近年、企業のデータ活用への関心は高い傾向にあります。物流業界も他業界と同様に、日々さまざまなデータが発生しています。その膨大なデータをビジネスに活用し、データドリブン経営を目指したいが、実際どのようにデータを活用すればよいか分からない企業も多いのではないでしょうか。
Shippioでは2023年8月24日に「輸送データを活用したサプライチェーンのコスト削減」と題して、クラウドサービスを利用した輸送データの蓄積と分析、その活用について、Sales Directorの竹原がセミナーを行いました。
Profile
竹原 功将 / Sales Director
みずほ銀行にて法人新規営業に従事し、若手優秀賞を複数回受賞。SMBマーケットにおける新規獲得で年間1位を記録。その後、ベガコーポレーション(グロース上場・家具EC)にて、経営企画やSCM戦略部の責任者として、サプライチェーンに関わる戦略立案・実行・オペレーション管理に従事。サプライチェーン全体の改善活動に従事し、半年で7,000万円以上のコスト削減を実現。管轄領域は国際物流から国内保管、国内配送まで多岐にわたる。 freee株式会社では、カスタマーサクセスやアライアンスの企画立案・運営・パートナー営業などに従事。現在は、株式会社Shippioにて事業会社向けのセールスマネージャーに従事。
仕組みで解決する時代へ
輸送データの活用は、蓄積・分析・活用の流れで進める必要があります。Shippioのクラウドサービスは、日々の貿易業務の裏側で、さまざまな輸送データをシステムに蓄積します。
その輸送データは、月別、輸送ルート別、キャリア別の輸送件数、あるいはリードタイムなど、細かくセグメントして取得することが可能です。またトランシップ港での滞留日数も把握することができます。蓄積されたデータを使って分析を行えば、どのような形でコスト削減をしていけば良いのかが見えてきます。
海上輸送は、需要と供給のギャップが起きつつあります。従来のように「物量があれば料金が安くなる」といった時代ではなくなり、「仕組みで解決」せざるを得ない時代に突入していると思っています。
ここから、コスト削減のための輸送データの活用方法をいくつかご紹介していきます。
フリータイムの最適化によるコスト削減
フリータイムの長さと海上運賃は、とても密接に関わっています。フリータイムをタリフ(運賃率表・関税率表)に記載されている日数より長めに確保すると、海上運賃に上乗せが発生します。これは恒常的に起きており、非常に分かりづらい形で上乗せされます。輸送データを活用することで、フリータイムを最適な日数で設定することができ、それにより海上運賃の見積り交渉が可能になります。
フリータイムを最適化する上で、データの蓄積、データの分析、最適なフリータイムの算出、見積り交渉、見積り交渉後の最適なフリータイムでの運用、の5つのサイクルを回す必要があります。
Shippioのクラウドサービスは、入港から納品までのデータ蓄積が可能です。それらを基に、ルートごと、あるいは納品先ごとに、実輸送日数の蓄積もできます。
その蓄積データを基に、月別の輸送リードタイム日数を納品先ごとに分析することができます。つまり、実際に必要となるフリータイムの最適化を図ることが可能になります。
例えば、船会社やフォワーダーから20日間のフリータイムで設定されているルートがあるとします。半年間の実績輸送データを分析してみると、入港から納品までの日数が10日間しかかかっていなかった場合、差分の10日間のフリータイムを短くすることで海上運賃の料金交渉が可能になります。
船会社もコンテナヤードも、コンテナの回転率を考えればフリータイムを短くしたい意向があり、荷主は短くなった分の海上運賃が下がる可能性があるので、フリータイムの最適化はまさに三方良しな提案だと考えています。
経由便の活用によるコスト削減
荷主さまの中にはトランジット港での滞留を懸念し、直行便を利用しているケースがあります。Shippioのクラウドサービスは、経由港での滞留日数を加味したリードタイムを把握することができるので、経由便の有効活用も可能になります。
長距離航路の場合のルートごと、あるいは経由ごとの滞留日数や、輸送のリードタイムを平均で取得することも可能です。
これらのデータを基に輸送リードタイムをコントロールし、直行便から経由便へ切り替えることによって、海上輸送費の削減も検討することができます。
データに基づいた発注点の管理
在庫を適正に管理するには、正しい発注点で管理することが大切です。そのためには、データに基づいた発注リードタイムの可視化が必要です。この発注リードタイムは、「生産・製造のリードタイム」と、完成品を日本に輸入する「輸送のリードタイム」の2つがあります。Shippioのクラウドサービスで把握することができるのは、「輸送リードタイム」です。
予定よりも発注のリードタイムが短くなった場合、過剰在庫になる危険があります。一方で、直近の発注リードタイムから長期化した場合は、在庫不足のリスクが出てきます。
今までの経験値や現場の勘に頼った輸送リードタイムの把握から、実績に基づいたデータによる輸送リードタイムへ切り替えることで、最適な発注点の管理を行うことが可能になります。
デマレージの削減
デマレージの発生要因の一つとして、倉庫に空きがなく、フリータイム期間内にコンテナヤードから引き取れず発生する場合があります。
販売計画や出荷計画を基に、倉庫の空きスペースを予測して発注管理をしていると思いますが、発注のリードタイムが想定より短縮した場合、計画より早くモノが届いてしまい、デマレージリスクになりかねません。
蓄積データに基づき、発注リードタイムを正しく把握することによって、適切なタイミングでモノが港に届く発注点を見極めることができます。これにより、デマレージを回避することができると考えています。
緊急AIR輸送の削減
発注のリードタイムが想定よりも長期化すると、モノが手元に届かず、在庫不足や機会損失が起きる可能性が出てきます。それを回避する手段として、緊急AIR輸送を選択肢として取る場合があります。しかし、AIRよりも海上輸送の方が運送料が安いので、できるだけ緊急AIR輸送の頻度は下げたいものです。そのためには、発注のリードタイムを正しくデータで把握し、発注点の管理をすることが重要になります。
単純に正しいデータが手元にあれば、デマレージや緊急AIR輸送が回避できるわけではありません。タイムリーに情報を把握し、判断や指示を出す必要があると思っています。
Shippioのクラウドサービスは、タイムリーに輸送状況を把握することが可能です。それにより、迅速な判断とチャットによる指示で、的確な判断が可能です。
入札でのデータ活用
入札においても、データの活用はメリットがあると考えています。
入札を行う際、輸送データの収集を各部署で行うことが、第一ステップとなります。多くの場合、輸送データはExcelで管理していると思います。部署が多くなればなるほど、情報収集にかなりの労力がかかります。
また集めた情報をデータとして統合し、分析を行わなくてはいけません。しかし収集したExcel情報が不揃いで、統合する工数が大きくかかり、分析に時間が割けない場合が考えられます。そうなると、不完全だったり足りない情報を基に交渉せざるを得なくなり、納得のいく条件にならない場合もあります。
Shippioのクラウドサービスは、入札における3つの悩みを解決できます。デジタルフォワーディング、あるいはAny Cargoを利用することで、全てのシップメント情報がシステム上で一元管理されるので、欲しい情報を容易に取得することが可能になります。また、情報の統合工数が不要になるので、その時間であらゆる切り口で分析することも可能となります。
貿易実務担当者だけでなく、物流企画や営業、あるいは生産管理とコミュニケーションを取りながら判断する時間も捻出されます。時間をかけて分析した情報で、パートナーとスムーズ、かつ有効的な交渉が可能になります。
一般的に入札は、最低でも4ヶ月から半年間の事前準備期間が必要だと考えています。
またデータを活用するためには、さらに半年から1年ほど前から情報を蓄積する必要があります。つまりデータ活用のためには、1日でも早く情報蓄積を始めたほうが良いと考えています。
積極的なデータ活用でデータドリブン経営へ
データを用いて分析すると、自社の問題点を把握でき、具体的な改善策を提案する場面や経営判断の場面において、重要な判断材料となります。
商品のリードタイムなど現場に蓄積されたデータを分析することで、より正確な発注点の予測や在庫管理、業務効率化が可能になるため、データ分析の重要性はますます高まっていくと考えています。データ分析の目的を明確にした上で、クラウドサービスで情報の蓄積から積極的に取り入れ、データドリブン経営に取り組んでみてはいかがでしょうか。
Shippioではデータを活用した事例の紹介や、クラウドサービスの画面を実際にお見せした体験デモもご提案できます。ご興味がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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