地方港活用で勝つ!助成金で賢く輸送コスト削減

2023.09.28

2024年4月1日から施行される働き方改革関連法による「2024年問題」やモーダルシフトの観点から、地方港の活用に注目が集まっています。地方港は航路誘致のため、さまざまな助成金制度を実施しています。地方港と助成金制度の活用、そして貿易業務のDXを推進させることで、強靭で持続可能な物流ネットワークの構築ができると考えています。

Shippioでは2023年8月29日に「地方港で勝つ!助成金で賢く輸送コスト削減」と題して、2024年問題に備え、地方港と助成金の活用方法と、Shippioのソリューション展開とその効果について、セールスマネージャーの金城がセミナーを行いました。


Profile

金城さん (2) (1)

金城 健/セールス マネージャー
株式会社フルスピードにてアドテク事業の新規事業立ち上げのSalesとして携わり、BtoBマーケティング実施企業の顧客開拓や大手広告代理店との提携を担当。後にフルスピードが広告代理店とアドテク事業を分離するために戦略的子会社、クライドを設立。クライドの部長として、DSP事業の成長に尽力し、売上と組織を急成長させる一方、新規事業の立ち上げにも関わる。現在はShippioでセールスマネージャーとして従事。


 

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迫りくる2024年問題

ー 施行まで1年を切った働き方改革関連法による「2024年問題」ですが、荷主企業に対する影響として何が考えられますか?

 

2024年問題で、トラック輸送におけるリソースの減少は必須と言われています。これは、陸送コストの増加を示唆しています。トラックドライバーの法定労働時間は960時間までとなるため、年間の拘束時間は現在の3,516時間から3,300時間まで引き下げられます。この拘束時間には、通常の労働時間だけでなく、仮眠時間などの休憩時間や荷積みや荷下ろし、荷待ち時間も含まれています。

労働時間が引き下げられれば、もちろん輸送距離も短くなります。ドライバーの走行距離は1日500km、往復で片道250kmを超えることは難しくなると考えられています。そうなれば、長距離輸送の受け入れ拒否や、料金やスケジュールに対する交渉も増加すると考えられています

荷主企業も、これらの課題を前提とした物流体制を整える必要があると思っています。

 

ー 対応策として、何が考えられますか?

 

地方港を上手く活用し、陸走距離の短縮・最適化を提案します。さらに、地方港を活用することにより助成金を活かしたコスト削減にも取り組めると考えています。

地方港切り替えのメリット

ー 主要港と地方港について教えてください

 

主要港として、東京港・横浜港・名古屋港・大阪港・神戸港などが挙げられますが、国内に存在する外貿定期コンテナ航路の直接寄港のある地方港は50港を超えます。主な地方港として、仙台港、新潟港、金沢港、長崎港などがあり、これらの地方港を効果的に活用し、地方への配送を最適化することが2024年問題対策に有効だと考えています。

さらに地方港へ切り替えることで、安定輸送とコストカットも実現できると思っています。

安定輸送の実現

配送先に近い港まで船で運び、そこから短距離ドレーを手配すれば、配送会社も案件を受けやすく、2024年問題に伴う影響を緩和した「安定輸送」が実現すると考えています。また、長距離ドレーを回避することにより、料金やスケジュールの交渉もし易くなると思います。

また、地方港を選択肢として持つことで、有事の際の安定輸送に寄与できるサプライチェーンの選択肢となり、BCP対策にも有益であると考えています。社内に主要港だけでなく、地方港の使用事例があると、揚げ地の柔軟な切り替えが可能となり、サプライチェーンの強靭性を高められる可能性があります。

23年7月に発生した名古屋港のシステム障害は、今でも記憶に新しいと思います。また台風などの自然災害も考えられます。こういった有事の際でも、慌てることなく柔軟に揚げ地を切り替えられる利点があると思います。

コストカットの実例

コストについて、4つの例を挙げてメリットをご説明します。リードタイムは、あくまでShippioの実績データを元に推定した目安であり、ドレージ費用に関しても平均値を記載しています。配送場所によりコストの差異が生じる点は、ご了承ください。

例1「北陸地方:富山県内配送のケース」

以下の2ルートで比較します。

  • 主要港: 中国華南地域から名古屋港揚げ → 富山県内までの長距離ドレー
  • 地方港: 中国華南地域から富山港揚げ  → 富山県内までの短距離ドレー

 

例1「北陸地方富山県内配送のケース」

 

地方港である富山港へ切り替えるためには、釜山港を経由して運びます。これによりリードタイムは、おおよそ3〜8日伸びると考えられます。さらに、海上運賃も5万円ほど上乗せとなる見込みですが、長距離ドレーから短距離ドレーへ切り替えることで、ドレージ費用を8.5万円ほど下げることが可能です。トータルコストで見ると、約3.5万円のコスト削減が可能になる見込みです。

このように、主要港から地方港へ切り替えることで、リードタイムは伸びます。海上運賃もそれに伴い上乗せされますが、長距離ドレーから短距離ドレーへ切り替えることで、ドレージ費用の削減が可能です。それにより、トータルコストでみると、全ての例においてコスト削減が実現できます。

 

切替によるコスト削減一覧

 

その他の詳細は、『2024年問題対策!「地方港活用による安定輸送とコスト削減」』に記載しておりますのでお読みください。

助成金を活用しコスト削減

地方港は、航路誘致にむけてさまざまな助成金制度を導入しています。この助成金を活用することで、さらにコスト削減が可能です。

具体的な例として、例1〜3の、富山、高知、広島配送でご提案します。

 

助成金を活用しコスト削減

例1:富山港のケース

富山港は、助成金制度「荷主企業奨励金」を導入し、以下の条件で支給しています。

 

  • 当該年度中に伏木富山港を利用するコンテナ貨物量(輸出入の合計)が
    • 10~49TEU(※1)の場合
      • 1万円/TEUを補助
    • 50~99TEUの場合
      • 1.5万円/TEUを補助
    • 100TEU以上の場合
      • 2万円/TEUを補助

 

上記条件をFEUに換算すると、当該年度中に1年間で25〜50FEUの輸出入がある場合に採用されるので、例1の場合は、助成金がFEU(※2)あたり3万円給付される計算になります。

名古屋港揚げから釜山港経由の富山港揚げに変更し、長距離ドレーから短距離ドレーに切り替えたことで、約3.5万円のコスト削減が見込まれました。ここに、助成金の3万円を追加すると、約6.5万円のコスト削減が可能と考えられます。

※1 20フィートで換算したコンテナ個数を表す単位のこと
※2 40フィートで換算したコンテナ個数を表す単位のこと

例2:高知港のケース

高知港も、助成金制度「高知新港コンテナ利用促進事業費補助金」を導入し、以下の条件で支給しています。

 

  • 申請年度の過去3年間に高知新港でのコンテナ貨物の 輸出入実績がなく、申請年度に11TEU以上の輸出入実績を達成した荷主の貨物
    • 1万5千円 / TEUを補助

 

上記条件をFEUに換算すると、FEUあたり3万円の給付が見込めます

例3:広島港のケース

広島港においても、助成金制度「広島港輸出・輸入コンテナ貨物支援事業」を導入し、以下の条件で支給しています。

 

  • 5千円/TEUを補助
    • 輸出入する貨物が東南アジア発着の貨物の場合は、コンテナ1TEUあたり5千円を追加する

    上記条件をFEUに換算すると、FEUあたり1万円の給付が見込めます

 

このように、短距離ドレー切り替えによるドレージ費用の削減と、助成金制度を上手く組み合わせることで、1本あたりの物流コストを大幅に下げることが考えられます。これが、月に10コンテナや20コンテナを運用する荷主企業だった場合、数十万円もの物流コスト削減の可能性があります。地方港の活用により、コスト削減の機会が得られるのであれば、この仕組みを上手く活用するのも一つの対策だと考えています。

クラウドサービスの活用で効率的な運用を

実際に地方港を利用した場合、いくつかの課題が発生する可能性があります。例えば、挙げ地変更により物流管理のコストが増加することや、経由港を使うケースが多いため海上輸送が長期化する点が挙げられます。これに伴い、輸送状況把握のコストがかかると考えています。

さらに挙げ地変更により、配送先や海運貨物取扱業者への連絡コストが増加する懸念もあります。これらの課題や懸念を解決し、効率的な地方港の活用をサポートするために、クラウドサービスを導入することが改善に繋がると考えています

Shippioのクラウドサービスは、シップメントごとの進捗管理をマイルストーンで表示します。本船の遅延日数も、最新の日付(ETD、ETA)と、当初取得のオリジナルETAを比較して算出します。さらに、遅延の履歴も確認できます。

 

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また、Shippioの本船動静トラッキングサービスは、データ取得を1日2回行い、自動更新します。船会社サイト等を含む複数のデータソースの情報を元に、当社独自のロジックにより精度のETD、ETAや洋上にある本船位置などを自動で算出する仕組みになっています。システムによる自動取得と、マニュアルでの手入力の組み合わせとなっているため、高い精度の自動トラッキングを実現しています。これにより、B/L番号などを元に各船会社のサイトへ見に行き、手打ちで検索する工数が削減できます。

経由港を利用し海上輸送が長期化する場合でも、本船動静を自動的に更新するので、貨物の所在地をタイムリーに把握することが可能になります。

さらに、クラウドサービス上でファイルの共有も行えます。シップメントごとに紐づけたファイル機能なので、クリック一つで、インボイス、B/L、パッキングリスト、通過許可書、原産地証明書などのファイルを共有することができます。これにより、関係各所との情報共有がスムーズに行えます。

 

ファイルとチャット (2) (1)

 

同様に、シップメントごとに紐づけたチャット機能も備わっており、スムーズにオペレーターや関係各所と連絡を取ることができます。チャット機能を利用することで、メールを開かずとも画面上のチャットでコミュニケーションが取れ、コミュニケーションコストの削減が可能です。

こうしたクラウドサービスならではの機能を活用することで、効率的な運用が実現できると考えています。

調達物流のデジタル化で課題解決

受発注管理やサプライヤーの管理、在庫管理などは、基幹システムを導入し可視化や効率化をしていますが、調達物流の改善に着手できていない荷主企業が多くある印象がありますShippioのクラウドサービスは調達物流に特化しており、揚げ地追加による管理コストや、状況把握のコスト、コミュニケーションコストなどを一元管理できる点が特徴です。

輸送リードタイムを始めとした物流情報は、データとして蓄積され、保存されます。クラウドサービスを利用すれば、現行の業務フローをこなすだけで自然とデータが溜まる体制をつくることが可能です。

実績としてデータがシステムに蓄積されれば、分析に活用できるようになります。今まで経験で補ってきた業務に対して、過去データに基づいた対策・施策が打てるようになり、主要港と地方港利用の比較や最適なルート検討など、再現性のあるサプライチェーンの構築と戦略的な活動が可能となります。

2024年問題が間近に迫り、具体的な対策が必要となったこのタイミングで、地方港活用と助成金補助を選択肢とし、陸走距離の短縮・最適化で持続可能な物流ネットワークの構築をしてみてはいかがでしょうか。

Shippioでは輸送リードタイムデータなどを活用し、荷主さまに最適な輸送ルートのご提案ができます。ご興味がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

 

 

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