様に下落傾向にあります。
荷動きは増加傾向にありますが、船舶の投入が十分にあるために運賃の下落傾向がまだ続いています。新造船の投入は欧州航路から行われるため、運賃の下落圧力は北米航路よりも欧州航路で強くなっています。11月にもGRIが行われましたが、供給増加の可能性が高い分、その効果が長続きしない状況となっています。
図7:中国・東アジア-北欧州/地中海航路の運賃推移 (2021年7月-2023年11月、単位:米ドル/FEU)
データ出所:Freightos
4.欧州復航(欧州→アジア)
荷動き動向
CTS社のデータを取りまとめた(公財)日本海事センターの発表によると、2023年8月の北欧州・地中海―アジア航路(欧州復航)のコンテナ貨物輸送量は前年同月比6.7%減の50.7万TEUでした(図8参照)。前月比では7.2%減、1-8月の累計も6.4%の減少でした。
図8:欧州復航の輸送量月次推移(2019年1月-2023年6月、単位:TEU)
データ出所:Container Trades Statistics
2022年の欧州復航は2020年および2021年の水準を一貫して下回っており、2013年以降で最も少ない輸送量でした。2023年はさらにそれを下回るペースで推移しています。
品目別ではほとんどの上位品目で減少していますが、その中でも木材や肉類で減少が目立っています。野菜などの食料品や古紙といった品目で増加がみられています。
b. 運賃動向
Freightos社の発表によると、2023年11月10日の北欧州-中国・東アジア航路のコンテナ運賃は前週比1.7%上昇の318ドル/FEU(図9参照)、地中海ー中国・東アジア航路のコンテナ運賃は前週比変化なしの335ドル/FEU(図9参照)となりました。北欧州発運賃は2022年12月末の424ドル/FEUと比べると24.9%の下落、地中海発運賃は同838ドル/FEUと比べ60.0%の下落となっています。
アジア側の需要減に加え、欧州で輸送需要の大きな伸びが期待できない状況であるため、欧州からアジアへの空コンテナ回送の需要が落ち込むとみられています。そのためコンテナスペースに余裕が発生し、欧州復航における運賃の下げ圧力になっています。ただし、Drewryは欧州復航の運賃はすでに2019年の水準を下回っていることを指摘しています。そのため、下げる余地は大きくないと考えられます。
図9:北欧州/地中海ー中国・東アジア航路の運賃推移 (2021年7月-2023年11月、単位:米ドル/FEU)
データ出所:Freightos
5.大西洋往航(欧州→北米)
a. 荷動き動向
Container Trades Statistics社によると、2022年8月の北欧州―北米航路(大西洋往航)のコンテナ貨物輸送量は前年同月比11.1%減の40.6万TEUとなっています(図10参照)。前月比では7.0%増でした。2023年の大西洋往航は2021年および2022年の水準を一貫して下回っており、荷動きに勢いはありません。
図10:大西洋往航の輸送量月次推移(2019年1月-2023年8月、単位:TEU)
データ出所:Container Trades Statistics
b. 運賃動向
Freightos社の発表によると、2023年11月10日の北欧州-北米東岸航路のコンテナ運賃は前週比8.7%上昇の1,108ドル/FEU(図11参照)となりました。北米東岸向け運賃は2022年12月末の5,516ドル/FEUと比べると79.9%の下落となっています。大西洋往航では2022年後半の段階では北米往航や欧州往航に比べて運賃下落は見られていなかったため、収益性の高い航路として海運会社がほかの航路から大西洋航路に船腹を移動させました。船腹の移動による供給の急激な増加が運賃下げ圧力となりました。運賃水準はコロナ禍前の水準を下回ったとの見方があり、ここからは下がりにくいとは言うものの水準自体が低いです。
図11:北欧州-北米東岸航路の運賃週次推移(2021年7月-2023年11月、単位:米ドル/FEU)
データ出所:Freightos
6.大西洋復航(北米→欧州)
a. 荷動き動向
Container Trades Statistics社によると、2023年8月の北米―北欧州航路(大西洋復航)のコンテナ貨物輸送量は前年同月比5.4%減の20.6万TEUとなっています(図12参照)。前月比では9.5%増でした。2023年の大西洋復航の荷動きは2021年と近い水準で推移してきましたが、直近ではそれを下回るペースに転じています。
図12:大西洋往航の輸送量月次推移(2019年1月-2023年8月、単位:TEU)
データ出所:Container Trades Statistics
b. 運賃動向
Freightos社の発表によると、2023年11月10日の北米東岸ー北欧州航路のコンテナ運賃は前週比0.5%減の0.5ドル/FEU(図13参照)となりました。北欧州向け運賃は2021年12月末の549ドル/FEUと比べると55.9%の下落となっています。
図13:北米東岸-北欧州航路の運賃推移 (2021年7月-2023年11月、単位:米ドル/FEU)
データ出所:Freightos
7.アジア域内航路・日中航路
Container Trades Statistics社によると、2023年6月のアジア域内航路(極東ロシアからASEANまでの地域)のコンテナ貨物輸送量は前年同月比0.6%減の408.3万TEUとなっています(図14参照)。前月比では5.5%増でした。2023年1-8月の累計では前年同期比6.5%減の水準で推移しています。比較的安定はしているものの、中国からASEANへの貿易増加が見込まれる一方、中国の製造業からの輸出減や東南アジアへの生産拠点移動によるアジア域内航路のコンテナ貨物減が見られています。また、北米航路や欧州航路でのコンテナ貨物に積む製品の部品や材料がアジア域内航路で運ばれていることから、欧米の需要変動がアジア域内航路の荷動きに波及する可能性は否定できません。
Drewryによるアジア域内運賃指数は10月時点で809ドル/FEU(図15参照)で、23年に入って下落が続いています。
図14:アジア域内航路の輸送量月次推移(2020年1月-2023年6月、単位:TEU)
データ出所:(公財)日本海事センター
図15:アジア域内航路の運賃月次推移(2020年1月-2023年8月、単位:TEU)
データ出所:Drewry
横浜・上海間の運賃は10月時点で515ドル/FEUであり、2023年に入ってから下落が続いています(図16参照)。
図16:横浜-中国各港及び香港航路の運賃月次推移(2020年1月-2023年10月、単位:米ドル/FEU)
データ出所:(公財)日本海事センター
一方、2022年10月の上海・横浜間の運賃は8月時点で1,136ドル/FEUであり、2022年と近い水準での推移が続いています(図17参照)。この運賃はTHCなどのサーチャージを含んでおり、ベースレートの水準ではかなり低くなるのではないかとの指摘もあります。
図17:中国各港及び香港―横浜航路の運賃月次推移(2020年1月-2023年10月、単位:米ドル/FEU)
データ出所:(公財)日本海事センター
C.航空貨物市場
2022年から23年にかけての世界の航空市場では運賃適用重量(Chargeable Weight)が減少傾向にあり、Xenetaによると、2022年3月から2023年8月まで運賃適用重量は前年同月比で下落が続きました。コロナ禍におけるサプライチェーンのひっ迫状況が緩和されつつあることにともなって、積載容量は増加傾向にあります。2023年に入ってからも積載容量、すなわち供給量が増加しています。需要の減少と供給の増加を受けて飛行機の利用率を意味するダイナミックロードファクターは低下が続き、2023年8月時点では56%です。需給の緩和に沿って運賃も下落傾向にあり、Xenetaによると2023年7月は前年同月比41%減の2.19ドル/kgが運賃水準でした。
ただし直近では需給の緩みは落ち着く傾向にあり、夏以降は荷動きが増加しているとの報道も出ています。運賃も直近では下落一辺倒ではない状況となってきました。
1. アジア-北米
Freightos社の発表によると、2023年9月3日の日本―北米の航空貨物運賃は3.18ドル/kg、中国―北米の航空貨物運賃は5.56ドル/kg(図18参照)となりました。2022年1月10日時点の北米向け運賃はそれぞれ、10ドル/kg、14.17ドル/kgでした。中国発は上昇が少し続いております。北米向け航路に関してこの傾向がどうなるかが一つの注目点です。
図18:日本、中国-北米の航空貨物運賃推移(2023年5月-2023年9月、単位:米ドル/kg)
データ出所:Freightos
一方、2023年11月10日の北米-日本の航空貨物運賃は1.5ドル/kg、北米-中国の航空貨物運賃は1.55ドル/kg(図19参照)となりました。2022年3月から6月にかけて日本向けで運賃上昇がみられたものの、復航であり、それ以外の大きな変動は見られません。
図19:北米-日本、中国の航空貨物運賃推移(2023年5月-2023年11月、単位:米ドル/kg)
データ出所:Freightos
2. アジア-欧州
Freightos社の発表によると、2023年11月10日の日本-欧州の航空貨物運賃は3.34ドル/kg、中国―欧州の航空貨物運賃は3.38ドル/kg(図20参照)となりました。中国発の運賃では上昇傾向がみられております。
図20:日本、中国―欧州の航空貨物運賃推移(2023年5月-2023年11月、単位:米ドル/kg)
データ出所:Freightos
一方、2023年9月3日の欧州ー日本の航空貨物運賃は1.92ドル/kg、欧州ー中国の航空貨物運賃は1.34ドル/kg(図21参照)となりました。これらの運賃も下落幅が小さくなってきています。
図21:欧州-日本、中国の航空貨物運賃推移 (2023年5月-2023年11月、単位:米ドル/kg)
データ出所:Freightos
参考:使用データについて
コンテナ運賃や航空運賃にはさまざまな指標があることが知られています。たとえば、コンテナ運賃で代表的なものとしては、上海航運交易所が発表するCCFI(China Containerized Freight Index; 中国輸出コンテナ運賃指数)とSCFI(Shanghai Containerized Freight Index)や、英国の調査会社Drewryが発表するWorld Container Indexなどがあります。航空運賃でもバルチック航空貨物運賃指数などが知られています。
今回のレポートでは、Freightosが発表するFreightos Baltic Index(FBX)を使用します。FBXは、世界の主要12航路のコンテナ運賃、および各航路の運賃を荷動き量のシェアで加重平均したグローバル運賃指数を発表しています。対象航路は、中国/東アジア・北米西岸(太平洋航路)、中国/東アジア・北米東岸(北米東岸航路)、中国/東アジア・北欧州(欧州航路)、中国/東アジア・地中海(地中海航路)、北米東岸・北欧州(大西洋航路)、欧州発南米東岸着、欧州発南米西岸着(欧州・南米航路)です。
運賃は40フィートドライコンテナを対象としたスポット運賃であり、BAF(Banker Adjustment Factor; 燃油サーチャージ)、CAF(Currency Adjustment Factor; 通貨変動調整係数)、PSS(Peak Season Surcharge; ピークシーズンサーチャージ)など各種サーチャージが含まれています。一方で、THC(Terminal Handling Cost)など発着港湾での料金や通関費用は入っていません。同社は海運会社、フォワーダー、NVOCCから運賃情報を収集しており、運賃データは毎日更新されています。同社のWebサイトは、これらのデータをもとに、2018年からバルチック海運取引所と共同でコンテナ運賃情報であるFreightos Baltic Index(FBX)を公表しています。
航空運賃についてもFreightos Air Index(FAX)を使用しています。同指標は毎週日曜日に、前週の100~300キロと300~1,000kgの2つの重量区分に分けて、1キロあたりの米ドル建てスポットレートを示しています。FAXでは、①主要61空港間の空港ペア、②17地域間のトレードレーン、③世界の単一指標について運賃指標を提供しています。また、一般貨物のみを対象としています。
※こちらは【2023年11 月時】のレポートです。最新版の市況レポートは以下からアクセスできます。