IT化やDXの推進が浸透していく中、ビッグデータやIoT(モノのインターネット)に加え、データ活用に注目する企業が増えています。物流業界も他業界と同様に、日々さまざまなデータが発生しています。しかし、これまでデータ活用に着手してこなかった企業がいきなりデータ活用を実践していくには「どこから取り組めば良いかわからない」と悩む担当者も多いのではないでしょうか。
Shippioでは2023年9月20日に「【貿易DX・SCM企画担当者向け】貿易データ活用の3STEP:活用のプロセスと障壁」と題して、クラウドサービスを利用した貿易データ活用の具体的な3ステップについて、カスタマーサクセスディレクターの田中がセミナーを行いました。
Profile
田中 暁大/カスタマーサクセスディレクター
ウェザーニューズで海運企業向けの船舶の安全運航とパフォーマンス改善の提案業務を経験。その後ユーザベースにて、経済情報データベースSPEEDAのセールス/カスタマーサクセスとして、金融機関/経営企画/技術戦略部門への財務・市場分析の支援業務に従事。2023年3月にShippioカスタマーサクセスマネージャーとして入社。
データ活用に必要な3つのステップ
働き方改革関連法による「2024年問題」に代表される労働人口減少などから、企業の省人化やコスト削減の重要性が高まっています。ただ、やみくもに施策を打つのではなく、ファクトデータに基づいた施策が求められているのも事実です。市場の変化や人材の獲得、そして倉庫の観点など、さまざまな環境に対応した施策を検討しなければなりません。どこから着手すべきなのか、見当がつかない方も多いのではないでしょうか。
Shippioでは、クラウドサービスを利用したデータ活用をご提案しています。常に変動し、一つの要因では説明がつかない市場環境に対し、データを活用しながら自社の改善活動を進めていくことが必要だと考えます。
データ活用は、以下の3つのステップで進めます。
- データ収集・クレンジング
- プロセスの可視化
- プロセス改善(最適化)
具体例を交えながら、説明します。
データ収集とクレンジング
3つのステップの中で一番重要なのが、「データ収集とクレンジング」です。活用するデータ品質の良し悪しにより、その後のステップである「プロセス改善」の結果が変わってくるからです。つまり、「何のためにデータを活用するのか」というゴールを明確にした上で、分析に活用できるデータが入手できるのか、あるいは分析に活用できる状態に整理ができるのかを検討します。
活用可能なデータの整理
本船動静や貿易プロセスを、Excelで管理している荷主企業さまは多いと思います。Excelはとても汎用性のある便利なツールですが、セル結合やセル内改行を行ってしまうと、データを正しく取り扱えなくなるデメリットがあります。例えばフィルター機能を適用させようとしても、上手く機能しません。Excelでデータを活用する場合、一つ一つの枠にデータを入れ、セル内結合や改行をなくす必要があります。この状態であれば、データはすぐに活用することができます。
さらにExcelは、細かい現場の運用に合わせる上では、コメントや関数を入れるなど自由度高く活用でき便利です。しかしデータ活用に最適化させるには、シンプルで整然としたフォーマットである必要があります。そうすれば、フィルター機能も適用させやすく、BIツールにも取り込みやすくなります。このように、フォーマットの整理からデータ活用は始まっていくと考えます。
必要なデータセットを整える困難さ
国際物流は、ステークホルダーごとに情報形式や収集経路が複数存在しています。それが、フォーマットやデータセットの統一を困難にしている要因として挙げられます。
社内だけでも複数部署とのやり取りが発生し、その他、サプライヤーやフォワーダー、パートナー企業や海外の現地法人など、さまざまな情報がそれぞれのフォーマットでメール送付されてきます。それらを取りまとめる負担は大きく、個別性の高いデータ整理は、どうしても手作業での対応を強いられてしまいます。
可能な限り集約工数を低減させる
Shippioのクラウドサービス(Any Cargo)をご利用いただき、データ活用を実現するための初めの作業として、情報の入り口であるフォーマットを統一するために、必要なデータ要素を定義し、各ステークホルダーから送付されてくるフォーマットを統一する作業があります。
この作業は、ステークホルダーが多岐に渡った場合は1〜2ヶ月を要する場合もあります。Shippioのカスタマーサクセスは、こういった情報整理や送付元への説明をお手伝いする場合もあり、ただデータ化をするだけでなく、データの集約工数を限りなく低くすることを大変重要だと考えています。
以上の工程が完了すれば、各拠点からのデータは全て統一されたフォーマットで入ってきます。統一されたフォーマットでのデータは、情報整理・分析がしやすく、大きなアウトプットに直結するアクションの元となり得ます。「データ収集とクレンジング」は、最も工数がかかりますが、データ活用のためには最も重要な作業と言えます。
プロセスの可視化
「プロセスの可視化」のステップで、Shippioのカスタマーサクセスがまず行うのは、ステークホルダーごとに発生するアクション内容を可視化する作業です。この可視化作業は、データ活用をするためには避けては通れない作業です。
Sample画像
工程を可視化すると、業務の委任が容易になったり、業務工数の負荷や改善のポイントを明確化できます。それぞれの情報の出し入れが可視化されるので、情報流通の変更も容易になるメリットがあります。
また工程を可視化する際、アクションルール表も一緒に作成しています。アクションルール表はシンプルなもので問題ありません。
Sample画像
アクションルールを明確化することで、貿易実務担当者さまや営業・生産の担当者、物流パートナー企業さまなど、運用に関わる人の齟齬を軽減させることができ、やり取りをスムーズに行えます。
ここまで情報を整理することができれば、POL(Port of Loading:積地港)やPOD(Port of Discharge:揚地港)ごとのシップメント数や、平均リードタイムなどのデータが簡単に出力でき、分析をすることが可能となります。
Sample画像
データが蓄積されていけば、さまざまな切り口で検証することが可能です。例えばキャリアごとの平均リードタイムや、平均トランシップの回数、トランシップ港の平均滞留日数などです。正しいプロセスの可視化が構築できれば、継続的に定点観測をすることができます。改善の施策をする場合にも、定量的に施策結果を測ることができます。
プロセス改善(最適化)
データさえ整えば、プロセスの改善はさまざまな切り口から検討し、役立てることができます。例えば商流や航路ごとのデータは、遅延リスクの把握が可能となるだけでなく、安定供給計画の策定にも役立ちます。商品情報と輸送データを突合し、洋上在庫の管理もできます。台風などの自然災害や有事の緊急対応時に揚げ地変更をする場合も、リードタイムがデータとして可視化されているので、より確からしい判断が可能です。
データを活用してプロセス改善をすると、従来の経験と勘に頼った意思決定から、データに基づいた意思決定に移行でき、属人性も排除できます。
またデータ活用は、KPIにどれだけのビジネスインパクトを与えられるかが重要になります。つまり、KPIとして設定されているコスト削減や売上機会増大にどれだけ寄与できる施策を導き出せるかが重要な視点だと考えています。
データ活用で物流コストを適正化へ
公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会の行ったアンケート調査によれば、効果の大きかった物流コスト適正化への施策として、輸配送改善、在庫削減、輸配送経路の見直し、保管改善、物流拠点の見直しが挙げられています。
このような施策を打つにも、現状のデータが手元にない中で、物流コスト適正化の意思決定を進めることは困難です。改善をどこから始めるべきか、どのように進めるべきか、それらを策定する上でデータは大変重要な材料となります。そのためにも、本日紹介したデータ活用の3つのステップを参考にしてください。
Shippioではデータの活用方法や事例の紹介、その他にもクラウドサービスの画面を実際にお見せする体験デモもご提案できます。ご興味がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。
▶あわせて読みたい
【レポート記事】
【事例記事】
- 豊田通商株式会社
- WHILL株式会社